シナリオ1
「あの塔へ行け」


 このシナリオは、3〜5人向けです。とはいえ、難易度の調整をうまく出来るなら別に何人でもかまいません。初心者用に作られたシナリオですが、たとえ10レベルの冒険者でも対応出来ます。相手のボスが只者ではありませんから。


 冒険者たちがある村を訪れてしばし休息をとっていると、村の教育係をしているという若い男が(カーンといいます。外見は若いですが、実際はそうでもありません)やって来て、「君たちは見たところ冒険者らしいな。昔は私もそうだったのだ。」といいます。このあと、しばらく話をすると、危険がなく、しかも間違いなく儲かるところがあるのだが、と少し笑いながら教えてくれます。そこはこの近くの砂漠の中に立っている塔で、そこに住んでいる賢者は自分の師で、魔法の品でも何でも欲しければくれるだろうというのです。話がうますぎると怪しむかも知れませんが、本当のことです。
 このあと、砂漠の塔の詳しい位置を教えてもらえますが、ジャイアントスコーピオンが生息している砂漠なので、塔まで送ろうと言ってきます。(冒険者たちのレベルが高ければ、警告するだけでついて来てはくれません。ついていく場合、子供達の教育は教え子の一人に任せていきます。)拒むのは自由ですが、連れて行くべきでしょう。
 砂漠ではマスターがダイスを10回ふれば塔につきます。ダイス目が2以下だと上記の通りジャイアントスコーピオンが現れますが、カーン一人に任せてかまいません。水については、歩いて2〜3日の距離なので尽きてしまう心配はありません。


 やがて、周囲の数十メートルだけがオアシスのように緑に囲まれた塔が見つかります。これは、塔から出る魔力が精霊力のバランスを正常にしているからです。扉を開けて中に入ると、どこからか「よくこんな所まで来てくださいましたね、ゆっくりしていってください」という声が聞こえてきて、次の瞬間長身で金髪の魔術師が目の前に現れます。無論、この男はウィズです。カーンがついてきている場合は事情を説明してくれますが、そうでない場合、冒険者が説明しなくてはなりません。万が一敵対的な行動をとったりすれば、ウィズと戦闘になります。絶対勝てないと思いますので詳しい説明は省きます。
 きちんと説明をすれば、ウィズは笑って、「それなら、私は上のほうの階で待っていますから、貴方方は上ってきてください。途中で見つかった品物は、全て持って行ってかまいません。私のところまで来られれば、他にもお好きなものを差し上げましょう。」といって来ます。何故そんなことをするのかと聞けば、「ただで品物を手に入れるのが冒険者ではないでしょう。それに、きっと貴方方の腕も磨かれるのではありませんか?」といったようなことをいいます。了承すれば、彼は魔法のポーションをいくつか渡してくれます。GMの判断次第で数を変えてください。精神力5回復と生命力10回復の二種類があります。


 この塔の中では、生命点が0になったなら、すぐにウィズがテレポートさせて治療を施しますし、その他何らかの原因で行動不能になったり、危険な状況になってもウィズが助けてくれます(但し、それらの場合そのプレイヤーは脱落です)。また、途中で降参を宣言すれば、そこで終わりです。それ以外では、塔の外には出られません(アンロックでは開かないように鍵がかけられます)。なお、カーンとウィズは一緒に上の階へテレポート(?)していくので、カーンとはここでお別れです。

 一階には、特に何もありません。奥に階段があって上にいけます。扉が5つありますが、開きません。魔法による解除の目標値は全て32です。万が一開けられたなら、奥には一部屋あたり10000〜20000ガメルの美術品が見つかります。


 二階。階段を上ると、一階と同じような作りで、奥に階段があります。しかし、その前にはゴーレムが立ちはだかっていて、通る者を攻撃します。冒険者のレベルを考慮して、オーク〜アイアンゴーレム程度まで自由に種類を決めてかまいません。数を増やしても、別にかまいません。この階にも扉が5つあり、左側手前の扉の奥には、ドラゴントゥースウォリアーが一体いて、入ってきた者を襲います。部屋から出れば追ってきません。倒して奥にある棚を調べると、共通語で「危険薬品につき触れるべからず」と書いてあります。実際2つのビンがあるのですが、中身を調べるのは大変危険です。茶色のビンの中には、フンババの体液が入っており、匂いをかいだり飲んだり、手を触れればフンババ・カースに犯される危険があります。黒いビンのなかには、「ラブ・パッション」がはいっています。右側奥の扉には、「式蜘蛛」の呪符がはってあり、開けようとすれば不意打ちをくらいます。倒して中を調べると、緑色の液体を溜め込んだ直径2メーターほどのプールがあります。この液体はウィズの渡した生命力10回復の薬と同じもので皮袋いっぱいで500ガメルもの価値があります。  なお、精神力5回復の薬も同価格です。ほかの部屋にはカラのビンや価値のない液体の入ったビンがあるばかりです。この階の扉は施錠してありません。


 三階。この階に上がると、警報のような音が鳴り響き、その直後周囲からガシャガシャという音が聞こえてきます。この階は、姿が透明なスケルトンがガードしているのです。その数はGMで決めてください。冒険者のレベル次第では、ドラゴントゥースウォリアーなどにしてもいいでしょう。スケルトンは、下の階に逃げ戻るなら追って来ません。この階は円形で、周囲には10以上の扉がありますが、ほとんどに解除の目標値32の魔法の鍵がかけてあります。その奥は何体ものゴーレムやドラゴンの牙などが収めてあるいわば兵器庫です。鍵のかかっていない扉は3つで、1つの部屋には武器類、もう1つの部屋には防具類が納めてあります。武具はすべてサテライトの魔法金属コーカスで出来ており、その価値は銀製の武具と同等です。残りの1つの扉の奥に、階段があります。


 四階。この階は入り組んだ迷路のようになっています。しかも、魔法的な力によって端がループしているため、延々と続いて見えます。ここでは、プレイヤーの一人にダイスを振ってもらい、以下のようにします。
1〜3…脱出カウンター+1、4〜5…同カウンター−1、6…モンスター出現

 カウンターが3になった段階で、扉が見つかります。この扉は、カストゥールにおける転送の門と同じもので、上の階に通じています。門の前にガードをおくのもよいでしょう


 五階。門をくぐってこの階に来ると、まず驚くのは、床一面にクリスタルの様なものがはってあり、しかも足下には青空や雲が透けて見えることです。おまけにこの階には我々の世界で言うところの電気機械のようなものがいたるところにあり、配線が何本も通っています。これ以降の階にはサテライト魔法科学の産物がたくさん眠っているのです。但し普通に考えるならこんな場所まで見知らぬ冒険者を招き上げるのは考え物ですから、初級レベルの冒険者ならばウィズは四階で待っている、ということにしても良いでしょう。
 さて、この階には部屋が3つと階段が1つあります。階段のほうを上るのは間違いで、この階段をいくら上っても、いくつもの階が果てしなく続くだけです。各階のガードたちと戦っているうちに冒険者たちは力尽きてしまうでしょう。これは階段に魔法がかかっているのではなく、単純にこの塔が恐ろしく高い所まで続いているためです。GMは途中で引き返すように示唆するべきでしょう。
 一番左の部屋は、中がなんと菜園のようになっていて、一人の男が農作業に従事しています。この男はこちらに気がつくと身を起こして挨拶してきますが、その声や姿はウィズとそっくりです。ただ、この男は髪を短く切っています。ウィズではないかと聞いても、笑って否定し、自分はこの塔の管理の一部を任されている者だといいます。実はこの男の正体は、ウィズが昔育てたマンドレイクです。この男と穏やかに会話すれば、階段を上がるのではなく、この階の中央の扉に入ればウィズに会えるだろうと教えてくれます。
 中央の扉は、取っ手も何もなく、押しても引いても開きません。アンロックなどの魔法もまったく無駄です。実はこの扉は、我々の世界で言うエレベーターのようなものです。しかし、最初の状態では電力が通っておらず、全く開きません。
 一番右の扉の中に入ると、突如扉が閉まり、同時に、前方から壁が少しずつこちらに向かって迫ってきます。扉は全く開けられないので、放っておけばおよそ20分もたたぬうちに全員が押しつぶされてしまうでしょう。この部屋の入り口付近の壁には、メイスなどの打撃武器がいくつもかかっています。しかし、これで迫ってくる壁を壊そうとしても、まったく歯が立ちません。実はこの壁は、サテライト魔法の「ディスペア・ウォール」で立てられたもので、太陽の光(ライトやウィル・オー・ウィスプはダメ)を当てると、その部分は瞬時に消滅します。ここでの正解は、自分達の背後の壁を壊して光を入れることです。マンドレイクにヒントを言わせるなどするべきでしょう。
 もし、正解できなくても、壁は冒険者たちを押しつぶす寸前で止まります。その場合は、もちろんそこで脱落となります。この部屋は床が透明ではなく、光が入らないようになっていることをほのめかすなどして、できるだけここで脱落しないよう考慮してあげてください。なお、迫ってくる壁は陽光以外では絶対に壊せません。
 迫る壁に穴をあけて奥へ進むと、レバーが1つあります。このレバーをたおせば、この階のエレベーターの電源はオンになり、扉の手前に立つことで開くようになります。その他、GMの裁量で、この部屋にガーディアンや宝物などを置いてもかまいません。


 エレベーターにしばし乗ってようやく辿り着くと、なんとそこは遥かな上空で、足元には雲が広がるばかりです。高度が高いためにやや息苦しく、しかも塔を上ってきたはずが、下には塔の形さえも見えません。遥か彼方に扉のようなものが見えますが、足元には床がありません。しかし、不思議な魔力に守られているため、落ちることなく歩いていけます。扉と全く違う方向にひたすら歩いていったりすれば魔力の範囲外へ出てしまい、落下する危険があります。その場合、落下中にウィズに助けられて脱落です。この階には、数体のエア・ストーカーが潜んでいて戦闘になります。無論、冒険者のレベルを考慮して加減を加えたり、モンスターを変更してもかまいません。


 いよいよ最後。空中に浮かぶ転送の門をくぐると、どこかのホールにでます。その出口は1つで、そこに強力なガーディアンが立ちふさがっているのです。相手はこちらが仕掛けるまでは攻撃してきません。このホールの中には、棚の上に最初にウィズがくれた薬が2本ずつと、魔晶石(15点)が1個見つかります。相手は、GMの方でレベルを考慮して設定してください。これが最後のバトルなので、少々強い相手でもかまいません。
 さて、バトルが終わって出口を抜けると、そこは先ほどのものよりも一層大きなホールになっています。しかも天井前面が透明で、宇宙空間のような星空がみられます。入り口の辺りには長い金髪の美しい女性が立っていて、このホールのどこかにウィズが隠れていて、それを見つけ出せば終わりだと教えてくれます。制限時間は30分です。このホールは20×20メートルほどの広さがありますが、人が隠れられるような所を全て探してもウィズはいません。机の中や、柱時計の中(笑)まで探しても無駄です。しかし、棚の上にいくつかの薬ビンが乗っているのが発見出来ます。その中身は、ラベル(共通語)によれば、「ラブ・パッション」、「ムーンライト・ドローン」、「リビング・ドール」、「アルニカ」、「ヘンルーダ」、「リグニア石」です。このうち、「ムーンライト・ドローン」は既に開封した跡があります。実は、ウィズはこの毒を飲んで女性化し、そ知らぬ顔で入り口で冒険者たちの応対をしたのです。それを見破ればウィズは冒険者たちの成功を褒め称えます。


 成功なら2000点、失敗は程度に応じて0〜1000点の経験点を与えます。倒したモンスターも経験点に考慮してかまいません。
 ウィズは、約束どおり成功した冒険者たちには望む品物を与えます。+2までの魔法の武具や、いくつかの魔晶石、コモン・ルーンや遺失魔法などです。現金はあまり持っていないとのことですが、どうしても欲しいといえば、近辺の町で装飾品などを売って数十万ガメルほど持ってきてくれます。ウィズは気前良く与えてくれますが、貪欲は嫌いなので、あまり欲張ると拒否を受けます。また、自分に技や知識を教えて欲しいと持ちかければ、弟子として指導を仰ぐことも可能です。
 失敗でも、精一杯の努力をしたと思える者には、やはり貴重な品を分け与えてくれます。ウィズは、要するにこちらの勇気や知恵や人間性などを確かめたかったのです。その後、近辺の村や町まで送ってもらい、このシナリオは終了です。


 彼の預かる気象観測塔にはまだまだ多くの設備やガーディアンがいるわけですが、それらの詳しいデータはまた別の機会に……。では……。



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