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太正浪漫堂 拾壱(最終回)

太正浪漫堂 拾壱(最終回) 筆:ひでじい氏
「新しい戦いの幕は…。」 筆:ひでじい氏
パチパチパチパチパチパチ・・・ 筆:ミュラー大将氏
お疲れ様、でした。 筆:紀州人氏
感謝感激! 筆:冬鳥氏
そして時は流れ・・・ 筆:妙法寺ラビ氏
│└「確かにすばらしい人々ですね。」 筆:ひでじい氏
「丸赤」の社員なのか(笑) 筆:シスル氏
大団円!!! 筆:桜嵐氏
舞台の幕が今、閉ざされ 筆:真神樹氏
│└「我、謎ノ解明ヲ強ク求ムルモノナリ。」 筆:ひでじい氏
│ └謎解き編(長文注意) 筆:真神樹氏
│  └「なるほど・・・・」 筆:夢織時代
お疲れ様でした 筆:大神のぶっち氏
│└「のぶっち、どうしたんだ。こんなところで。」 筆:ひでじい氏
我らが夢の具現は、ここにて 筆:夢織時代
お疲れさまでした 筆:武臨氏
刹那・・・いや、せつない 筆:Ai氏
スタッフロール。 筆:魔女吉氏
幸せな夢に、感謝を。 筆:イカルス星人氏
万感の思いをのせて・・・ 筆:智士氏
│└「これは全ての始まりに過ぎない。」 筆:ひでじい氏
│ └さてと。 筆:イカルス星人氏
ぐおおお、大遅刻じゃないですか!!(TT) 筆:南国華撃団氏
(現在許可待機中) 筆:猫侍氏
ごめんなさい!!! 筆:無法地帯氏
夢の続き。 筆:花丸氏
そんなぁ(涙目) 筆:驍橘氏
 └「何ともうらやましい限りですよ。」 筆:ひでじい氏

ひでじい氏
「ここは太正浪漫堂。瀟洒な煉瓦づくりの建物。青銅の窓。彫刻と絵画、ランプの織りなす凝った内装。珈琲と紅茶の香りの中でそれぞれが思索の世界に浸る。」(ミュラー)

「小説や脚本、詩だけではない。自然、社会、人文…。ここは様々な知識や話題の飛び交う場所。芸術と文化の交差する場所。そして…。」(夢織)

「次回 サクラ大戦 太正浪漫堂 拾壱 「新しき風」 太正櫻に浪漫の嵐!」(智士)

「決して逃げたりはしないよ。」(英爺) 


 夜空に瀟洒な建物が浮かぶ。大神一郎と真宮寺さくらが、帝劇花組が、そして米田支配人がこの太正浪漫堂を訪れてから早くも一週間が経過した。あの衝撃的な出来事がまるで嘘のような浪漫堂本館である。

 今日の浪漫堂は大賑わいで、本館ばかりではなく、別館までがコーヒーフロアとして開放された。いつもにも増して人が多いのは、帝劇特別公演が大当たりとなっているためである。南國の脚本とエズミの演出による花組公演の歌劇「魔笛」が帝都交響楽団との合同で初めて開催され、その斬新な舞台で大好評を博している。初日は特別編として米田やかえで、大神、加山が出演し、会場の爆笑と熱烈な拍手を浴びた。
 賑わう浪漫堂の大半は公演を終えて食事や喫茶を楽しむ一般客がほとんどだったが、中には「魔笛」の成功を見て、脚本家を志してこの浪漫堂を訪ねてきた者もいた。中には隆宏を始め、ジョージ、冬鳥、理世、泰久など将来を嘱望される新しい人々が早くも活動を始めていた。太正浪漫堂にまた新たな風が吹こうとしていた。

カランカラン…。

 こうした中、手慣れた様子で趣ある扉を開け、中に入ってきた者たちがいる。喧噪極まるカウンターでウエイターに手早くアッサムティーの注文を済ませると、客席をするりと抜けこの時期は一般客にはまだあまり人気のないテラスへと向かう。

「随分と混んできたな。」年長の者が上着を脱ぎながら言う。
「南國さんのせいですね。本当にあの人はすごい人だ。」もう一人も席に座りながら言う。誰あろう、この二人が今や浪漫堂の重鎮となったミュラーと夢織である。

「ところで夢織、卿の要望どおり米田支配人には頼んできたぞ。」ミュラーは一週間前の事件の後、米田支配人のところに赴き、浪漫堂に集う学者たちの身の安全策を米田と検討してきたのである。
「いざというときは浪漫堂へ…。そうでなくとも集まるのですが。」夢織は微笑した。今できることはできるだけ個人で行動しないこと、夕食時には浪漫堂に集うこと、緊急時には浪漫堂か帝劇に行くこと…。こういったところであった。いささか窮屈だが、当分はこの程度くらいのことしか考えられなかった。

「どうした?二人で。少し爺むさくはないか。」二人に声を掛ける者がいた。ルドルフと智士である。
「そちらも奇妙な取り合わせだな。」ミュラーは声の主を仰ぎ見ながら言った。

「ああ、玄関でたまたまいっしょになったんだ。俺の方は今から聖と夕食だ。昨日は校正で本当に忙しかったからな。」確かに夜毎起こる怪事件の連続でルドルフは憧れの帝劇グラフの編集を解任され、社会部に逆戻りとなった。甘い日々は長くは続かない。今日はどうやら聖と久々の夕食を取るらしいが、その後また社会部に戻らなければならないとルドルフはこぼした。

「私は帝劇からの帰りです。」智士は早くも定例春公演の脚本の1つを取り、その準備のため藤枝副支配人やマリア、大神、加山らとの打ち合わせに没頭していた。昨年冬のクリスマスコンサート以来、帝劇の人気は急上昇している上にラジヲ等の出演も重なり、帝劇花組のスケジュールは過密になっていた。しかし、藤枝副支配人とマリアの強い要望で原点に立ち返りしっかりした稽古による芝居づくりをすることになった。 それで智士の力強い脚本が採用されたのである。大神からは資金面、加山からは舞台装置から、それぞれ検討課題が出された。確かに疲労は感じていたが、智士にとってそれは心地よいものであった。

「みなさん、お揃いですね。」
「いよっ。早いなあ。」現れたのは南國とイカルスである。
「これはこれは。某有名脚本家。」ルドルフが茶化す。
「やめてくださいよ。あれはエズミ君の演出がよかっただけなんですから。」南國は謙遜する。しかし南國の卓越した脚本の力は今や帝都でも評判だ。幸か不幸か脚本ほどに本人は知られていないが。
「俺の方は何か言ってくれないのか。陛下。」イカルスが言う。
「これはこれは。有害物質様。」ルドルフは丁寧に会釈した。
「何だよ、陛下。まだ聖さんの件で恨んでるのか?」イカルスの逆襲にたじろぐルドルフを見て、場は笑いに包まれた。

 夜になると堅実な紀州人、相変わらず洒落た服装の二階堂、今や中堅のMOSと櫻嵐、場慣れしてきた花丸、事務レベル交渉の終わったかとおおお、残業明けのシュペーアとビッテンなどが次々と姿を見せる。浪漫堂本館のテラスが光り輝く時間だ。気心の知れた仲間たちが夕食を取りながら話に興じる。その間にも次から次へと人は訪れる。

「みなさんもうお揃いなんですね〜。」今日は珍しく洋装の彼女。
「いやあ、ここのところ忙しくてさ。」いかにも仕事帰りのサラリーマン。
「こっちも事件でバタバタしてるしな。」あくの強い職人気質の記者。
 夜の帳が降りる頃、BAT、菫月、黒火会が相次いで訪れた。さらに袴姿の猫侍、商社に買い付け結果を報告したシスル、帝劇に原稿を出してきたAi、競馬場帰りのクリアル…。みお、晃子、そして真神や武臨も浪漫堂に集まってきた。MOSと花丸が隆宏や冬鳥たちを紹介すると座は珈琲の香とともに穏やかな雰囲気に包まれていった。

「…というわけだ。よろしく頼むよ。」MOSが一通りの紹介を終えて珈琲に口をつけた。
「しかし…。何かが足りないような気がしますね。」真神が首をひねる。
「そう言えばここに来るべき人が何人か…。」菫月が思い当たったように言う。
「そうか!イカルスさん、英爺さんはどうしたんですか。」花丸がイカルスに尋ねた。
「フフフ…。遠慮がちにさくらさんを詠んでいたあの詩人がねえ…。」イカルスは独り笑いすると一座の者にこう話した。

「あいつは一生分の勇気の金貨を握りしめて勝負に出たぞ。」
「どういうことなんだ?」武臨が聞き返す。
「いつもはよれよれの汚れた白衣を着ているあいつが、一張羅の背広でデートに出かけた。」
「何い!!!」動揺する浪漫堂テラス。
「で、誰と…、まさか!!」南國が思いついたのか驚きの声を上げた。
「詳しく話を聞こうか。」ミュラーの目がじっとイカルスを見つめた。
「あ、悪いな、英爺。」夕食をあいつら、ここで取るんだっけ。まずいなあと思いながらもイカルスはもはや逃れられないことを理解していた。

「みんな、今日は取っておきの…!!」魔女吉が飛び込んできたのはそのときだったが、英爺の話題で沸騰してそれどころではなかった。

「しかし、今日の服装は気合いが入ってるね。」大帝國劇場のロビーで英爺が微笑して服装を誉めた。
「ま、まあこういう服装も久しぶりだし…。ひ、英爺さんこそ、今日はすごいじゃないですか。」ショートカットのエズミは誉められた照れ隠しに英爺に話を振り返す。
「いや、そのう、まあ、今日は特別な日だから。」英爺は少し動揺してネクタイを締め直すと、
「今日は無理を聞いてもらって本当にありがとう。本当によかった。」とぎこちなく礼を述べた。
「いいえ、どういたしまして。ふふふ。でもデート先まで帝劇だなんて。本当にここが好きなんですね。」
「ああ、ここは僕に取っては夢の場所だからね。」英爺は帝劇ロビーのシャンデリアを眺めながら本当に嬉しそうな表情で言った。

「あ、いつもの英爺さんの表情に戻った。それでこそ英爺さんですね。」
「そ、そうかな?」
「でも私も今日は嬉しかったんですよ。」
「え?!」
「さあ、浪漫堂で夕食にしましょう。」彼女が英爺に手を差し出す。
「…ありがとう。」英爺は彼女の手をしっかりと握った。こんなことは彼が生まれて以来の快挙である。

 手を引かれながら英爺は大帝國劇場を出た。途中大神に会ったが、大神は事情を察するとにっこり笑って軽く敬礼した。御武運を…というところだろう。英爺も片目を瞑り手を挙げて応えた。途中大帝國劇場を何度も振り返りながら、この日を決して忘れないと脳裏に強く焼き付ける英爺だった。

「英爺さん、どうかしたんです?」
「うん。こんなに美しい帝劇は初めてだ。ここを見てると…。」
「見てると?」
「僕は決して運命から逃げたりしないよ。そう思ったんだ。」
「あなたは決して逃げない人です。」英爺の決意を聞いたエズミは笑顔で賛同してくれた。


 その大帝國劇場では、米田とかえでの元に先日の浪漫堂での会合を裏付ける政府調査団報告書とその注釈がミュラーから届けられていた。憂慮すべき内容が具体的調査結果に基づき記載されていた。

1 陸海軍の旧京極派高官及び支配下にあった部隊の動向
1’同報告書を補強する軍事政策プレゼンス(ミュラー)と報告書が甘いとするミュラー・夢織の見解
2 海外の霊子甲冑等霊子機関や霊子核機関の開発動向及び海外における妖力術者、降魔の動向
2’同報告書の補完見解(かとおおお)、国内、特に帝都の霊的防備の弱体化を指摘する見解(夢織)
3 旧京極派の行動原理・行動実態・構成員の報告
3’同報告書の誤謬訂正と補完報告(黒火会)
4 旧京極派の研究・実験・教練内容
4’歴史学的考察及び古文書文献の補完(無法地帯)
  考古学的考察(イカルス)及び報告書の誤謬指摘(イカルス)
  生態学的・地質学的考察、報告書の補完、誤謬の指摘(英爺)
5 京極の乱関係資料の紛失・盗難・破壊等(ミュラー、夢織他多数)
6 近年の魔に関する事件の報告(政府報告書補遺・真神)
6’真神報告書の行政資料及び統計資料による補完(シュペーア) 
7 太正浪漫堂事件の調査結果(真神・加山・大神)

「この前の件で浪漫堂の連中がこの報告書をつくってきてくれた。おめえ達の意見が聞きたい。」米田はかえでから報告書を二冊手渡してもらうと大神と加山にそれを預けた。
「新しい敵の出現は決定的だ。敵を知り、己を知らなければ勝てん。」

 米田を中心にかえで、大神、加山による情報の検討が始まった。帝撃は新しい緊張感に包まれた。

ひでじい氏
「新しい戦いの幕は…。」ミュラーが夜空を見上げる。
「残念ながら切って落とされました。」夢織が応じる。

「英爺。俺達は運命から…。」グラスを見つめながらイカルスが呟く。
「ああ、決して逃げることはできないし、逃げてはいけない。」英爺はイカルスの声に応じるように言う。

「いいか、大神、加山、今度の敵は…。」米田が眉間に皺を寄せて話す。
「ええ、最大級の組織力と情報力を持った敵で…。」加山が口火を切る。
「軍事力、機動力にも卓越…。」大神も慎重に応える。
「この状況で市民をいかに護るか…。」かえでが地図を取り出す。

「そう、新たな見えざる大戦が始まるのです。3回目の。」夢織は髪をなびかせミュラーに言った。この帝都の美しい夜景をどこかで冷徹に見つめる敵がいる。その見えざる敵に帝國華撃團と浪漫堂が戦いを挑もうとしているのだ。

「どう出る?大神隊長。」ルドルフは聖と会食しながら心はずっとその一点を模索し続けていた。ルドルフの心を知る聖は黙って珈琲をルドルフに差し出した。

 ここは太正浪漫堂。その瀟洒な建物と珈琲の香は客の心を決して離さない。演劇に、小説に、詩歌に花開くそこは、帝撃とともに闇と戦う砦でもあった。

 そして新しい舞台の幕が開く…。

Ende


原作
 ひでじい「SEGA BBS「サクラ大戦」太正浪漫堂壱〜拾壱」

出演
 東京帝國大学法學部政治學科助教授:ミュラー
 東京帝國大学文學部史學科講師:夢織

 帝撃グラフ記者(帝都日報社会部兼務):ルドルフ

 内務省企画調整局企画調査課事務官:シュペーア
 外務省欧州局付書記官:かとおおお

 フリーライター:黒火会
    同   :クリアル

 劇作家・小説家:南 國
    同   :エズミ
    同   :武 臨
    同   :紀州人
    同   :智 士
    同   :櫻 嵐
    同   :MOS
    同   :BAT
    同   :花 丸
    同   :猫 侍
    同   :A i
    同   :み お
    同   :加山晃子 
    同   :真宮寺隆宏
    同   :冬 鳥
    同   :ジョージ
    同   :理 世
    同   :泰 久
    
 四菱重工原動機課技師:二階堂
 東京化學塗装工學課技師:ビッテン
 帝都交響楽團事務局:菫 月
 商社「丸赤」外資部貿易課:シスル
 帝都放送文化部ディレクター:魔女吉
 銀座中学國語教諭:妙法寺
 東京學芸大學学生・星神:のぶっち

 東京學芸大學文學部考古學科助手:イカルス
 東京學芸大學地質研究所助手:英 爺
 京都帝國大學文學部史學科助手:無法地帯

 陸軍戦史研究所主任研究員:真神 樹


友情出演
 大帝國劇場支配人:米田一基
   同  副支配人兼総務課長:藤枝かえで


   同  花組:マリア・タチバナ
       同 :桐島カンナ
       同 :イリス・シャトーブリアン 
       同 :神崎すみれ
       同 :李紅蘭
       同 :真宮寺さくら
       同 :ソレッタ織姫
       同 :レニ・ミルヒシュトラーセ
    
   同  総務課:大神一郎
   同  施設課:加山雄一
   同  企画課:山科 聖      

あとがき
 この太正浪漫堂、何回も言っているのですが、当初は一回きりの短編のつもりで書いたのです。ところがそれに見事なまでのレスSSがついて大いに盛り上がり、今回まで続きました。レスの方がはるかに深みと圧倒感のあるものが多く、作者の僕も頭の下がるものばかりでした。
 こういった形式のため、途中ストーリーが何本か分かれたり、前後のタイムテーブルが合わなくなるといったハプニングが起こり苦しんだことがあります。後、女性であることが分かって辻褄を合わせるのに苦労しました。エズミさん、智士さん、猫侍さんなんかがそうです。それから話題を説明する関係上、終わってみれば学者だらけというのも反省点でした。
 まあ、何とか終わることもできたのはみなさんのおかげだと思います。特に夢織さん、真神 樹さん、南國華撃團さんには世界観の構築で多大な示唆を頂いたように思います。またエズミさんには大変御迷惑な話でしたが乗っていただき感謝に堪えません。ここまで御愛読いただき本当にありがとうございました。

 でもここでせっかく仲良くなったので、いつかこのメンバーで鍋を題材にしたSSを書く予定です。これはあくまで僕の個人的な楽しみということで勘弁してください。

 では、また太正浪漫堂でお会いしましょう。

ミュラー大将氏
パチパチパチパチパチパチ・・・

おめでとうございます。
貴殿の快挙をたたえ、ここに最大級の賛辞を送るモノであります。
幾多のハプニングに見舞われながらも小官以上の辻褄合わせ・・
まさに驚異の世界、誠に見事であります。

謎、敵、友、笑い、驚き、食、酒、珈琲、そして紅茶と次なる鍋に
プロージット

紀州人氏
お疲れ様、でした。

紀州人でございます。実に大変な企画になりましたが、凄かったなあ....
しかも某所での番外編?(謎)もあったり、と....

私は辻褄合わせは下手だし、最近低調(ようやく出口が見えてきたような?)だったりと、
あまり参加出来なかったのが残念ではありますが、毎回楽しみにしておりました。

笑いあり友情あり活劇あり、本当に楽しませて頂きました。しかし、舞台はまだ終わらない...
『夢のつづき』を聞きながら、まさに感慨無量の気持ちです。それでは....

冬鳥氏
感謝感激!

そして、新しき物語の扉が開かれようとしている…。
ひでじい様、大変お疲れ様でした。
本館のあののんびりとしていた雰囲気、その裏で起こってしまった
新しき敵との遭遇事件の緊迫さ、そして、帝劇の人々を交えて再び
始まった夢の宴…。
すべてが最高でした。

そして、最後の最後にこの私を浪漫堂に招待して頂き、本当にありがとうございました!
ああ、ようやく私も浪漫堂の一員になれたんだなと思うと、とても感激
しております。
でも、しばらくは並みいる重鎮の方々の姿に緊張しまくっている、端で震えている「しがない公僕」でしょうが。(笑)

お鍋のお話、楽しみにしております。
ありがとうございました。

妙法寺ラビ氏
そして時は流れ・・・
幾多の戦渦を経てなお栄える、かつて帝都と呼ばれた街で
いまなお、昔と変わらぬたたずまいを残す店がある
其は文化と芸術の交わる場、そして・・・・・・
愛すべきものを守る為、力を尽くす人々が集う場所
其の名は太正浪漫堂、輝きは永遠(とわ)に色褪せず・・・


はじめまして、英爺さま。妙法寺ラビと申します。
ついに参加することはかないませんでしたが、第壱話から
皆様のレスも含めて、ずっと拝見させて頂いてました。
まずは、すばらしい一大長編の完結おめでとうございます。
そして本当にお疲れ様でした。

これだけ枝葉末節まで広がったこの物語をまとめあげ
最後まで書ききってしまわれた、ひでじい様の力量
本当にすばらしいと思います。私はただの一読者にしか
すぎませんが、楽しませて頂いたことに心からお礼を
述べたいと思い、レスをつけさせていただきました。


春は巡る、いつも美しく、いつかまたこの夢のつづきを・・・・・・


最後に、順序が逆になりましたが
今後ともよろしくお願い致します、それではまた・・・・・

ひでじい氏
「確かにすばらしい人々ですね。」妙法寺はカウンターで水出し珈琲を傾けながらそう独り言を言った。地味なスーツ姿のいかにも教師か事務職といった出で立ちである。

「帝劇であれほど夢中に議論できて、文化の話、歴史の話、科学の話と話題も豊富で…。私もあんな中に入ることができれば…。」思わずため息が出る。

「そう思ったらまず実行じゃないか。」ふと後ろから声がする。
「あなたは…。」
「ああ、俺はイカルスだ。考古学をちょっとやってる。こっちは…。」
「二階堂です。エンジニアです。」
「申し遅れました。妙法寺と申します。學校で國語を教えていまして…。」
「おおっと、その紹介はみんなの前で頼もうか。」
「あっ、私はまだ…。」

 躊躇する妙法寺をイカルスと二階堂がテラスに誘う。ミュラーや夢織に無理矢理紹介されて最初は困惑していた妙法寺も次第にうち解けていった。珈琲の香が全てを和ませてくれるのかも知れない。

 カランカラン。浪漫堂の扉に若い青年と女性の姿を見つけると浪漫堂の面々が一気に沸き立った。どうやら先程までの話題のカップルのことらしい。

「これが、これが太正浪漫堂…。」妙法寺は静かな、しかしこみ上げてくる興奮を抑えることができなかった。

 ひでじいです。せっかくですから珈琲でも飲みましょうよ。最終回ですからね。ということでスタッフロールに入れますね。どうもありがとうございました。


シスル氏
「丸赤」の社員なのか(笑)

外国生活が長いだけあって、デーブ・スペクターも真っ青な、ジョークを喋り捲るのも
もっともなのですね。ここに、シスルが考えもしなかった設定が・・・(爆)
しかし、破綻なく浪漫堂に終焉を迎えさせることが出来た、ひでじいさんの才能に、
嫉妬と羨望の眼差しを、送っております。
ひでじいさんの、新SSを期待しつつ・・・

目指せ、サクラBBS最大派閥(笑)、サクラBBS限定非公認つっちーFC”土蜘蛛
の巣会”002副会長、シスルが記す。

でわ!

桜嵐氏
大団円!!!

本当に・・・本当にお疲れ様でした!
夢のような時間を頂けて、心から感謝しています。(^^)

話を膨らませ、補完するレスSSであれば、ひでじいさんもやりやす
かったかもしれませんが、私の場合、自分の欲望を満たすために
浪漫堂を利用したみたいで・・・。(^^;;;;
それでも、こころよくお仲間に加えて頂けて、夢も叶って、沢山の方々
と語らえて・・・・何度も言いますが、素晴らしい時をありがとう
ございました!!!

浪漫堂の棚には、グラスに紛れる様にして、たった一つ、湯飲みが置かれている。
それは、櫻嵐という若者が、確かにここの常連であったという証・・・
夢の時間はひとまず幕を下ろしたが、それが消え去る事は決してない。

太正浪漫堂・・・珈琲とワインの中に、ほんのちょっぴりの葉の匂いが
漂う素敵な場所。
太正浪漫は終わらない。

真神 樹氏
舞台の幕が今、閉ざされ
夢の時間は現実へと帰る。
それは夢、仮初の世界。
だが、夢の時間に味わった感動だけは紛れも無い現実。
それだけは確かな現実として心の糧となる……

帝劇花組の公演は、きっとこんな舞台だったのでしょう。
そしてひでじいさんが主催された太正浪漫堂の記録は、確かにそんな帝劇の雰囲気をディスプレイ越しに運んできてくれました。
素晴らしい企画、ありがとうございました。そして、お疲れ様でした。

PS

>特に夢織さん、真神 樹さん、南國華撃團さんには世界観の構築で多大な示唆を頂いたように思います。
私はどうも、世界観を微妙に違う方向へずれさせて行ったような気がするのですが(^^;
反撃と称してとんでもないパラレルワールドまで発生させてしまっていますし(汗々)

この終り方なら、もう謎解きは必要ありませんよね?
もし必要だったら仰ってください。一応用意はしてあります。
過去の水域ででも発表する事に致しましょう(^^;;

ひでじい氏
「我、謎ノ解明ヲ強ク求ムルモノナリ。」

 真神は京都の無法地帯からの電報を受け取った。無法地帯もいろいろと過去の文献を当たってくれているらしいが、今ひとつ手がかりに欠け、苦しんでいるようだ。

「前略、無法地帯殿。先日は大変お世話になり、恐縮の限りです。早速、例の魔物についての分析結果をお知らせします。一部については推論が入っていることも御了承ください…。」真神は真剣な表情でペンを走らせた。核心に入ってくるにつれ真神の額にうっすらと汗が浮かんだ。

ひでじいです。無法地帯さんがどうしてもということでしたのでぜひお願いします。

真神 樹氏
謎解き編(長文注意)
太正浪漫堂(SSかな?)の謎解き編です。
予めお断りしておきますが、これは全面的に私個人の妄想によるものです。
実在の土地、歴史、文献、伝承、その他諸々とは無関係のフィクションであるとお考え下さい。
それにしても……私は決してナルシーではないのです。
これはあくまで「謎解き役」という役柄によるものなのです。
信じてください!!……ちょっと無理かも(滅)

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『我らが輝けるスター、真宮寺さくら様へ憧れと賛美を込めて』

 一通のファンレター。
 特に珍しいものではない。
 ここは大帝国劇場、今は花組アンコール公演「魔笛」の上演期間。
 ファンレターの数は毎日優に三桁を超える。
 これもそうした何の変哲も無いファンレターの一つ。
 少なくとも、預かった時はそう思っていた。
 花組に寄せられるファンレターの大半はモギリの青年、大神一郎が預かる。
 閉幕時のロビーは、到底贈り物を一つ一つ確認できるような状態ではない。
 帝撃ファンにその様な不埒者は少数とはいえ、全く警戒しないわけにもいかず、せめて役者を傷つけるものでないかどうかだけでも判別する必要がある。
 この青年の直感力はスター達を邪な意思から遠ざけるのにうってつけのものであった。
 しかし、あの混雑の中、それ以上の事は不可能である。
 だから、彼がその封書の差出人名を見たのは、客の姿がすっかり消えてしまった後だった。

『貴女の忠実なる崇拝者 真神 樹』

(?)
 大神青年はかなり記憶力のいい方である。彼は、この差出人の名前に見覚えがあった。
 そして、その容貌も。余り特徴の無い、有体に言ってさえない人相の男であったが、この男に会ったその日その場所である事件に遭遇した所為で、彼の事はその場に居合せた他の人々同様はっきり憶えていた。
 彼が首を捻ったのはこの手紙を彼に言付けた人物の顔が、彼の記憶の中の顔と一致しなかった所為である。だが、すぐ考え直した。おそらく、仕事の都合か何かで舞台を見に来る事が出来ず、ファンレターだけでもと知り合いに預けたのだろう。
何となくそのままにしておく気になれず、大神青年はこのファンレターを宛先へ直に届けてやる事にした。

「さくらくん、ちょっといいかい?」
「はい、今開けます」
 ノックの後、名乗りもせずに訪う声に誰何も無く開かれる扉。親しみの込められた声に嬉しそうな返事。ただの、劇場職員と俳優の関係ではありえない。
「はい、これ。君宛のファンレター」
「あっ、わざわざすみません。でもどうなさったんです。今日に限って?」
 彼女がそう言うのも無理はない。何せ数が数だ。大神が預かったファンレターは他の物と一緒に一旦事務室で振り分けられて各人別のポストに預けられるのが常だからだ。
「うん、ちょっと、記憶に有る差出人だったから。ほら、君も覚えているだろう?池袋の浪漫堂で」
「あっ、あの時の!ついこの間の事なのに何だか懐かしいですね」
 封筒を裏返してみて声を上げたところを見ると、彼女も憶えていたらしい。
「立ち話もなんですから、大神さん、中へ入ってください」
 さくらはごく自然に大神を部屋へ招き入れ、大神もまたごく自然にその招きに応じた。それがこの二人の間では当たり前の事であるようだった。

「今日はあの方も見えられていたんですか?」
 上機嫌にさくらが問い掛ける。彼女ほどのスターであってもやはりファンレターは嬉しいものらしい。
 あの日、浪漫堂で知遇を得た人々の中には舞台関係者も大勢いた。将来の舞台関係者も数多くいた。そうした人達は頻繁に劇場で姿を見ることが出来たが、残念ながら、あまり劇場で見つける事の出来ない人達も少なくなかった。行政官、外交官、学者……彼、真神 樹もあれ以来姿を見ていない一人である。
「いや、ご本人じゃ無かったよ。多分、仕事が忙しいんじゃないかな?」
「そうなんですか……」
「にも拘らずファンレターを届けてくれるなんて嬉しいじゃないか。なんて書いてあるんだろうね」
「そうですね、ちょっと中を見せてもらってもいいですか?」
「もちろん。慌てなくていいよ、さくらくん」
 私信を覗き見る様な、私信を他人の目に晒す様な破廉恥とは程遠い二人である。さくらが書面を目でなぞる間、大神は礼儀正しく沈黙を守っていた。
「大神さん……?」
 やがて、何故か途方に暮れた様子でさくらが顔を上げる。
「どうしたんだい、さくらくん?」
「この、お手紙なんですけど……」
「どうしたの?まさか、何か変な事が書いてあったとか……」
「い、いえ、そうじゃないんです。とっても礼儀正しい文面で、こちらが恐縮しちゃうくらいなんですけど……一枚だけなんです」
「えっ?」
「お手紙が書かれているの、最初の一枚だけで後は白紙なんです」
 思わず、大神の視線がさくらの手元に釘付けになった。持って来た時からかなり分厚い手紙だと思っていた。実はさくらを主人公にした短編のシナリオでも入っているのかと思ったくらいである。改めて見てみても、十枚近くはありそうだ。
「ちょっと見せてもらってもいいかな?」
「え、ええ……」
 非礼と思いつつも、大神は好奇心を抑えられなかった。好奇心?いや、違う。何故かそれが必要であるように思われたのだ。
 さくらの手から紙の束を受け取った瞬間、確かな違和感を感じる。これは普通の便箋ではない。大神は、その正体にすぐ思い当たった。以前同じ物を加山から見せられた事がある。
「さくらくん、これは秘密通信用の特殊呪紙だ」
 そう言って立ち上がった大神の顔は、劇場職員のものでは無くなっていた。そこには、歴戦の勇士、帝国華撃團花組隊長が立っていた。

前略
 帝国華撃團の皆様。
 皆様との邂逅は醒の領域に現出した幸福な夢そのものでした。
 しかし、残念な事に夢の時間は一期一会のものとなってしまいました。
 私は今、監視を受けています。
 私が知り得た事実の断片を皆様に直にお伝えする事が出来ません。
 あの仲間達を介してお伝えする事すら出来ません。
 それで已む無く、この様な非礼な方法を取らせていただきました。

 帝国華撃團銀座本部地下司令室。同席するのは帝国華撃團総司令・米田一基。副指令・藤枝かえで。花組隊長・大神一郎と花組の八名。そして月組隊長・加山雄一。
 専用の読取機に挿入された特殊呪紙の表面には細かな字が浮かび上がっていた。

『私が皆様にお伝えしたいのは、先般太正浪漫堂に出現した人外の「敵」に関する情報の断片です。残念ながら、私の力量では敵の正体を完全に解明する事は出来ませんでした。しかし、いくつか判った事があります。
 まず第一に、あの人外の敵は現界の存在であったという事です。あの者には物質的な肉体がありました。魔界の瘴気が化成した実体を持たぬ魔物の類ではありません。英爺氏があの者の攻撃を素手で捉える事が出来た事実から推測はしておりましたが、残留灰を分析した結果確信致しました。
 あの者は「魔物」ではありません。「妖怪」と呼ばれる存在です。天地の精気を蓄えて変化した自然物。おそらくは、蔓を持つ古木が変化したものだと思われます。
 妖怪は遥か上代、「封神の儀」が行われるまで完全に人と共存していました。「封神の儀」を逃れた妖怪達も、この国の影の領域で人とこの世界を分け合って来ました。
 「封神の儀」についてはご存知でしょうか?奇書「封神演義」が娯楽小説の形を借りて、この秘せられた歴史の一端を伝えています。人を祖とする崑崙の仙人達と妖怪を祖とする金鰲島の仙人達の大戦。この戦いの末、妖怪は東亜の地から駆逐されてしまいました。一部の、東海の彼方へ逃れたものを除いて。
 仙界には三つの聖地が有ると伝えられています。崑崙山、金鰲島、そしてもう一つは蓬莱山あるいは蓬莱島と伝えられる地です。封神の大戦に加わらなかった、東海の彼方に位置する山であり島である蓬莱の地。それは、この秋津島です。伝説の古代都市、「富士の宮」こそが蓬莱であると私は考えています。封神の儀を逃れた妖怪達はこの地に落ち延び、そして人の住む「里」とは隔絶された「山」の領域を住処とする事になったのだと私は見ています。
 この国は、八百万の神々と八百万の魔が住まう国です。東海の果て、大陸の外縁に位置するこの国は、戦いに敗れ神の座を追われた神々が最後に辿りつく地です。それ故か、この国はいかなる神も受け容れ、いかなる神の覇権も許しません。魔に堕ちた神々ですらも受け容れ、世界を覆い尽くそうとしている絶対神の覇権すらも許さない。高天原の神々も、「和」の精神を以って神々の秩序を調整する立場です。戦いに敗れた妖怪仙人達がこの国を安住の地としても不思議はありません。
 問題は、何故今になって彼らが人間社会に干渉を始めたのか、です。彼らの住処たる「山」の領域を、開発の名の元に人間が犯し続けてきたから?無論それもあるでしょう。ですが、それだけでは何故今なのか?という疑問の答えにはなりません。
 私は、太正十三年のあの悲劇が引き金になっていると考えます』

 書面を読む大神の声が止まる。
 顔を見合せる花組の面々。今では、当時ここにいなかった織姫とレニも「悲劇」のことを知っている。
 大神は、一見超然とした態度を保っている。だが、彼の手が堅く握り締められているのをさくらは見逃さなかった。彼の隣では、かえでがその美貌を強張らせている。
 書面を読み上げる大神の声が続く。

『古代都市・富士の宮の祭祀を司っていたのは後に「藤に連なる者」と呼ばれる一族。富士の宮より全国の影の領域に散っていった妖怪仙人たちの末裔は、それ故に「藤に連なる者」の祭祀の影響下にあります。
 太正十三年のあの日、悪魔王の力を身に宿したある魔術師の手によって、「藤に連なる者」の最高位の巫女が魔に堕とされました。彼女の「堕天」は「藤に連なる者」の影響下にある妖怪達に強い衝撃をもたらしたことでしょう。悪魔王の波動が彼らを襲ったのです。
 そしてその時から、同じく悪魔王の影響下にある者達が魔の波動を手繰り寄せて、この国の結界を突破しようと試みているのだと推測します。おそらくは外国の悪魔崇拝の術者たちが、悪魔王の波動を足掛かりに妖怪を洗脳し、自らの尖兵として度重なる霊的天変地異により結界の弱体化した帝都へ向けて放ったのだと考えます。
 ただ注意しなければならないのは、通常魔術は国境を超えて作用しないという事です。「国家意識」「民族意識」はそれ自体が強固な結界として外国からの干渉を排除するからです。この結界を突破するには、「日本人」の内通者がいなければなりません。
 それは…極めて口にし難い事ながら、妖怪達と同じく彼女の「堕天」に強い影響を蒙った者達、即ち彼女の同族、「藤に連なる者」の中に存在すると考えるのが最も妥当かと思われます』

 息を呑む音。
 そこでは、かえでが両手で口を抑えていた。

『そう考えれば、重要な資料が次々と失われこれに関わった人々の動きが全て筒抜けになっていた理由も納得できます。この国の津々浦々に張り巡らされた「藤に連なる者」のネットワークを用いれば、民間研究者の動向など掌の中を読むが如きものでしょう。
 しかし、妖怪も内通者も、全て表面的な敵に過ぎません。忘れてはならないのは、この国を霊的に侵略しようとする勢力があるという事。
 そしてもう一つ。かの霊的秩序において、悪魔は予定調和の内に存在する者であるという事です。悪魔の次に来るもの。それこそがおそらくは真の脅威です。それは』

 大神が顔を上げる。
「書面はここで終了しています」
「随分中途半端な終り方ですわね…?」
「もしかして、それ以上書き続けることの出来ない状況に陥っている?」
「まさか敵の手が!?」
「真神氏にも他の方々と同じように月組の護衛をつけてあります。今のところ、彼の身柄に異変があったという報告は入っておりません」
 加山の落ち着いた報告が、色めき立つ花組のメンバーを鎮める。
「それにしてもとんでもなくでかい話になりやがったな……大神、オメエ、この分析をどう思う?」
「今のところ、否定も肯定も出来ません。一つの可能性だと考えます。ですが……」
「何だ」
「無視し得ぬ可能性だと思います」
「その根拠は」
「この書面が、ここで終っているという事です。名前は象徴として機能します。敵の名を書き記すという事は、敵に自分が知っているという事を教えることにもなりかねません。
 そこまでの配慮をする必要を真神氏は感じているのでしょう。単なる誇大妄想と片付けてしまうのは危険かと思います」
 重苦しい空気が地下司令室を覆った。そこにいる誰もが、迫り来る脅威の重みをひしひしと感じていた。

夢織時代
「なるほど・・・・」
夢織は大学の研究室でその知らせを受け取った。
真神から直接ではない。
帝国華撃団月組隊長、加山雄一から、真神の手紙の写しを渡されたのだ。
「できれば、考えたくない可能性だったのですが・・・」
「というと、このことを推測していたのですか?」
「いえ、感づいたのはつい最近です。この研究室に残されていた記録をあさっていたら、もしかして、という思いに駆られましてね」
「残されていた?」
ここは仮にも夢織の研究室だ。
残すも何も、記録は夢織が管理しているのではないのか。
加山の疑問は当然の物だ。
「加山さん、私が講師の身分で研究室を持っていること、不思議に思いませんか?」
夢織は、少し自嘲気味に尋ねた。
そう言えば確かにそうだ。
この帝大で研究室を持っているのは、教授か、最低でも助教授だ。
一介の講師が、研究室を持っているのは確かにおかしい。
「私はね、代行なんですよ。
もう十年になりますか・・・。ここの研究室を持っていたのは・・・つまりは私の師、ということですが、水地という助教授でした」
「ミズチ・・・?」
それは、巨大な蛇に似た妖怪の名だ。
「あなたの考えているとおりなのですよ。今にして思えば、水地は、かなり古くからこの町にいた妖怪だったのでしょう。彼は、あまりにも昔のことをよく知っていました。
まるで、見てきたように、ね。そして、古き江戸に対する憧れも、誰よりも強かった。
だから・・・私は反発したんですけどね」
「しかし、それだけでは証拠にはならないでしょう」
もっともである。それだけでは、ただの推論にすぎない。
「状況証拠なら、あるんですよ。もっとも、かく言う私も、つい最近知ったこともあるんですけどね。
水地は、十年前のある日、当時の講師をつれて、調査に行ったきり、帰ってきませんでした。そして、それからしばらくして、もう一人講師をしていた私の先輩も行方不明になりました」
「十年前・・・?」
夢織の知る事実・・・十年前・・・それはつまり・・・・
「そう、水地が行方不明になったのは、あの巨大降魔が、日本橋の遙か地下で出現した前日なのです」
そう言って、夢織は少し変色しかかった書類を取り出した。
一枚目は、降魔出現の前日。
二枚目は、降魔出現の当日。
大江戸大空洞への、通過必要書類であった。
一枚目には、水地の名が。
二枚目には、山崎真之介、そして、藤枝あやめの名が。
「どう思います・・・?そして、最近になって思い出したのですが、私の先輩がいなくなる少し前に、銀髪の軍人がこの研究室に来たことがあったんです」
それは・・・つまり・・・。

「妖怪の存在・・・・それは間違いないでしょう。
彼らは、本来私たちのそばにいたはずなのですから。
それから、それと関連して、少し言っておかねばならないことがあります・・・・」
夢織の口調が、とたんに重くなった。
いい話ではない。加山はすぐに察した。
しかし、悪かろうが、情報は集めねばならない。
それが、月組隊長たる、彼の仕事でもあるのだから。
「真神さんは、監視を受けている、と書かれていました。
しかし、真神さんには、月組隊員が常に護衛についているはずですよね」
「はい。それは間違いなく」
「常に・・・・ですね」
「・・・・・・・・・・!!!!」
加山の表情が一変した。
夢織が言わんとすること、それは・・・つまり・・・・。
「加山さん、あなたもそうですが、月組隊員は、古くより隠密として活躍してきた一族の者が多いはずです。人里離れた山奥などで、ひっそりと・・・・」
「そんな・・・・、馬鹿な!月組の隊員となる者は、特に賢人機関が調査することもあるくらい厳正に審査されている・・・・・」
賢人機関の名が出たとき、夢織の表情がさらに悪化したことに気づいて、加山はそれ以上言葉を続けられなかった。
賢人機関は、藤に連なる者と大いに関係がある。
つまりは、今度の敵とは・・・・・・・・・・・・・・・・!!
「私のは、真神さんのそれと違って、裏付けも何もない推論にすぎません・・・・。
ただ・・・・・・その可能性があることだけは・・・・・」
夢織も、それ以上言葉を続けられなかった。

このとき、学生の一人が、扉の外でその会話を聞いていたことに、夢織は、
そして、感知に長けた加山ですら、気づいていなかった・・・・・。

***********************************
こんばんは、夢織時代です。
ごめんなさい。
真神さんの解答編を読んで、あまりのすごさに、ついこんな物を書いてしまいました。
これは、完全に夢織の妄想です。
というか、対降魔部隊SSの第六話の、ちょっと先ばらしでもあるくらい個人的な代物です。
英爺さん、真神さん、みなさん、本当にごめんなさい・・・・・・・・・・。
ほとんど逃げモードの夢織でした。

大神のぶっち氏
お疲れ様でした

ひでじいさん、こんばんわ。
11回にも及ぶ長編SS、本当にお疲れ様でした。
サクラキャラは出てきてもあくまで脇役に徹し、実在の人物が本当の主役と言う一風変わったSSでしたが、設定、背景などがいかにも太正時代という雰囲気で本当に楽しかったです。
残念ながら私は参加できませんでしたが、皆さんのレスSSも素晴らしく、読んでいて心地よかったです。
某所では随分と勝手なことをしましたが、その辺はご愛嬌と言うことで・・・(^^;;
最後にちょっとだけ参加させてください。

*************************

大賑わいの太正浪漫堂をガラス越しに覗く一人の青年がいた。
使い込まれた学生服を着て帽子を目深にかぶっている。
彼はかとおおおの家に居座っている書生で、かとおおおの身の回りの世話しながら小説の勉強をしていた。
彼はよくここに来てはガラス越しに浪漫堂の常連達の話を聞いていた。もちろん店の中にいるわけではないので会話に加わることはない。だが彼等の話は青年にとって新鮮であり、驚きの連続であった。
まるで一冊の本を読んでいるかのような錯覚にさえ陥るときもあった。
いつかはこの輪の中に自分も混ざりたい、ささやかではあるが、これが彼の夢だった。
実は彼も雑誌等に作品を投稿しているのだが、いまいちウケは良くない。おかげでいまだに自立することはかなわず、下働きを続けている。
しかし今日ほど浪漫堂に入りたいと思ったことはなかった。覗いてみれば、著名な学者や技術者、作家が勢ぞろいしているではないか。ぜひとも彼等の話をじかに聞いてみたい。それがどれほど自分とって有益なものとなるだろう。
彼は思いきって浪漫堂の瀟洒な扉に手をかけた。しかし何かが彼を踏みとどめ、彼はその手を扉から放した。
何か思い当たることがあるのだろう、彼はポケットの中身を探った。中から出てきたのは数枚の1円札と小銭が少々。
「ハハハ・・・、これじゃあ年を越すのも難しいや」
青年は寂しそうに笑うと浪漫堂の前を離れた。これ以上いても未練が募るばかりであろう。
「かえって勉強するか。そしていつかはあそこに・・・」
一度振りかえり、浪漫堂の扉を見ると今まであそこで起こったことを思い出していた。本当に色々な事があった。
そして今さっき彼等は笑っていた。その顔は本当に幸せそうだった。その笑顔を思い出し、彼は空を仰ぎ見た。
彼は確信していた。例えどんなことが起ころうとも、あの笑顔がある限り、そこから様々な話が生まれ、人々はその物語に酔いしれるのだ。その中の一人に自分がいることも容易に想像できた。
「来年も楽しみだ、うう〜〜さぶい」
新しい時代を告げるかのように、暮れの帝都に一陣の風が吹いた。

でわでわ。


ひでじい氏
「のぶっち、どうしたんだ。こんなところで。」歩くのぶっちの前にコート姿の若き青年が立つ。

「かとおおおさん…。」複雑な表情でのぶっちはかとおおおを見上げた。
「何か用があるんじゃないのか。さては浪漫堂に入ろうとしたんだな。そうだろう。だったら遠慮しなくても…。」そこでかとおおおはのぶっちの表情をゆっくり見つめた。そして空を見上げると、
「どうだ。きょうは暇なんだろう?俺といっしょに珈琲でもつき合わんか。大丈夫だ。俺もぺーぺーの外交官だが、それくらいの金はある。」
 そして、のぶっちの背中を押すと、
「さあ、行くぞ。こんなところに立っていても仕方がないだろう。」
「かとおおおさん。僕は…。」

 遠慮するのぶっちをかとおおおは無理に浪漫堂の玄関まで連れていき、扉を開けさせた。暖かいランプの光。彫刻と絵画で飾られたロビー。そこをくぐるとテラスに抜ける。そしてのぶっちの良く知った人々がそこには立っていた。のぶっちの目に熱いものがこみ上げてきた。

「かとおおおさん、いらっしゃい。あれ。こちらの方は。」夢織が笑顔でかとおおおを迎えた。
「ああ、俺のところに下宿しているのぶっちだ。」

「よろしく…よろしくお願いします…。」最後の方は言葉にならなかった。不審がる夢織。かとおおおは黙ってのぶっちの背中を叩いた。BATは黙って珈琲を差し出した。

 太正浪漫堂は後に不世出の作家となるのぶっちをこのとき初めて迎え入れた。

 ひでじいです。最後の最後に御参加いただきありがとうございます。こんな感じでいかがでしょう。スタッフロールにも入れておきますね。

夢織時代
我らが夢の具現は、ここにて
こんばんは、夢織時代です。
本当に、本当に、すばらしいストーリーでした。
このBBSに集う私たち・・・。
私はかつて、ここを大帝国劇場に喩えたことがありましたが、
しかし、それ以上にふさわしいのは、帝劇を愛する私たちが集い、穏やかに時が流れる
そう、こんな店です。

帝都にあこがれ、
太正時代にあこがれ、
帝劇のみなさんにあこがれ、

そんな想いを、この浪漫堂は、全てかなえてくれたと思います。
ここでは私は、もう一人のなりたかった自分。
そして同時に、一人の小説家でもあって・・・。
私が、この十年夢見てきたことすらも、かなえてくれました・・・。

>特に夢織さん、真神 樹さん、南國華撃團さんには世界観の構築で多大な示唆を頂いたように思います。
お二方はともかく、私はそんなに何かをしたようには思いませんが・・・
でも、おそらく、
私たちみんながこうあって欲しいと思う世界の姿が、同じだったのかも知れませんね。


今は、幕が下りる。
でも、限りなく、私たちの夢は続く・・・。

***********************************
「冷え込んできたな・・・」
微かに霧がかった隅田川の水面を橋の上から眺めながら、夢織は一人つぶやいた。
「おいおい、なんだか自殺をするように見えるぞ」
見つめていたら思いがけず横から声がかけられる。
ミュラーだった。
どうやら彼も大学の仕事がおわった後らしい。
「いや、ここを守ってきた者のことを少し考えていたんですよ」
「・・・夢織、ここは、私たちみんなの帝都だ。今、ここで生きている、私たちの帝都なのだ」
「そうですね・・・」
さすがに、ミュラーの前では、自分の考えなど見透かされてしまうようだ。
「しかし、確かに冷え込んできたな」
「そうですね。鍋でも囲みたいですよ」
言いながら二人の足は浪漫堂に向いている。
我らの太正時代は、様々な文化の溶け合う時代。
浪漫堂は、様々な文化の集う場所。
鍋でも、珈琲でも、この帝都には、不思議としっくりくるものだ。
冬空も、決して嫌なものではない。
高みより白い使者がはらりと舞い降りる中、暖炉の温かい店に、今日も人々は集いつつあった。


**********************************
終わらない、私たちの夢に、
そして、この舞台をつくりあげたひでじいさんに、
終わりなき、ありがとう、を。
夢織でした。

武臨氏
お疲れさまでした

ついに真の完結ですね。
私は途中で「旅に出てしまって」レスをつけることができませんでしたが、
連載は楽しみに読ませていただいていました。
そんな私にまで最後の場にいることをお許し下さってありがとうございました。

ひでじいさんの次回作も楽しみにしております。

ではまた。

Ai氏
刹那・・・いや、せつない

太正浪漫堂の面々とお知り合いになれたばかりなのに・・・・・。
でも、これが終りじゃないですよね。
これが新しい一歩だと思います。
ひでじいさん、ご苦労様でした。
太正浪漫堂とひでじいさんに乾杯!





鍋は絶対食べるぞ〜〜〜!


魔女吉氏
スタッフロール。
乗りました。ありがとうございます。
色々な人々との交流を書ききった英爺様の努力、感嘆です。
途中人数が増えたり、イカルス師匠が女だったり色々ありましたが、
そんな夢物語も鍋で締める。うーん。ほんとにあったかです。


***********************************
「英爺さん、鍋を推定30人強の人数で突つくんですか?」
「くくく、そんな事もあろうかと、直径6mのスーパー鍋だ!どうだ!」
「で、誰がこの怪物鍋を運ぶんです?」
「魔女吉、貴様にやってもらう。嫌とは言わせんぞ。わかっておるだろうがの。」
「ていうか、推定1tを楽に越えるこの化け物を?」
「大丈夫。こうやって貴様の車にのっければ、えい!」

ぐしゃ。

「ふ、なんじゃポンコツじゃの。やっぱり手で運べ。」
「ええー!ていうか、あなた今軽々と持ち上げてましたよね?」
「ごほごほ。最近からだが弱くてのう。」
「くー、鍋の為だし、頑張るか俺!って、後何日かかるんだ?」

当然会場は普通の鍋を使う手配が出来ていた。

「鍋たべたーい!」

食べれなかった、だろうか?
***********************************
いやー、鍋楽しみです。頑張ってくださいネ!

ではでは♪

イカルス星人氏
幸せな夢に、感謝を。

こんばんは、ひでじいさん。ありがとう、そしてお疲れ様でした。
よくぞここまで上手くまとめてこられたものです。
最後くらいエズミさんとうまくいっても皆祝福してくれるでしょう。
と、気がつけば私は一人ぼっちか。
聖さんは陛下とよりを戻してるし(滅)
本編の絡みで智士さんにコナかけてみるか(核爆)
それはさておき、このシリーズ、まさにこのBBSの宝だと思います。
多くの人がここに集う証としてこれ以上のものはないでしょう。
それと、最後まで私がいい役で嬉しいです。
鍋の方は如何様にも料理してくださって構いませんので。

それと、あくまで私的な希望&夢なのですが。
ここの作家さん方の手によって「3度目の大戦」をこういう感じで
SS化するのは不可能でしょうか、設定はこれを引き継いで。
一読者としては猛烈に読んでみたい気がします。
追伸:戻ってきたエズミさんがこれを読んで何と言うか楽しみです。
それでは、また。

智士氏
万感の思いをのせて・・・
(汽車は行くってなったら999だっての)

ひでじいさん、こんばんは。そしてご苦労様でした。
ひでじいさんのおかげでこんなに素晴らしい舞台に
登場させていただけた事に感謝の気持ちでいっぱいです。
今後はオープンカフェとか、企みの鍋とか楽しみにして
いますね。(鍋奉行に立候補しようかな?)

でもって、ここにレスを付けたって事は、
イカルスさん、私にコナかけてみるんですか?
受けて立ちましょう!(おいおい、果たし状じゃないって)
確かにエズミさんとひでじいさんは良い感じですから、
コンビのイカルスさんがお一人なのも淋しいですから、
私などで良ければいかようにもお使いくださいませ。

>ここの作家さん方の手によって「3度目の大戦」をこういう感じで
>SS化するのは不可能でしょうか、設定はこれを引き継いで。
私も猛烈に読みたいですね。
賛成です。

それでは、また。
残業は嫌いだ!けど、やらないとね・・・の智士でした。

ひでじい氏
「これは全ての始まりに過ぎない。」(ミュラー)
「浪漫堂に集う者に忍び寄る影。あいつらはいったい…。」(夢織)
「イカルスさん!!イカルス…」(智士)
「離せ!!あいつは俺の親友なんだ!!」(英爺)
「行ってはだめ!!死んじゃう!!」(エズミ)

「次回、サクラ大戦3.1「忌まわしき使者」太正櫻に浪漫の嵐!!」(かとおおお)

「帝國華撃團出撃せよ!!」(大神)


…な〜んて感じだといいんでしょうけど(笑)

しかしコナですか。燃え上がる炎!!イカルスと智士の間には…。う〜ん。このラインでいいのかなあ…。

残業はほどほどに。無理はするな、などとは言いませんが程々に。がんばれ!!智士さん!!

イカルス星人氏
さてと。
真神さんの謎解きも終わったことだし、時間も経ったし。
もう訪れる人も少ないだろうから、ご本人に許可を戴いたやつを
始めるとしますか。

イカルスは浪漫堂のカウンターに頬杖をつき独り珈琲を飲んでいた。
その視線の先には二組のカップルが存在していた。
英爺とエズミ、ルドルフと聖。
その仲睦まじそうな姿を見ながら彼は溜息をついた。
「どうしました?何だか寂しそうですね」
カウンターの中からマスターが声を掛ける。
「いや、男女の仲というのはつくづく面白いものだと思いましてね。
研究一筋で口説き方も知らない朴念仁や、女性を直視しただけで緊張
して言葉に詰まるような純情な青年の方が、どうやらご婦人には好かれるようですから」
イカルスは自分の饒舌さをある意味恨めしく思わないでもなかった。
「やはり美辞麗句をさらさらと口にする人間というのは女性の目から
見ると信用がおけないのかもしれませんね」
そう言うとイカルスは寂しそうに笑った。
「そうでもないと思いますよ。私のように客商売を長くやってると
見ただけでその人がどんな方かおおよそはわかるようになりまして。
貴方の本質をおわかりになる女性も必ずいると私は思いますが」
マスターの言葉にイカルスはある人物を思い出した。
自分そっくりの姿をした妖怪変化が現れた時、身を挺してどちらが
本物か識別してくれたあの女性を。
幸い、彼女もこれといった相手はいないようである。
イカルスはマスターにカクテルを作ってもらうと、彼女の側へと歩いて
いった。
「お隣に座ってもよろしいですか?」
「え、ああ、構いませんよ。ちょうど退屈してたところですから。
エズミさんや聖さんには当てられっ放しで」
「では、これは私から貴女へ。それとお話があるのですが」
イカルスは彼女にカクテルを手渡した。
「私は美しい花を愛でるのが何よりの楽しみですが、その花はいつも
誰かが抜き取ったり摘んでいってしまうのですよ。いつまでも私の前
で咲いていてくれる花があるなら、私はその花だけを愛でるのですが」
気障な台詞だなと彼女は思った。気障ではあるけれど、一見移り気で.
女性と見れば声をかけるこの男のこれが偽らざる本音なのかもしれない、彼女は本能的にそう感じていた。
「で、私にどうしろと?」
「星を、見に行きませんか?」「星?」彼女は聞き返した。
「ええ、いつも地べたをほじくり返して下ばかり見ているものですか
ら、たまには空の星でも眺めてみたいと思いまして。貴女は天文にも
お詳しいと聞いてますし」
口説き文句のつもりかしら。それにしてはいつもの洒落た台詞とは程
遠いわね。彼女はそう思うとくすりと笑った。
「いいですよ。私でよければご一緒しましょう」
「それは恐縮です。いろいろと教えて下さいね」イカルスは言った。
彼は思い出していた。彼女が自分の危地を救うため自分に抱きついて
きた時の柔らかな体の感触と、ほのかに漂う甘い香りを。
「あ、何かいやらしいこと考えてるんでしょう」
「いいえ、とんでもない。貴女が助けてくれた時の事を思い出していた
だけですよ」

この光景を少し離れた場所からカップルの片割れ同士が眺めていた。
ともに妙齢の女性を連れていながら注意は別の部分に向いている。
「おい、何かいい雰囲気になってきたな。しかしあいつは何でああ
女性を口説くのかな。相棒のお前ならわかるか」とルドルフ。
「年中埴輪だの土偶だの人骨ばっかりと睨めっこしてるからな。それ
だけに生身の女性の美しさには人一倍敏感なんだろ」と英爺。

新たな脅威が迫りつつある帝都と浪漫堂。
取り敢えず今日は平和なようである。


智士さん、キャラクター違ったらごめんなさい。
あと陛下とひでじいさん、エズミさんを無断使用しました。
上手くいけば鍋の時はかのカップルで行けるのかな。
それでは、また。


南国華撃団氏
ぐおおお、大遅刻じゃないですか!!(TT)

英爺様今晩は、そしてお疲れ様です!
なんと2ページ遅れのレス付けという無謀な事を敢行する南国です。(^^;

すみません〜、最近忘年会の嵐でレス付けどころじゃなかったんです〜、って言っても言い訳にしかならんが・・・・(TT)

というわけで改めてご苦労様でした。

思い出してみても参加者の楽しそうなノリの良さや、英爺さんの巧みな構成などエクセレントでしたね。
最高です、なんて素敵なお話だったのでしょう。

今更ながらにこのシリーズを始めた英爺さんの偉大さが感じられます。
本当に素晴らしいお話でした。
きっとみんな素敵な夢を見ることができたでしょう。(^^

かくいう私もその内の一人です。


鍋パーティーではぜひ文士達を主役にしてくださいね。(笑)

それでは、ここで筆をおきましょう。
大した事はできなかった、それでもここを愛していました。
太正浪漫の息吹が息づくこの太正浪漫堂に、またいつか集う事を夢見て・・・・・

脚本家・南國

Thank's to 英爺


猫侍氏
(現在許可が頂けるのを待っております)





無法地帯氏
ごめんなさい!!!
前回の拾が最終回だと思ってました…
ごめんなさい。
そして、改めて大団円おめでとうございます。

そして夢はつづく…
さよならは言わない、また会えるから…

花丸氏
夢の続き。
先ずは、なにはともあれ大円団、おめでとう御座います。お疲れ様でした。
ご自分の全てをたたき付けたかの様な、全11回にも渡る物語の構築作業、その情熱と作業量にただただ感服するばかりです。
ゆっくりと筆を休め、諸氏待望であろう「浪漫堂での鍋を囲む夜」に向けて鋭気を養って頂ければと思います。
自分も、大変楽しみにしておりますので。

では、また浪漫堂で会えるその時まで・・・

驍橘氏
そんなぁ(涙目)

今まで、お疲れ様でした。いろいろな方が出てくるのでまとめるのがとても大変やったことと思います。浪漫堂の雰囲気がいいのと、ここに来てる皆さんが出演と言うことで毎回楽しみでした。その太正浪漫堂がついに最終回なんて、しかも私が出る前に(笑)。
実は、タケ・タチバナを改めて驍橘にしたのは、太正浪漫堂に参加するためだったんです(過去で明かされる真実&これが100%では無いですけど)。
タケ・タチバナだと使いづらいし、驍橘にしておけば驍だけで使えるかなぁと思ったりして………。でも、文章を書くのがまるでダメなタケは、遂に自力で参加することはかないませんでした。

しか〜し、鍋があるとな、それまでには何とかして参加しまする(どうするつもりなのかは、全然思い付かないんですが)。
それでは。



ひでじい氏

「何ともうらやましい限りですよ。」浪漫堂本館の優しい笑い声を聞きながら、なぜかため息をつく者がいた。

 その者の名は驍橘。やはり新進気鋭の脚本家であり、当時小劇場では名高かったが、その腕をぜひ試すべく帝劇にやってきたのであった。しかし運が悪いというか、当時の帝劇は南國やエズミを始め、紀州人や櫻嵐など、後世から見ても稀代の脚本家と呼ばれる天才が一気に世に出たため、彼ほどの才能を持ってしてもなかなか名を為すことはできなかった。
 生まれて初めての大きな挫折を味わった驍橘は気分の優れない日々が続いたが、ある日友人から太正浪漫堂には帝劇を評するサロンができているということを聞いた。驍橘の胸は躍った。どうやら腕試しの機会を得た、という気持ちでいっぱいだった。
 その太正浪漫堂に来て、そのような期待はいい意味で見事に裏切られた。切磋琢磨、あるいは競争と評論に身を削るというのではなく、あくまで和やかに議論が進むのだ。驍橘としては最初物足りないような気もした。
 しかし話を聞くにつれ、元々鋭い感性を持っていた驍嵐の心にはっとするものを感じた。周囲の一般客は全く気がついていない。しかし彼らの話は芝居の話だけではない。歴史、音楽、美術、地理、政治経済、化学、生物、地学、考古学、工学…。その議論は古今東西のあらゆる知識の交差点であった。乏しい月収を浪漫堂本館に充てて驍橘は話を聞き、その知識に感服しながら気がついた。

「そうだ。劇にペンを奮うには鋭い観察力と広い視野が必要だったのだ。私にはそれが欠けていた。」

 それからの驍橘の脚本は人気を博するようになり、最初は寸劇、そして現在では臨時公演の脚本を取るようになってきた。だが、驍橘の心は満たされなかった。最初は聞くだけでよかったのが満足できなくなってきていた。

「私もあの中でミュラー先生や夢織先生たちと議論してみたい。」今日こそは自己紹介を兼ねて入りたいと思った驍橘だったがどうも二の足を踏んでしまい、つい外から様子をうかがう形になってしまった。今日もだめなのか…驍橘が軽い嘆息をしたとき、不意に後ろから声がした。

「みんなに何か用があるのですか。」驍橘はハッとして後ろを振り向いた。衣装の見事に整った一組の若い男女がいる。待てよ。この青年の方は見た記憶がある。確か…。

「申し遅れました。僕は雅号を英爺と言います。え〜と、一応詩人で…。」
「そんなことを言うと本業の地質学はどうなるの。」ショートカットの若い女性の方が笑って英爺と名乗る青年の腕を引っ張った。そうだ!驍橘は思い出した。若き英國帰りの地質学者、英爺はこの人なのだ。いやこの女性の方も確か…。

「あ、す、すみませんでした。私は帝劇で仕事をさせてもらってますエズミです。」洋装の女性が頭を下げた。こ、この人が…!!

「帝劇史上に名を残すという。あの歌劇「魔笛」の演出家!」
「そんな、あれは南國さんの台本がすごかっただけで私は何も…。」
「こちらこそすみませんでした。私は驍橘といって脚本を書かせてもらっています。」

「それより、どうしてこんなところにいるんです。驍橘さん。」
「い、いえ、あのテラスのみなさんに御挨拶したかったんですが、行きそびれてまして…。」驍橘は苦笑いした。
「なんだ。それなら簡単ですよ。ねえ、エズミさん。」
「ええ、こうするんです。」英爺とエズミは不意に驍橘の手を取り、テラスの扉を開いた。歓喜の声が一斉に上がる。どうやら英爺とエズミの仲を冷やかしているらしい。英爺は大きく照れながらもミュラーと夢織りのところへ赴き、驍橘の事情を話した。ミュラーは小さく頷くと驍橘の元へやってきた。ついに憧れの人物の目の前に立つことができたのだ。

「初めまして。私がミュラーです。」この日、驍橘は浪漫堂本館の新しきメンバーに加えられた。

ひでじいです。見ると驍橘さんのレスがついてたのでこんな感じにしておきました。スタッフロールにもつけておきますね。ようこそ太正浪漫堂へ。




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