混沌の地、手記抜粋
混沌の地の文化



女王とジャカオ

 混沌の地について語るときに、絶対に欠かせないのがこの二つの存在です。
 ”女王”は戦いを司る女神であり、戦乙女バルキリーを統べる者などといった尊称を持ちます。
 一方でジャカオは無にして全、などと呼ばれる混沌を司るものであり、世界を混沌に戻そうとする存在です。
 混沌の地に伝わる伝説では、ジャカオによって世界が混沌に戻されようとするのに対して、始源の巨人の足から生まれた女王がただ一人それに立ち向かったということになっています。
 そのため、混沌の地では”女王”とジャカオ以外の神は軽視されており、信仰している者は全くと言っていいほどいません。

 ”女王”の教義はアレクラスト大陸におけるマイリーの教義に近いところがあり、”女王”はマイリーそのものではないかとも言われますが、 死後赴く場所が「喜びの野」ではなくジャカオとの戦いの地であるということを始め、微妙な違いがあります。
 ”氏族”と呼ばれる人々は、自分たちを女王に仕えた戦乙女の子孫であると考えており、ジャカオによって世界が混沌に戻されることに立ち向かおうとしています。
 そのため混沌に対する憎悪は深く、外から来た者には奇異にすら映ることがあります。

 ジャカオには教義らしい教義はありません。
 あえて言うならばファラリスの教義が近いですが、それよりももっと端的に力で物事を解決します。
 混沌の地において、恐怖なり憎悪なり欲望なり、なんらかの思いが強くなったとき、人は混沌に飲み込まれ、ジャカオから力をさずかります。
 与えられる力はその感情を満足させるためのものであることが多いです。
 ”氏族”から離れた、あるいは追放された者の多くは混沌にすがろうとしますが、力に目覚める者はそのうちの一部です。
 混沌界に依存することから、ジャカオの正体は夢幻の胡蝶レスフェーン(クリスタニア参照)ではないかと考えることも出来ますが、両者を結びつけるだけの証拠はありません。


氏族

社会構造

 自分たちを戦乙女の子孫だと考えて生活している、混沌の地における「普通の人々」です。
 アレクラストにいるエルフやドワーフ、グラスランナーなどはおらず、全員が人間です。
 混沌の地で最も東に住んでいる「東の六氏族」を見ると、大体は一つの氏族が一つの村落を作っているようです。
 一つの氏族は同じ戦乙女を遠い母に持つと考えられているため、氏族の中は概ね家族のような関係ですが、 アレクラストにおいて家族が必ずしも仲がいいわけではないように、内部での軋轢は当然あります。

 戦乙女が哲学の基本にあるため基本的には女系社会であり、子供は母の氏族に属します。
 氏族は家族と同義であるので、同じ氏族同士で結婚は許されません。
 男は結婚しても妻の氏族に属することはなく、元の氏族に属し続けます。
 ただし、夫が妻や子供とともに生活すると言うことまで否定されるわけではありません。
 混沌に立ち向かうためには強さが必要であり、父は多くの場合息子を厳しく育てます。
 息子は最初は自分の名前ではなく、父の名前の後に「息子」を意味する”ソン”をつけて呼ばれます。
 例えば、「東の六氏族」最強の戦士と言われたルーヴィルの息子は「ルーヴソン」と呼ばれます。
 父の名前で呼ばれるということは父を乗り越えてないということで、蔑称として用いられることもあります。
 周囲の者から父を超えたと認められたとき、息子は自分の名前で呼ばれることになります。

 氏族にはそれぞれが固有のしきたりを持っており、ある意味では非常に制限の多い世界です。
 そのしきたりにより罰せられたり、あるいは自らの意志なりで氏族を抜ける者もいます。
 かれらは”はぐれ者”と呼ばれ、氏族からは侮蔑の対象となります。
 はぐれ者同士が集まって村落を作ることもありますが、多くのはぐれ者は混沌の地の厳しさの前に長くは生きられません。
 そのため、盗賊になったり、混沌の力を持つ者に従って生き延びようとする者もいます。

 氏族にしてもはぐれ者にしても、その社会は原始共産主義です。
 原則的には全財産は氏族の共有物ということになります。
 そのため通貨は存在せず、氏族間の取引においては物々交換が基本になります。
 商業の発展する見込みは今のところなく、芸術家というものも存在していません。
 ただし、伝承に従って生きている人々であるために知識の大切さは解っており、知識人は”戦士”ほどではないにしてもそれなりの尊敬は受けます。
 言語は混沌の地独自のものですが、使用される文字は下位古代語の表音文字です。


戦士と階級


 ”戦士”は氏族の中の特権階級であり、最も尊ばれる立場です。
 戦士の生活は部族の者に支えられており、普段は働く必要はありません。
 より正確に言うと、”薬師”などの他の仕事をしてはいけません。
 しかし、有事の際には先頭に立って戦う義務を有しますので日々の鍛錬に励まなくてはなりません。
 戦乙女に仕える者という立場上からか、男性しかなることはできません。
 また、精霊の声を聞く者はなることが出来ないようです。
 戦士となるには力だけではなく勇気などを示す”証し”を受けなければなりません。
 力が強いだけでは混沌と同じになってしまうという意識があるからです。
 ただし、”証し”の儀式は普通、狼などの獣と相対するなどの戦闘的なものになります。

 族長になるくらいの選ばれた戦士として認められるためには”探索”をクリアしなければなりません。
 探索は女王の啓示によって始まり、多くは”凶主”の遺跡の捜索など非常に困難な任務となります。
 探索は単独行ではなく、”精霊使い”や”使徒”と同行することが普通です。

 戦士は三つの型に分けられます。
 フルアーム(F)とライトアーム(L)とアンアーム(U)です。
 型の違いによる階級差は確認されていません。
 フルアームは完全武装の戦士であり、アレクラストのファイターそのものです。
 一般的にはこの型の戦士の数が一番多いようです。
 ライトアームは軽装の戦士で、アレクラストのシーフ技能の中の戦闘技能に対応します。
 ただし、いくつか特殊な戦闘動作を身につけていることがあります。
 アンアームは格闘技に長けた戦士で、ロマールの格闘場などで見られる関節技なども使うようです。

 使徒は女性しかなれない立場で、女王の神聖語魔法を使う者の中でも特別な存在です。
 基本的に混沌の地では女王以外の神聖語魔法を使う者は確認されていません。
 他の神が女王より低く見られているためか、それとも他の神の力が届きにくいのかは不明です。
 今のところ、男性で神聖語魔法を仕える氏族は確認されていません。
 使徒は戦士と同様に労働義務はありませんが、氏族のために戦う義務を有します。
 また戦士と同じく、精霊の声を聞く者がなることは出来ないようです。
 戦士の探索に同行することも多いようです。

 精霊使いは文字通りのシャーマンであり、男女ともになることができます。
 立場上は特権階級ではなく一段低い立場に見られ、普段は労働に従事しなければなりません。
 精霊が狂いやすい混沌の大地では、かなり危険を伴う立場でもあります。

 薬師はアレクラストにおけるハーバリストとセージを合わせた役目を持っています。
 ただし、混沌の大地においてはセージ技能は存在しないようですのでハーバリスト技能がセージも内包しているようです。
 伝説の語り手を務めたり子供に読み書きを教えたりする一方で、毒や薬を調合する医師でもあります。
 神聖語か精霊語のどちらかを修得することも出来ますが、あまり一般的ではないようです。
 また、おそらく神聖語を修得できるのは女性だけと思われます。

以下2001/01/29追記
 密偵はアレクラストにおけるシーフに近い存在です。
 ただし、原始共産主義のため財産という概念に乏しく、泥棒という職業は成り立たないので、完全に技能だけが独立しています。
 建造物と呼べるほどの物はあまりありませんが、凶主の遺跡などで機械的な罠に遭うこともあるので探索に必要な人材です。
 あるいは密偵という名前のとおり、隠密行動を必要とする活動に従事しているかもしれません。
 彼らの技能はスカウト技能と呼ばれ、シーフ技能から戦闘能力を外したものと解釈されます。
 この技能に必要な経験点はセージなどと同じです。
 実際には室内技能だけでは密偵などやってられないのがケイオスランドという土地なので、彼らの多くはレンジャー技能にも長けていることでしょう。

装備

 金銭の存在しない社会ですので、装備のほとんどは必要十分なだけしか与えられません。
 武器は基本的に剣と弓矢しか存在していないようです。
 それ以外の武器を使った場合はもしかすると混沌と思われるかも知れません。
 あるいは、女王が認めないのかも知れません。
 剣は両手持ち片手持ち両方が使える剣と、片手のみの短剣の二通りの分類くらいしか存在せず、これらを主武器と補助武器として用いることが多いでしょう。
 (もちろん、アンアームの戦士はこれらの武器を持つことはありません)
 ただし、氏族によっては剣の刃をギリギリまで削ってノコギリ状にすることで、耐久力と引き替えに強力な殺傷能力を持たせることもあります。
 強度はアレクラストのものに比べて遜色はなく、金属加工技術は決して劣ったものではないようです。
 ただしその社会形態上、これ以上進歩する可能性は今のところありません。(今後の展開次第です)

 魔法のかかった武器は、戦士の「試練」によって人間社会に持ち帰られたものですので、戦士でない者が持つことは許されません。
 魔法の剣を持った戦士は、それ相当の戦士とみなされるようです。

 鎧は金属鎧と非金属鎧の二つに分類されます。
 ただし、記述を見る限りクロースに相当する物はあるようです。
 また、盾は存在していないようです。
 女王の勇気にふさわしくないと思われているのかも知れません。

 はぐれ者の集落ではギリギリの生活を強いられているため、それらの物のほとんどが手に入りにくくなります。
 混沌の集落では、氏族の集落を襲うことでこれらの武器などを調達しているかも知れません。
 ただし大きな混沌の集落では、支配体制が確立されていてそれなりの生産能力を持っていることもあります。

 なおこれらの基準は、主に「東の六氏族」のものであり、もっと西の氏族、あるいは混沌の中にはこれらに当てはまらない者がいる可能性もあります。

混沌




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