彼は両親を幼いころに無くし、それ以来生まれ育った村の村長に育てられてきた青年でしたが、18歳になったころに、いつまでも村に留まっていないで自分を試して見たいと思い立ち、冒険の旅に出ました。彼の名はあまりサーガなどでも有名ではありませんが、古代の魔物の復活を目論んだ組織の壊滅をはじめ、いくつかの英雄的な働きを成し遂げており、世界中を旅して回りました。
二十歳前後のころ、サテライトの遺跡である気象観測塔を訪れ、そこで出会った魔導士ウィズの人柄に惹かれて、教えを受けました。その後も各地を回り、あちらこちらの人々から様々な誘いも受け、一時期はある王国で将軍位についたこともありました。しかし、結局は権力と欲に溺れていく支配者階級の暮らしぶりに嫌気がさし、退いています。
最終的には、彼はウィズの住んでいる塔の近くにある小さな村で、教師兼村の責任者のような仕事に落ち着き、数々の優れた若者達を育てて穏やかな暮らしを送りました。その子供の中には、後にウィズ達とともに旅し、英雄として名をはせたブリティアも含まれています。このデータはブリティアがウィズとともに旅に出たころのカーンです。四十代も後半ですが、魔法の力か、二十代なみに若々しく元気です。
彼は落ち着いて凛々しい大人ですが、ウィズに出会う前は言葉づかいが荒く、無礼な話ぶりでした。その後、ウィズの教えを受けてか教師という立場柄か、言葉づかいは直りましたが、興奮したり怒ったりすると昔の口調が出てしまうようで、本人は子供たちの前でしっかりした教師として振舞うのは疲れると感じています。ウィズのことは師匠と呼んでいますが、ウィズ自身は彼のことを友人と考えています。
なお、ウィズに出会う前の彼は、ルーンマスターとしての技能は持っていませんでした。
補足しておくと、彼の腕に彫られたタトゥーはサテライトの研究によって生み出された技術の一つで、精霊語を知らなくとも自分、又は他人の内部にいる精神の精霊に語りかけられるように工夫されたものです。レプラコーンやサンドマンなど他の精神の精霊に対応したものもあります。しかし、一人の人間には基本的に一つの紋章しか彫れません。精霊の混乱を招くことになるからです。また、この紋章は精神に深く食い込むようにして彫られるため、彫られたものはまるで傷口から骨までナイフでえぐられたような激痛を感じ、それが数日間にわたって持続します。下手をすると発狂する者もあるでしょう。この痛みは神経によって感じるものではないため、麻酔薬などでは緩和できません。