「リスキングによる能力向上」の推進で、労働者は、企業が求める能力を絶えず個人の責任で開発することを求められます。
それと一体で「労働移動の円滑化」がすすめられると、企業の求める能力がないとされた労働者は、労働移動(転職)を可能にする能力を自助努力で身に
つけることを迫られます。こうした手法で労働者を退職に追い込むことを容易にするのが「三位一体改革」です。
コストを削減しながら必要な労働力の確保を求める経済界は、これを支援するリスキングの推進と労働移動の円滑化を政府に要請してきました。
「三位一体改革」のもう一つの柱は、「ジョブ型人事(職務給)」の導入です。「ジョブ型人事指針」を今夏に公表し、各企業が導入方法を検討できるようにするとしています。
経団連や政府が提唱する「ジョブ型人事(職務給)」は、職務内容が明確に規定されている欧米の職務給とはまったく異なります。
日本の場合は、職務内容が特定されておらず、賃金は職務とは無関係に能力・業績考課と情意考課(性格・人格・意欲)によって査定され個別に決められて
います。職務を横断する配置転換も行われています。
政府・財界の言う「ジョブ型人事(職務給)」は、職務を口実に中高年の賃金を引き下げたうえに、本来の職務給にはありえない、役割・成果による査定で、
さらに労働者全体の賃金を引き下げ、格差を拡大しようというものです。
電機大企業は、目標未達成の労働者を降格・解雇することまで制度化しています。こんな制度を政府は支援しようというのです。
■国際的基準と経験
リスキリングは労働者本位に実施することが必要です。国際労働機関(ILO)「人的資源開発勧告」(第195号)は「教育および訓練は、すべての者の権利
である」と位置づけ、教育・訓練に参加する労働者に有給の教育休暇を保障することを定めています。(『有給教育休暇条約』第140号)。EU(欧州連合)も
教育・訓練・生涯学習を社会権として位置づけ保障しています。
日本経済再生のためには、労働者に賃下げや雇用流動化をもたらす「リスキング」ではなく、国際的な基準と経験を踏まえ労働者の人権を保護する国の義務と
企業の責任を明確にした労働政策こそが必要です。
(しんぶん赤旗24.6.28主張 骨太方針2024(下)より)