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太正浪漫堂オープンカフェ

太正浪漫堂 オープンカフェ 筆:ひでじい氏
「ごめん・・・」 筆:山科聖さん
│└「雪がきれいね、聖さん。」  筆:エズミ氏
│ └「とうとうこの季節がやってきたなあ。」  筆:ひでじい氏
│  └キャラがちょっと・・・。  筆:イカルス星人氏
│   ├ちょっと待て!!  筆:ひでじい氏
│   └もし、そんな事が。  筆:魔女吉氏
│    └イカルスさーん、見てますかー!?  筆:エズミ氏
│     ├師匠〜ほんまでっか〜  筆:魔女吉氏
│     │└師弟コンビと言えば・・  筆:エズミ氏
│     └何てこったい 筆:イカルス星人氏
│      ├真に恐るべきは…。(イカルス・エズミ様宛)  筆:ひでじい氏
│      │└べきべき  筆:エズミ氏
│      └こったいこったい 筆:エズミ氏
│       ├恐ろしい、あまりにも恐ろしい…。  筆:ひでじい氏
│       └見つけちゃったよ・・・  筆:智士氏
│        ├どっひゃあああ!! 筆:ひでじい氏
│        │└うっひゃあああ!! 筆:エズミ氏
│        │ ├絶句・・・・・ 筆:イカルス星人氏
│        │ │└まってました〜(^^) 筆:エズミ氏
│        │ └もう、何とかワクチンを打たないと…。 筆:ひでじい氏
│        ├見つかってるっ!!!(゜ロ ゜;)/ 筆:エズミ氏
│        │└楽しかったですよ(^^) 筆:智士氏
│        │ └よかったっすう(^^;; 筆:エズミ氏
│        └ははは。 筆:魔女吉氏
│         └ふふふ。 筆:エズミ氏
「冬来たりなば、春遠からじ・・か。」 筆:ミュラー大将氏
│└「閣下も弾かれましたか。」 筆:ひでじい氏
やはり、ここでは珈琲だな。 筆:夢織時代
 └「おや、夢織さんじゃないですか。」 筆:ひでじい氏

ひでじいです。久々に帰ってきましたね。 ひでじい氏
ひでじい氏
ひでじいです。久々に帰ってきましたね。
本当なら「太正浪漫堂 九」と行きたいところなのですが、この辺でちょっと一息入れてみました。


「おおお!!なんて寒いんだ。」ここのところ暖かい、少し汗ばむくらいの陽気だったのが急転直下寒くなってしまった。
「くそう、俺としたことがデバッ…いや校正にこれほど足を引っ張られるとは…。」アクシデントが重なり、今回の帝劇グラフの発刊が遅れそうになっている。編集長から檄が飛ぶまでもなく、早く仕上げなければならないのは分かっているのだがルドルフは最近妙に気が重い。
「これと言うのも聖と今一うまくいかないからなんだよなあ。」イカルスや英爺の冷やかしもあって、聖と会っても妙に意識してしまうルドルフであった。
「こういうとき、俺には安息の時間が必要だ。久しぶりに行ってみるかな。」凍てつく寒さがルドルフを浪漫堂に向かわせた。

 カランカラン…。浪漫堂本館の凝った扉を開けたルドルフは橙色の光を湛えたロビーを通り例の場所へ急いだ。
「今日はまだ早い。奴らに勝ったようだな。あの場所は最高なのだ。」自然と笑みがこぼれる。あの場所でゆっくりと珈琲を飲む。それが醍醐味なのだ。

「さあ、一番だ!!……お、お前ら、仕事はどうしたんだ〜!!」ルドルフの指定席であった暖炉前はすでに占領されていた。しかも熟睡状態…。
「スコー…スコー…」イカルスとMOSは俯せになって暖かい暖炉の間の睡眠を満喫していた。智士も煉瓦にもたれ掛かって寝ている。相変わらずカッターにネクタイ、スラックスの男装だ。
「ムニュムニュ…。」頭の上から声がする。
「お、おい!!部屋の中にハンモックを吊るなあ!!」そこにはハンモックで寝る南國の姿があった。

 もぞもぞ…暖炉前に見慣れた奴が薪をくべている。有害物質1号。そう彼の名は…。
「英爺、なぜこういうことになったのか、卿の口から説明してほしいものだな。」
「ああ、陛下、いらっしゃい。」振り返った英爺の顔には煤がついている。
「なんでこんな状況なんだ?」
「ああ、陛下は地下鉄だったから分からなかったんでしょ。外は大雪で帝都の交通機関が混乱してるんでしょう。外で震えるよりもここでいた方がいいってことで。」
「物書きグループは?」
「そうです。今日が締切だったから昨日は徹夜だったみたいですよ。」

「それで室内蓑虫を満喫してるわけか。」ハンモックを軽く揺らせてから、ルドルフは意地悪く英爺に言った。
「で、卿のお気に入りはどうした?」
「お気に入り…?」英爺はしばらく考え込んでいたが、急に顔を赤くして、
「お、お気に入りだなんて、そんな。エズミさんとBAT君だったら、今軽食の準備を…。」

 と、英爺が言おうとした瞬間、エズミとBATがゆっくり扉を開けて入ってきた。
「さあ、焼きたてのアップルパイができたわよ。」
「珈琲と紅茶もいいのを入れてもらいました。」その瞬間、みんながウォー!!と叫んで起きあがる。
「まさに野獣だな…。ルドルフはようやくありついた珈琲の暖かさを味わいながら全員がアップルパイを求める姿に苦笑した。

「おや、ときにエズミくん。きょうは女装かい?」
「女、女装ですって!!私は女です!!これが当たり前!!」ゲシッという音が響いてルドルフは床にキスをすることになってしまった。

 しかし、せっかくの雰囲気もボーイスカウトみたいになって台無しだな。でもこれはこれでいい。起きあがったルドルフは浪漫堂の仲間を見つめながらしみじみとこう思った。

「ルドルフさん、います?」和気藹々の軽食中に扉がまた開いた。その方向を見たルドルフの目が止まる。
「聖…。」
「心配しましたよ。ルドルフさん。」聖の髪には雪がついていた。

 その様子を見ていた英爺は黙って薪を追加し、エズミはにっこり笑って紅茶を注いだ。

「いやあ、外は雪で…。」後から入ってきたミュラーと夢織は状況を察するといったん扉を閉める。

 太正浪漫堂の外には雪が舞う。こんな日には暖かい珈琲がよく似合う。



山科聖さん
「ごめん・・・」
 ルドルフはいつもながら淡白な返事だった。惨めに床とキスしながら転がり逃げる滑稽な彼、聖は彼の心が分かっているから何も追求しようとしない。そんな者を差し置いて近付いてくるこの店の有害物質2つ、彼らの心は読み易い、それだけオープンなのだと言ってしまえばそれまでだが下心まで読めてしまうのが聖には苦しい。そうとも知らず二人は言い寄ってくる。
「聖さん、寒かったでしょう、さあ暖炉の側へ。」
 英爺がそういって聖の手を握ってエスコートしようとするのをイカルスが阻害する。
「マスターはマスターらしく仕事をしてもらいましょうか、ここは私がお送りします。」
「何の何のイカルスさん、お客様のエスコートもマスターの仕事、私が。」
 二人して聖の両手を取り合って彼女も些か困惑気味である、そして直接接触により流れ込んでくる二人の思考が彼女の悲しみを更に増長させる。
「やめなさいよ!」
 妙におかんむりのエズミがたまらず聖を庇い立てする。
「聖さん泣きそうになってるじゃないの!いい加減にしなさい、まったく。男ってデリカシーってものがないんだから。」
 エズミに叱咤された二人は素気無く大人しくなった、そのままエズミは彼女を連れていって彼らから引き離す、その行動に他意やエゴが乗じていたのかは不明である。
「あ、ありがとうございます、エズミさん。」
「気にしなくてもいいのよ、寒かったでしょう、紅茶を飲んであったまって。パイもあるから。」
 聖には心から自分をもてなしてくれるエズミに痛み入った。世知辛い心ばかりを見てきた彼女には誠心誠意自分にかまってくれる彼女が新鮮に見えて仕方がなかった。
「あの、エズミさん。これからも仲良くして頂けますか。」
「薮からボーズ頭ね、聖さん。当然ですよ。」
 無論何故坊主が薮からなどということは聖にはよく分からない、ただエズミの優しさだけが彼女の胸を打っていた。

 この光景を見て近くのソファーでほくそえむ魔の笑みを浮かべる者が一人。
「ふふふ、いいぞ英爺、もっと嫌われることだ。そうすればこの魔人、もとい、青年外交官が彼女を射止められるチャンスなのだから。」
 その笑みを見てさらに創作意欲を書き立てられるウクレレファイターがいたことは言うまでもない。

−−−−−−−−−−−−−−−

(あとがき:Rudolf)
 一瞬主役かと思ったらやっぱりイロモノだった自分はその辺に転がしておいて今度は聖で。うーん、浪漫堂の皆さんにもてはやされる聖、いいなあ〜。で、当人は明日、本物に奇襲(要するに朝駆け、但し10時)を敢行致します。こっちの常連はギスギスしてて。(笑)
 校正、もといデバッグの苦痛に些か現実逃避カキコの目立つ、かもしれない奴。な、なぜただでさえ喋り辛いのに冷やかされたら尚のこと意識してしまう事が!!

エズミ氏
「雪がきれいね、聖さん。」
エズミは分厚いガラス戸越しに見える天からの贈り物にため息をついた。真っ白な雪はひらひらと天から降ってくる。今朝方から降り出したにもかかわらず、もうすでに地面は純白に染まり、帝都は冬一色といった風情であった。
聖も窓際にやってくると、細い首筋を伸ばして乳白色ににごった空を見上げる。
「ええ・・。初雪ですね。」

浪漫堂のふるめかしい出窓の側のソファーに陣取ったエズミは、こちらにやってこようとする有害物質一号二号を牽制しつつ、聖に紅茶を差し出した。
「はい。寒かったでしょう。」
「ありがとうございます。・・いただきます」
聖は両手でカップを包み込むようにして紅茶に口をつけた。細く白いその指先が寒さのせいかピンク色に染まっている
「こちらではこんなに早く雪が降るんですね・・。私の故郷は大阪なんですけどあっちはほとんど降りません。どんなに寒くなっても雪が降らないもんだから物足りなくていけません。」
つまらなさそうな顔をするエズミに、聖はお姉さんのように微笑む。
「そう言えばエズミさんの出身は大阪でしたね。」
「ええ。実は関西人です。聖さんもでしたよね?」
「ええ。わたくしは京都なので毎年雪が降りますよ。でも、帝都の雪もまた違った趣があってよいものですね。・・“大阪は雪が降らなくてつまらない”か。同じことをおっしゃっていますね。」
「“ルドルフさんと”ですか?」
エズミはニヤニヤと笑った。その名前が出ただけで聖は微妙に顔を赤らめる。当のルドルフは暖炉前で新聞を読むふりをしながらも、こちらでの会話に全神経を傾けていることがエズミにはわかっている。

「・・雪は、お好きですか?」
不意に聖がこんなことを呟いた。アップルパイをかじりかけていたエズミはあわててそれをもぐもぐと噛み下す。指をなめながら「ええ、好きです。」と、空を見上げた。
「なぜか知りませんが雪が降ると楽しい気分になります。どれだけ寒くなっても許してあげようと思います。考えれば不思議もんですよね。」
 聖は再び外を見た。先ほどより、降る雪は量を増しているようだった。もっとも風は強くないらしく、あくまで垂直に、雲のかけらを思わせる雪はしんしんと音もなく降り積もって行く。
「雪のような女(ひと)だと言われたことがあります。」
ぽつりとした聖の呟き。まったく自身の美しさを賛美された言葉とは自覚していないのだろう。ふと思いついて言ったという感じの言い方だった。
「へええ。そりゃまたずいぶんと気障な台詞ですね。」
エズミは唇に曲げた人差し指を当てた。これは彼女の考えこむときの癖だった。
「成る程・・。実に言い得ていますね。純白の穢れを知らぬイメージ。ただただ美しく、人を静かで優しい気分にさせる聖なるもの・・。ははあ、こりゃあまさしく聖さんのイメージだ。」
 エズミは職業病なのかやたらと感心している。
外の雪景色を眩しそうに見やったまま、聖は言葉をついだ。
「そうでしょうか・・。自分ではわかりません。ただ・・。少し哀しく思いました。」
「悲しい・・。」
「ええ。どんなにきれいでも雪は触れると冷たいものです。見ている分には美しく、心引かれるものでも傍によると冷たくて誰もいられない、そう言われてるみたいで・・。」
聖は寂しそうに微笑んだ。深読みですよ、と普段のエズミならば言うところだった。しかし、安易にそう言うことのできないような、暗い色が聖の横顔にはあった。
エズミも彼女の力は知っていた。彼女は人の心を読むことができる。先ほどもイカルスと英爺の(おそらく)ろくでもない思考をその気はなくともキャッチしてしまい、悲しそうな顔をしていた。この浪漫堂の面々のような、ちょっとやそっとのことには驚かない者たちならともかく、心を読まれるというのは、本来なら著しく他人を不快にさせてしまう能力であろう。たとえ聖自身にまったくの悪気がなくとも。
今までにも聖はきっとこの能力のせいでずいぶん辛い目を見てきたのではないだろうか。そんな風にエズミに思わせる重みのある一言であった。彼女は本当の意味で心を許せる人間に会ったことがないのかもしれない。
「・・ごめんなさい、エズミさん。変なこと言っちゃって。」
すまなそうに下を向いてしまった聖に対してエズミは首をぶんぶんと振る。
「ううううん。全然いいよ。かえって嬉しいぐらい。そんな風に聖さんが自分のこと話してくれるようになってくれて、本当に嬉しいです。それに・・。」
エズミは片目をつぶった。
「やっぱりどんなに冷たくっても私は雪は好きです。そばで見たいと思います。見ているだけもいいけれど雪合戦、雪うさぎ、雪の中に飛び込んでいかないとわからない楽しさっていっぱいあります。それはきっと冷たさよりも勝っていると思います、だから・・大丈夫なんです。」
エズミの意味不明の言葉に、聖は少し考えたあとふわりと微笑んだ。
「そうですか・・。」
「ええ、そうなんです!」
「な、なーにをしゃべってるのかなあ?」
不意に話に割り込んできたのは外ならぬルドルフであった。帝都日報を片手に少しびくびくした素振りながらも、どうにも気になって我慢できなくなったらしい。
エズミはつん、とあごを上げた。
「陛下の悪口です。いい雰囲気なんだから邪魔しないで下さいな。」
「なっ、なにおう・・。」
「エズミさんったら・・。」
聖はくすくすと口元を手で覆って笑いを漏らす。
「時に陛下、雪はお好きですか?」
「え、エズミさん・・。」
聖は慌てたようにエズミの袖を引いた。その頬がまたしても朱に染まる。
(くーっ。この幸せもんがあ。)
エズミはルドルフを見上げて首を振る。
「な、なんなんだ君は・・。まったく唐突なやつだな。質問の趣旨がよくわからんが・・。」
ルドルフはあごをなでた。
「俺は、好きだな。」
『ほら、見てみなさい。』
エズミは聖に向かって目配せをした。しかし、聖の表情はなぜか静かである。ルドルフの顔を見上げると、聖は感情を押さえるかのように言った。
「雪は・・とても冷たく、そしてとても儚いものです。見ているぶんにはよくても、きっと傍に行くと凍えてしまうでしょう。それでもルドルフさんは雪の傍にいたいと、雪のことが好きだと、そう、お思いですか?」
聖の瞳は真摯だった。ルドルフは聖の表情に少し驚いたように考えこむ。
エズミは自分で招いたこととはいえルドルフの返事をはらはらして待った。長い沈黙の後。
「俺は・・。やっぱり好きだ。」
ルドルフはきっぱりと呟いた。もっともその瞳は外の雪景色を見つめてはいたが。
「たしかに雪は冷たい・・。でも知ってるか?あれでかまくらを作れば中はとても暖かい。新雪の光りは目を射るほどに眩しい。そしてなにより、雪は俺の心を暖かくしてくれる。そんな雪が、俺はとても好きだ。」
「ルドルフさん・・。」
聖の目が細まった。彼女の目に喜びが溢れて、それが涙となってこぼれそうになる。
「な、どうしたんだ聖!さては貴様、やっぱり聖になんかしやがったな!?有害物質三号か?」
ルドルフをあっさりぐーで殴るとエズミは手をひらひらと振った。
「まったくどこがいいんだか。ま、今日のところは聖さんに免じて許したげるわ。二人でゆっくりお話しなさい。」
「エズミさん・・。ありがとうございます。」
「なにをおっしゃるウサギさんってとこですよ。」
「ひ、聖ぃ。俺が殴られてるのになぜ礼を言っているんだっ。そんなに俺が憎いかぁっ!?」
 
エズミがティーカップを片手に暖炉の傍まで戻ってくると、英爺が隣に腰を下ろした。
「まったく余計なことしてくれちゃって。僕の計画が台無しだよ。」
冗談とも本気ともつかぬ声色でそんなことを言うと、英爺は窓際に並んで肩を並べる聖とルドルフをうらやましそうに見やる。
「さては僕が聖さんにばっかりかまってるからヤキモチ焼かせちゃったかなあ。」
「なに言ってんだか。それはそうと、私に言うことはないんですか?」
エズミはちょっと笑って首を傾げた。英爺はエズミを上から下まで眺め回した後、ぽん、とひざを打つ。
「おお、そう言えば。女の子の格好で来たの初めてだったね。似合ってる。実にかわいいよ。」
「付け足しくさい・・」
エズミはため息をつくと、自らの姿を見下ろした。膝丈のワンピースに、肩から掛けたチェックのストール。普段着慣れてないだけにみんなの反応が不安でもあったのだ。
「エズミさん、そのぅ、その格好はひょっとして・・。」
「特に意味はありませんよ、言っときますけど。」
エズミはむきになって反論する。
「そうだ!エズミさんが女の子の格好をしてきたのはひとえにこの僕のためだということがわからんのか?」
いきなり乱入してきたのはイカルスだった。
「ああ、恋しい男のためにわざわざおしゃれをするなんて、なんていじらしい女心だろう。でもすまない、エズミさん。僕には聖さんという人が・・。って、あああ、陛下と二人っきりになってるじゃないかあっ!行くぞ、一号!」
だーれが・・、と言うエズミの反論を聞く間もなくイカルスは飛んでいきそうになる。
おいおい、とエズミはイカルスの袖を引いた。
「ちょっと待ちなさいっての。」
「エズミさん、君の気持ちはよくわかる、だが男には行かねばならん時がぁ・・。」
「じょーだんはよしこさん。それよりあなたももうちょっと配慮しなさいな。」
「・・?なんのことだ・・」
イカルスが振りかえると、暖炉の傍で智士とBATがジト目でこちらを見上げている。
「まったく、黙って聞いてりゃ聖さん聖さんって。浪漫堂の女は彼女だけじゃないんですよ。」
「そうですよ―。これってクツジョクだわ。」
むっとした表情の女性陣。
「はっはっは。これはまいったなー。もてる男は辛いなー。」
完全に履き違えているイカルス。
女性陣のため息交じりに、浪漫堂の午後は穏やかに過ぎて行くのだった。
外の雪はまだやみそうにない。


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 いやー、なんか長くなっちゃいました。陛下に捧ぐって感じで。(笑)
 こんばんは、聖さんと友情を育みつつあるエズミです。(爆)

 すごくいい感じですね。浪漫堂。最近本当に寒くってたまったものではありません。またしてもラヴラヴくさい雰囲気にさせてしまった英爺さんには陳謝。
 もうくせになっちゃってます。(笑)
 イカルスさんのキャラはこれでいいのか!?本人の御釈明を希望。(笑)
 そして陛下、聖さんの勝手な多用、申し訳ありません。
 実は陛下の聖さん話を読み終わった直後なので、ちょっとインスパイアされてこんなものを書いてしまったのです。陛下がもし雪嫌いだったらどうしよう・・。(爆)
 あのお話の聖さんは少し浪漫堂の聖さんより大人っぽいですね。
 名前をお借りした方々、失礼致しました。
 ではでは。寒くってひざに毛布を掛けながらキーボードをたたくエズミでした。

ひでじい氏
「とうとうこの季節がやってきたなあ。」舞い降りる冬の使者を見上げながら珈琲を飲むイカルス。
「帝都も雪一色ですね。」アップルパイを切り分けてエズミが英爺とイカルスの前に置く。
「ありがとう。寒いのは苦手なんだが、暖かいものはおいしいね。」英爺はにっこり笑ってアップルパイを食べ始めた。

「しかし聖さんの読みは鋭いよなあ。」イカルスが嘆く。
「君に妙な下心があるからじゃないか。」英爺が冗談交じりにイカルスに水を向ける。
「そうかも知れないな…って、お前はどうなんだよ!」
「僕は…。そうだな、聖さんには分かってしまっているかも知れないな。」
「分かってるって何がだよ。」
「まあ、気にするな。この勝負、僕の負けだよ。」英爺はそういうとエズミに片目をつぶってアップルパイのおかわりを頼んだ。エズミは今の話を聞いて少し機嫌が良さそうである。

「ああ、今起きた。みんなおはよう。」ハンモックから南國が起き出して、BATからパイと紅茶を受け取った。

「おい、この時間でおはようかい?」イカルスのあきれた表情に一座が笑った。ルドルフと聖も大笑いしている。これほど暖かい場所は他にはない。

「で、本当のところはどうなんです。」薪の片付けが終わり、ほっとしながら座る英爺に紅茶を差し出しながらエズミが言った。
「え、聖さんのことかい。そうだなあ…。」英爺は思案していたが、エズミの方に向き直るとこう言った。
「君の服、本当によく似合ってるよ。これでいいかい?」

 テーブルの向こうでは帝劇事務局のかすみ、由里、椿が遅い昼食を過ごしている。太正浪漫堂、珈琲と紅茶の本当においしい店である。

 イカルスさんと僕、エズミさんのエピソードにするつもりが、これでは…。ごめんなさい、イカルスさんとエズミさん、そして陛下。










イカルス星人@ポケベルで呼出され ID:vuphhg 98/11/23 08:21:42 [返事を書く] [ノートメニュー]
キャラがちょっと・・・。
なので、エズミさんのリクエストにお応えして続きを。責任は持ちません(ヲイ)。

聖を隔離してルドルフといい雰囲気にしておいてから、エズミはイカルスと英爺にも
アップルパイとコーヒーを振舞っていた。
このあたりにも彼女の心遣いというか細かい気配りが表れている。
「それにしても」エズミが言う。
「聖さん聖さんって聞き捨てならないわね。ここには他にも女性が何人もいるのよ」
「そうだそうだ。お前デリカシーがなさすぎだぞ」
お前に言われたくはないとイカルスは思った。
英爺の奴、エズミさんの前で株を上げようとしていやがるな。
「いや、私は誤解を解いておきたかっただけで、別に他意は」
「嘘ばっかり。下心見え見えだったわよ」さらにエズミが突っ込む。
「おわかりになっていないようですね」イカルスが切り返す。
「下心というのは、表面の態度と違うことを本心で考えているということです。
私は単に花の美しさを愛でたいだけで、下心も本心もありません。
考えていることをそのまま表に出しているのは、下心とは言わないと思いますが」
「あら、それじゃ聞きますけど」とさらにエズミ。
「聖さんと私では、どちらが綺麗な花なのかしらね?」
傍らで聞いていた英爺はうっと息を飲んだ。我が悪友はどう答えるつもりなのだろう。
「愚問ですね」イカルスが口を開いた。
「それは、ひっそりと咲くかすみ草と、凛と咲き誇るカサブランカの美しさを比較しろと
言っているようなものです。私は花の美しさを愛でることはできますが、異種の美しさを
同列に論じるような野暮なことはできません。勿論、貴女が百合の品種の中でどれだけ美しい
かという問いならお答えできますが。(注:カサブランカは百合の最高品種)」
「ふうん」エズミはまんざらでもなさそうな気分である。

「ちょっと、僕は他に話があるから」英爺が席を立つと、エズミは尋ねた。
「ねえイカルスさん、下心もなし、手を出すでもなし、貴方は一体何を考えているのかしら」
「美しいものを嫌いな人がいますか?また、それを愛でようとするのはおかしいですか?」
「そりゃ、美しいと誉められて悪い気がする花はいないでしょうけど」
「そうでしょう。花の命は限られています。その命を精一杯咲き誇ろうとしている花に対して、
それを見る者が称賛するのは当然ではありませんか?
それが我々の目を楽しませてくれる花々への礼儀ではありませんか?」
この人と話してると絶対言い負かされそうね、とエズミは思った。
「でも、花がどう思って咲いているのかはその花自身にしかわからないのでしょうけど。
花を愛でる者にはその美しさはわかっても、花の気持ちまではわからないでしょうから。
本当に的確に花の美しさを表現できるのは、花の気持ちがわかる人だけでしょうね」
「!?」エズミは一瞬言葉を失った。この人は何を言っているのだろう。
そう言えば。
エズミの脳裏に、イカルスと初めて会った時に感じた不思議な感覚が甦ってきた。
いや、そんな、まさか。
エズミは自分の胸に再び沸沸と湧き上がってきた疑惑を必死に打ち消そうとした。
そう言えば、彼の書く文体は心なしか女性的な感じがするし。
彼が本業の傍ら発表している作品は女性の一人称で内面心理に触れたものが多いし。
もし、今自分が感じている疑惑が事実だとしたら。
それは今この浪漫堂を襲っている外敵の脅威とは何の関係もないけれど。
別の意味で浪漫堂を震撼させることになるかもしれないと、エズミは思った。


え〜、ご指名に応えて本人によるレスをつけさせて戴きました。
さあ、どうするエズミさん。
そして、英爺は、某さわやか青年外交官(爆)はどうするのでしょうか。
お名前借用の方に陳謝。
それでは、また。







ひでじい氏
ちょっと待て!!

まさかイカルスさん、そんなことないよね?

疑惑を振り払いつつ…。

「しかし浪漫堂の珈琲とは大違いだな。」最近出されたインスタントコーヒーなるものを飲みながらイカルスが呟く。
「まあ、そう怒るな。これでもないよりはましだろ。」英爺は研究室で苦笑する。
「しかし…、散らかし方が激しいな。これで本当に研究できるのか。」イカルスは室内を見回した。木箱に納められた岩石のサンプル。何枚も重ねられた書きかけの地質図。偏光顕微鏡の横には薄くプレパラートに張り付けられた岩石の薄片の数々。堆く積まれた和洋の専門書。

 そもそもこの二人、学生時代にたまたま現場で鉢合わせをしたのがきっかけだった。重要な遺跡の側壁をハンマーで壊すなと言葉鋭く問いつめるイカルスに、重要な岩石の露頭であり、一部を持ち帰る必要があると英爺が食ってかかり大喧嘩になったのが発端だった。
 以来、二人は良くは親友、悪くは悪友としてともに助け合いながら学業を修めてきた。今回の政府調査団に対してイカルスが協力を申し出た際も英爺は快く二つ返事で了承したのだった。

「しかし、お前がここに来ると言うことは例の場所にそろそろ行こうという合図かな。」片付けを終わった英爺が汚れた白衣で壊れかけの椅子に座る。

「でなければこんなむさ苦しい所には来ないぞ。さあ、それより早く着替えろ。」
「浪漫堂のきょうの寸劇の出し物は何だ?」
「南國さんの喜劇とエズミさんの二人芝居かな。レニさん、アイリスさん、さくらさんというところか。」
「よかろう。…よしできた。じゃあ行くぞ。」
「おっ、すばやい着替えだな。見違えるようだな。じゃあ出発だ。」

 暗い構内を一気に駆け抜けると一面の青空と並木が広がる。すこし肌寒いがこれくらいの方が珈琲も格段にうまいというものだ。いい友を得た。少々あくは強いがな。英爺はそんなことを思いながら浪漫堂へ急いだ。

魔女吉氏
もし、そんな事が。
イカルス師匠が、イカルス師匠が!

「まあ詰まる所言わんとしているのは・・・。」
向こうでエズミ様と知的な会話を交わすイカルス師匠を発見した魔女吉は妙な感覚に囚われた。
『なんか、姉妹みたいだな。』
何を考えているのだ?あの、世界の記録光盤と名高いイカルス師匠が。
『でもたしかに。』
言われてみれば、特有の下世話な雰囲気は持ちあわせている所を見た事が無い。
そうなったら、わたしは。
『妙齢のレディに負けるような中途半端なエセオタ○?』
人生を賭けてきた、自分のアレ的要素が、まさか。

ラジヲなぞやってる場合ではない!
魔女吉はアレ修行の旅に出るのだった。手後れになる前に師匠を越えるために。
(番外編:オ○ク馬鹿一代<馬鹿がSSでやってくる>完)

エズミ氏
イカルスさーん、見てますかー!?
ってなわけで、いまさらもいいとこですが、続けます。
イカルスさん女性疑惑について!なぜかとてつもなく長いです、ごめんなさい。
ではでは、どうぞ〜〜〜

(イカルスさんが、女・・?)
「まさかね・・」
エズミは首を振ってみる。しかしふりはらったそばからその疑念は澱のように湧いて来るのだった。思考を振り払うかのようにエズミはアールグレイをあおった。香味のある独特の味が喉を滑り落ちていった。すっかり冷め切っている。
「おねーさん、アールグレイおかわり」
そう言えば私は最初イカルスさんのこと女性だと思ってたんだっけ・・。
出会った頃・・。
エズミは記憶を手繰り寄せた。
お互いがまだ新人作家だった頃、エズミはイカルス本人より先に、彼の書く文章と出会った。処女作におけるレニ嬢の繊細な描写、上品で落ち着いた文体。それらのことからエズミは勝手に彼のことを彼女だと思いこんでいたのである。浪漫堂ではじめて南国にイカルスを紹介されたときの驚きはまだ記憶に新しい。
だからと言ってしかしそれは、文章の上でだけのこと――見た目のイカルスは完全に男性・・のはずである。
エズミはアールグレイをすすりながら、ひそかにイカルスを観察した。イカルスはエズミの胸のうちなど知らずに、最近なぜか仲の良い智士と暖炉のそばで談笑を交わしている。
病気がちなせいか、男にしては色白な頬。
なるほど、女に見えなくもない。
だが、その闊達で良く回る舌と、女性と見れば口説きにかかるフットワークの軽さがどう見ても男性のようにエズミには思えるのだ。

第一の証人「英爺」

「どうしたの?エズミさん」
隣に腰掛けたのは外でもない、イカルスの親友、エズミのダーリン(爆)英爺であった。大学の帰りらしく、肩から大きなかばんを重そうに下げている。
「すいません。エスプレッソひとつ。・・いやー、まいったよ。地質調査に思いの外時間がかかっちゃってさ。・・あ!あの野郎!いないと思ったらこんなとこで油売ってたんだな。あいつのせいでどれだけ人手が足りなかったことか・・」
英爺はイカルスの姿を見つけて、いつもは下がり気味の眉をしかめた。
ふと、エズミは思いついて英爺の袖を引く。
「ねーねー、英爺さん。英爺さんは私よりイカルスさんと付き合い長かったよね?」
「うん。そりゃ学生時代からの友達だからね。初めて会ってから、かれこれもう何年になるのかな。ま、いわゆる腐れ縁ってやつだよ」
そうだった。イカルスと英爺はもう何年来の親友なのだ。もしそうだとしたら、彼が気づいていないわけがない。
でも・・。万が一と言うこともありえる。
「ねぇ、イカルスさんって・・実は女の子だったりして」
「ぶっ!!」
英爺は盛大にエスプレッソを噴き出した。
「ぎゃーっ。汚いなぁ、もう」
「きっ、きっ、君がヘンなことを言うからじゃないかっ!!」
英爺はエズミの差し出したハンカチを受け取ると、情けない表情で口許を拭った。
「まったくなにを言い出すかと思えばそんなこと考えてたのか・・。ばかばかしい。そんなことあるわけないでしょーが」
「わっかんないじゃん、そんなの」
エズミは唇を尖らせた。
「わーかーるよ」
英爺も負けてはいない。
「僕とあいつが何年付き合ってると思ってんのさ。僕が保証する、ぜーったいに男だって。いまさら女だなんてそんな話があってたまるもんか。エズミさんと智士さんの時もどれだけ苦労したことか・・ぶつぶつ」
いつもは温和な彼がこのことに関しては妙にかたくなである。こう出られると反論したくなるもの、エズミは身を乗り出した。
「じゃー、聞くけどさ」
「なに?」
「英爺さん、イカルスさんと一緒にお風呂入ったことあんの!?」
「・・ない」
「着替えてるとこ見たことは!?」
「・・そう言えば、ない」
「戸籍はっ!?保険証はっ!?」
「……………。」
「ほーら、みてごらんっ。何の証拠もないじゃないのさっ」
「ぐぐぐぐ・・」
英爺は恨めしそうにエズミを見上げている。英爺にしろ、イカルスが男であるという自信に何の根拠も持っていないのだ。ただ、そうであって欲しいとは、強烈に思ってはいるようだが。
「ふむ・・」
エズミは唇に曲げた人差し指を当てた。わからないことは確かめないと気が済まない性分のエズミとしては、これは調べてみるしかない。
「よーしっ。ちょっと調べてみるかあ。邪魔しないでね、英爺さん」
「・・やめときなって。もしそうだったとしてどうだって言うんだよ。君が入るときっと話がややこしくなる」
「むっ。どう言う意味よ?ふ。英爺さん、私を見くびってるでしょ。こう見えても私アルバイトで探偵したことだってあるんだから・・。ふふ・・見てなさいよイカルスさん。少女エズミ(爆)が必ずその化けの皮を引っぺがしてあげるわっ!」
「なんかちょっと違うような気がするなあ・・」


第二の証人「山科聖」

エズミが次に話を聞いたのは、浪漫堂の華・イカルスの(もと)心のマドンナ山科聖であった。
「ねぇ、聖さん。あなた人の心が読めるんだよね」
「エズミさん、あまり大きな声でそのことをおっしゃらないで下さい・・」
聖は少し慌てたように辺りを見渡した。幸い、少し混雑してきた浪漫堂の中で、二人の会話に聞き耳を立てているものはいなかったようだ。
エズミはしまったと言う顔になる。
「ごめんなさい、そうでしたね。いやー、相変わらずデリカシーががなくって申し訳ないです」
「いえ、大丈夫です。誰も聞いていなかったようですし・・」
聖は微笑んだ。小首を傾げると、白い陶器のカップのふちを指でなぞる。
「それで・・。どうしたんですか、急にそんなことを聞いてくるなんて」
「いや、実はですね・・って、言わなくってもわかっちゃったりするんでしょうか?」
聖は紅茶を一口飲んで首を振った。
「まさか。そんなにいつもいつも心の窓を開いていては、あまりにも多くの思念が入り込んで来て、私はパンクしてしまいます。私が他人の胸のうちを知ることができるのは、自分でそう意識したときだけです」
「なるほど・・」
エズミは頷いた。
「それでは、今の私の心には何が見えますか?」
聖は驚いたように、切れ長の目を少しだけ縦に広げた。しかしすぐに静かな表情に戻る。
「よろしいのですね・・。では、失礼いたします・・」
数瞬の沈黙。そのあと、聖は文字通り目を丸くしてエズミを見た。
「これは・・どういうことなのでしょう。イカルスさんが、女性・・」
「ええ、そして・・。私が聖さんに聞きたいこともわかってしまいましたか?」
聖はよく見えないものを見ようとするように、少し目を細めた。
「はあ・・。私がイカルスさんの心を読んだ時、どうだったかという事ですね」
「ご名答。いや、初めてやっていただきましたが、すごいもんですね!」
エズミは心底感心して、椅子に背をもたせかけた。
「大体事情はわかりましたわ。・・イカルスさんも思わせぶりなことを言うものですね」
聖は少し呆れたような顔をする。エズミはその言葉に身を乗り出した。
「おおっ。その返答ってひょっとして・・」
「はい。以前わたくしが彼の心に触れたとき・・明らかに男性の思念でした」
聖の白い頬が何かを思い出したのか真っ赤に染まる。
あの野郎・・なに考えてやがったんだ。
ルドルフではないが、聖に対して過度に保護意識の強いエズミは、相変わらず智士と談笑しているイカルスの背中をにらみつけた。それはさておき・・。
「しかし聖さん。たとえば私の思考のパターンとかは男性になかなか近いものがあると思うんですよ。それで私がいかにも男の思うようなことを考えてたらどうなんでしょう?読み誤る、ということはありえませんか?」
聖は首を振った。
「どんなに表層意識でさまざまの事を考えていても、潜在意識中の核は変えようがありません。彼は確かに男性でした」
「そう・・。聖さん、もしよろしければ今、ちょっとやってみていただけませんか?」
エズミはイカルスのほうをちょいちょいと指差した。聖は困惑して目を伏せる。
「でも・・。用もないのに他人の心を覗くのは・・」
「いいですって。一切の責任は私が取ります。これは彼のためでもあるんです。彼が私にかけた謎を、私は解く責任があるのです」
まったく説得力のないエズミの理屈ではあったが、聖は遠慮がちにうなずいた。日頃の信頼関係がものをいったのだろうか。あるいは聖なりの好奇心がうずいたのかもしれない。
「・・わかりました。では・・」
聖は、ふ、と空虚な目をした。もう彼女の目にはこの浪漫堂でなくイカルスの心の中が映っているのだろうか。
突然聖は、がたり、と椅子を鳴らした。顔を両手で覆う。その白い肌が見る見る耳まで真っ赤になって行く。
「ひっ、聖さんっ!またですね!またなんですねっ。くそう、あのセクハラ星人め」
エズミは拳を握り締めた。勝手に人の心を読んでおいてセクハラもないものだが、女にそんな理屈は通用しない。自分で風呂場のドアを開けておいて
「キャーッ。エッチ!!」
と叫ぶラブコメヒロインのようなものだ。
それはさておき・・。
「大丈夫ですか?聖さん・・。すいません、嫌な思いをさせてしまって・・」
「い、いえ・・。ちょっと驚きましたけど」
聖は、エズミがウェイトレスからもらったお冷を一気に飲み干した。ふう、と一息つく。
「やっぱり男性でした。間違いありません」
聖はきっぱりと言い放った。
「ああ、そうなんですか・・」
エズミは落胆とも安心ともつかない声を漏らす。
「ただ、少し気になることが・・」
「気になること?」
「ええ・・。なんだったのでしょう、あの感情は。哀しみ・・」
「聖さん!詳しく話して頂けますか」
「ええ・・」


第3の証人「智士」

「イっカルスさんが女ぁ〜!?」
「しっ!声が大きいですってば!」
エズミは智士の口をあわてて押さえた。
当のイカルスは先ほどやってきた、彼を師匠と慕う若者――魔女吉と世間話をしているところである。エズミは、イカルスに気づかれないように、智士を浪漫堂の中庭に引っ張り出したところであった。
「まさかそんなことぉ。絶対ありえませんよう」
智士はにこにこと首を振る。微塵の疑いも持たない口ぶりである。
「その根拠は何です?どうしてイカルスさんが男性だって言いきれるんですか?」
「そりゃ・・」
智士は腕を組むと、わははと笑った。
「あんなに助平な人が女性なわけないじゃないですか」
ずいぶんな言われようである。
「確かに・・それを言われると辛いとこなんですよねー」
エズミはため息をついた。こちらもこちらで言いたい放題である。
「それにしてもお二人は最近仲がいいみたいですね。まさかつきあってるんじゃ・・」
「あははは。いやだな、もう。そんなんじゃないですよ」
嫌と言いつつもまんざらでもなさそうな顔の智士に、エズミの“こいばな”好きの血が騒ぐ。
「うりうりっ。白状しなさいよぉ。イカルスさんにもついに春が来ましたかぁ。しかし・・あんな風に口の上手い人だと不安じゃあありませんか?」
エズミが指差した方向では、イカルスがまたしても聖にちょっかいをかけたようで、ゴキブリを見たかのように逃げられたところであった。さっき、やなもん見せられたばっかりだもんね・・無理もないわ。
イカルスはそこまで聖に冷たくされる理由がわからないようで、困惑したように頭をかいている。
智士は笑った。
「口が上手いと言うよりは・・ストレートなんじゃないかって思います。みんな思っててもあんなこと言わないでしょう?それを臆面もなく口にするところがなかなかかわいいって言うか・・。純粋でいいじゃないですか。それに私、すけべな人好きだし。ムッツリ君よりはいいですよ」
「はいはい、ごちそーさん」
いつの間にやらのろけ話になっている。こんな言葉を聞くと、自分が思っているイカルス女性疑惑がとてつもなく馬鹿げたものに思えてくる、しかし・・。
「あ。もうひとつ、イカルスさんが男性だって確証、ありますよ」
「お。なんでしょう」
「それは・・」


「むむむむむむ」
エズミは頭を抱え込んでいた。みなの証言からわかった。あの人は確実に・・。だったら、なぜあんなことを言ったのだろう?エズミはまたあの謎の言葉を反芻してみた。
『でも、花がどう思って咲いているのかはその花自身にしかわからないのでしょうけど。
花を愛でる者にはその美しさはわかっても、花の気持ちまではわからないでしょうから。
本当に的確に花の美しさを表現できるのは、花の気持ちがわかる人だけでしょうね』
美しい花・・花の気持ちか・・。
(まさか・・)
その時、エズミの脳裏にひらめくものがあった。
聖の読み取ったもの、それは・・。
きゅぴーん。(金田一少年的演出)
エズミははっと顔を上げた。思わず向こうのテーブルのイカルスの顔を見つめる。
「まさか・・イカルスさん・・。そうか、それなら・・」
しゃきーん、しゃきしゃきしゃきじゃーん。(金田一少年的演出)
「謎はすべて、解けた」
CM(爆)

解答編

ここは浪漫堂特設ステージ。たまにバンド演奏や会合のため使われるこのささやかな舞台のカーテンは下りていたが、その中には浪漫堂の紳士淑女たちが少数、不可解そうな表情で集まっていた。
「お、関係者、揃いましたか」
遅れて現れたのはエズミである。外に出ていたのか、身に着けていたマフラーとコートをカウンターに放り出すと、エズミは浮かれた表情で一同を見まわした。
「関係者って・・。まるで殺人事件だなぁ」
そうぼやいたのは英爺である。うなずく面々。その場にいるのは、当事者イカルス、智士、英爺、聖、そして「ついでに君も」といってむりやり引っ張って来られた魔女吉の五人であった。
「ま、いいじゃないですか。あたし一度こういうシチュエーションやってみたかったんですよねー。さてさて・・」
エズミが声を張り上げた。
「ここに皆さん集まっていただいたのは外でもありません。今、浪漫堂で話題沸騰のイカルスさん女性疑惑。それについての私なりの解答がやっと出ました」
みな、いまさら驚きはしない。苦虫を噛み潰したような顔の英爺。まったく表情の変わらない聖。魔女吉だけが「ししょー!ほんまでっかー!?」と、イカルスに飛びついている。
イカルスは黙ってにやにやしたままだ。エズミはそんなイカルスを見つめて続けた。
「イカルスさんが女性ではないか、この疑惑の発端は1ヶ月前の雪の日、浪漫堂の暖炉の傍で彼が私に投げかけた言葉が始まりでした。・・覚えていますか、イカルスさん」
エズミの問いかけにイカルスは朗らかに答えた。
「もちろん。私はこう言いました。
『でも、花がどう思って咲いているのかはその花自身にしかわからないのでしょうけど。
花を愛でる者にはその美しさはわかっても、花の気持ちまではわからないでしょうから。
本当に的確に花の美しさを表現できるのは、花の気持ちがわかる人だけでしょうね』ってね」
「お前ほんっと気障だよな」
英爺が呆れ顔で首筋をかく。イカルスはまったく悪びれずに肩をすくめた。
「僕は思ってることを口に出してるだけだ。思うことの半分も口に出せないお前とは違う」
「うるさいわっ」
「まあまあまあまあ」
エズミがいつもの軽口になりそうな二人の間に割って入った。
「そう、その言葉です。花=華=女性と言う風にこの言葉は簡単に解釈できますよね。その前にイカルスさんはこう言っている。自分が女性を愛でるのに下心はない、と。ただその美しさを賛美することが自分の楽しみなのだと、そんな風なことをおっしゃってました」
智士が口を開いた。
「つまりエズミさんはこう思ったわけですね・・『女性の美を的確に愛でることのできる、つまり“花の気持ちがわかる人”それは他ならぬイカルスさん本人のことではないか』と」
「それで女性でなくちゃわからない気持ちをわかる師匠を女性だと・・?」
エズミは頷いた。
「そう言うことです。私はイカルスさんが女性ではないかと疑い始めた。・・さて、英爺さん。さっきの話の続きだけど、やっぱりあなたはイカルスさんは男性だと思う?」
「……………。正直、君の言う通り、確信があるのかと言えば、そんなものはない。ただ、これは長年友人をやってきた僕のカンだよ。やっぱり僕はイカルスは男だと思う」
英爺はイカルスを見つめた。
「僕は男と女の友情は信じないクチなんでね」
英爺の言葉にイカルスは苦笑した。エズミは頷くと、今度は聖を見た。
「あなたは?聖さん」
「思うも何も・・」
聖はイカルスをちらりと見て続けた。
「彼は男性です。間違いありません」
その言葉が必要以上に冷たかったことに気付いたのはエズミだけではないようだった。イカルスが聖の信用を回復するには、かなり時間がかかりそうである。
「じゃ最後に智士さん、どう思う?」
「さっきも言いましたけど・・」
智士はイカルスを見てにっこり微笑んだ。
「思うじゃなくってイカルスさんは男!だってそうじゃないと私が・・」
「『私が・・』なんですかっ?どうなんですかっ?」
智士の言葉じりに食いつくイカルス。智士は思わせぶりに微笑んだ。
「ふふ。それはまた今度ゆっくり・・。証拠だったらありますよ」
「おおっ、どんな!?」
「イカルスさんに抱きついた時・・おっ○いなかったですもん」
ちゅどーん。みんなてんでの方向にこけた。
「そっ、そんな簡単なことかぁ・・」
「成る程、そりゃそうですなー・・」
「……………。」
エズミはイカルスのほうに向き直った。
「そう。今の智士さんの話、みんなの証言でわかるとおり、あなたは紛れもなく男!そうなんでしょう。イカルスさん」
イカルスは無言であった。イカルスを気遣うように魔女吉がその顔を見上げている。
「やっぱりそうか・・」
安心したように呟く英爺と、頷きあう聖と智士。
「でも・・。ひとつだけわからないことがあると思いませんか?」
エズミがイカルスに歩み寄りながら言った。聖が「そうですね・・」と呟く。
「イカルスさんが正真正銘の男性だとしたら・・なぜ、そんなことをエズミさんに言ったのか」
「そうです」
エズミは我が意を得たりと言うように、聖に軽く頷いた。
「それがこの問題の最後の疑問でした。男性であるイカルスさんがなぜわざわざみんなを惑わすような発言をして、自らを女性だと匂わせたのか。ここからはまったく私の憶測なのですが・・」
ぴたり。エズミはイカルスの間近で立ち止まった。
「イカルスさん、あなた女性になりたかったんじゃないですか?」
「な゛っ・・」
どよめく一同。平然としているのは当のイカルスとエズミだけである。エズミは続けた。
「『でも、花がどう思って咲いているのかはその花自身にしかわからないのでしょうけど。
花を愛でる者にはその美しさはわかっても、花の気持ちまではわからないでしょうから。
本当に的確に花の美しさを表現できるのは、花の気持ちがわかる人だけでしょうね』
この言葉は私にはとても淋しそうに聞こえました。それを最初私は、女性なのに男性と思われていることへの淋しさなのかと思っていました。でもそれは間違っていた。あなたの淋しさ、それは、“男性と思われていること”ではなく、“自分が男性であること”に起因するものだった。人一倍女性の美にこだわりながらも、自分が男である以上、女性の気持ちはどうしてもわかることはできない・・花の美しさを自分は真の意味で愛でることはできないと、そうお思いだったんですね」
イカルスは両手を広げた。晴れ晴れとした顔をしている。
「恐れ入ったよ。その通り、私は女に生まれたかったんです」
「なっ、お前まさか・・」
「誤解しないでくれ、英爺。確かに俺は女性になりたかったけど、男が好きってわけじゃない。逆に女の子が大好きだからこそ、女性に生まれたかったんだよ・・かなわない願いだけどね・・」
「そんなことはないわ、イカルスさん」
エズミは微笑んだ。
「今日は大晦日前日だもの。“○んまと○緒のアンタの夢をかなえたろかスペシャル”じゃないけど、私がその夢かなえてあげましょうっ!!」
「なにっ!?まさか、お約束の人格入れ替わりネタ・・」
「ちーがーう。ふっ。すでに準備はできているわ、カマン!!薔薇組ぃ〜〜!!!」
エズミが指を鳴らすと同時にステージ裏に突入してきたのは・・浪漫堂の面々なら誰もが知ってはいるけど近づかない、帝国華劇団薔薇組の3人であった。
「な゛っ。これは・・」
のけぞるイカルス。
「エ〜ズミちゃぁ〜ん。変身したいのはこちらの方かしらぁん」
「あら、なかなか素敵じゃなくって。フフ、楽しみだわ」
「い、色が白い方なんですね・・。お、お化粧栄えしそうです・・」
「なっなっなっなっなっなっ・・。どういうことなんだこれわぁぁぁぁっ!!!!!」
「どうもこうも女になりたいって言うイカルスさんの夢を実現させるために、私がお願いしたんですよー。『○ックは無用、魅惑のへんしーん』ってとこですねー」
「わっ、私はこんなこと望んじゃないぞっ!!って言うか、お前俺の話聞いてたのかっ!?」
「問答無用っ!!一度変身してみれば世界が変わるかもしれませんよっ。最近浪漫堂では女装がはやってることだし・・。れっっとらいあなざーわーるどぉ!!」
「かっ、変わりたくなぁいっ!!たっ助けてくれぇぇぇ・・」
イカルスの願いむなしく、薔薇組に張り合おうとするものなどいるはずもない。かくして一時間後・・。
「きゃー、イカルスちゃんっ!かーわいーわ〜。ちゅーしたくなっちゃうん」
「フフ・・。あなたなかなか筋がいいわ。薔薇組に勧誘したいくらい・・」
「あっあの・・ステキです・・」
盛り上がる薔薇組を尻目に、浪漫堂の面々はあいた口がふさがらなかった。
「・・結構、イケてるんじゃないか・・」
「意外ですね・・」
「ししょー・・かわいい・・」
みなの賛辞を浴びて、イカルスもまんざらではなさそうである。エズミがにやにや笑いながら、智士とイカルスをくっつけた。
「ほら、こうやって並んでみて下さいよ。すっごいお似合い・・」
おお、と皆がどよめく。そこにはお互いの身長さえ除けば、やたらと絵になる一対の男女の姿があった。もっとも男女が完全に逆転してはいたが。
「写真写真、写真撮らなくっちゃこれは・・。ほら、二人もっとくっついて・・」
どこから持ってきたのか、古びた写真機を引っ張り出してくる英爺。満面の笑みで二人を見つめるみんなの視線を感じながら、イカルスはこっそり智士にささやいた。
「なんとも・・おかしな気分だ。なんと言って良いのやらわかんないなぁ」
「ふふ・・。私は普段通りですからね。でも、ステキですよ、イカルスさん。私かわいい子好きだから、たまにはまた、この格好してデートしましょうね」
「デートは嬉しいけどこの格好はなぁ・・」

パシャ。

この写真はのちに浪漫堂の掲示板に張り出され、多くの常連たちの話題をさらったものであった。十数年後、この写真を見て、二人を“理想のカップル”と誉めそやした浪漫堂の客達が、この二人が日本で最初の男女逆転カップルであった事を知っていたかどうかは定かではない。


m(__)mごめんなさ〜〜〜〜〜い。
すんませんっす〜〜〜〜〜。本当にみなさんすいませんでしたあ。って、誰も読んでないかな―。(^^;;
特にイカルスさんには陳謝!!!!!しかし、脈絡のない話や・・。
では、今年最後の忘年会に行ってまいります!書き逃げっ!

魔女吉氏
師匠〜ほんまでっか〜
って、わたくし、生っ粋の神奈川っ子ですのよ。<気色悪い

なんだかケンスウなんですね。俺。超球弾や〜♪

そうだったのか。イカルス師匠、女になりたかったんだ・・・。
って事は、タマ抜け発言は、

俺も抜くから貴様も抜け

なんですか?師匠〜(泣)
一緒に女装するデスカ?うわーん、上品だった師匠のイメージ、
崩れまくりや〜!

でも、取り敢えずほっとしたりして。
やっぱり女じゃなかったんだ!ラピュタは本当に有ったんだ!

「その謎解きには穴が有るとかおもわんのか?」

とかイカルス師匠のRESが来るのが予想できるけど。
何にしてもノートが消える前に見つかって良かった。
ここもディラックの海に呑まれてしまいそうだしな。

イカルス様早く気付いてね♪

ではでは♪

エズミ氏
師弟コンビと言えば・・
なぜか関西系お笑い芸人しか思い浮かばない私です。
こんばんは。魔女吉さん。
あけましておめでとーござーいまーす。(^^)/
いやー、見つけてくれる方がいて嬉しかったっス。

やっぱりキャラ違ってたでしょう。すいませんでした。(^^;
明らかにちゃうやろなー、と思いつつも「ししょー」と叫ぶからには関西弁にしたかったと言いましょうか・・。
次回は神奈川らしくすみれさん調で。(爆)

そうです、イカルスさんは女になりたかったのです。(きっぱり)
せっかくだから魔女吉さんも一緒に女装しちゃいましょう。草むしりのことじゃないですよ〜。

>「その謎解きには穴が有るとかおもわんのか?」
>とかイカルス師匠のRESが来るのが予想できるけど。

来そうなところですね―。(笑)でも私にはこれが精一杯でした。
イカルスさんが見てくれる前に消える恐れ大なんですよねー、これ。
♪はーやくこーいーこーいーイーカールースさーん
うーん、お正月。
ではでは、二人でイカルスさんの来訪を待つとしましょう。
おやすみなさーい。(^^)

イカルス星人氏
何てこったい

あけましておめでとうございます、エズミさん。
優にSS一本分もの謎解きをありがとうございます。
感謝の言葉もございません。
この力作を多くの方が読めないのは残念と思う反面、早く消えてしまった方が私の名誉のためにはいいような気も・・・。
これがもし新規でUPされてたらと思うとゾッとします。

では、お話の続きを。

「でも、どうして女になりたいなんて?」エズミが尋ねた。
ひとしきりの騒動が終わった後の浪漫堂のカウンター。
イカルスとエズミと英爺、そして聖と智士が紅茶を飲んでいる。
「私は、女に生まれるべきだったんですよ。
両親は娘がほしいと願ったのに生まれたのは男の子だった。
だが幸か不幸か色白で女性的な容貌、しかも病弱と来ている。
そこで両親はせめて外見だけでも娘のように育てようとしたのです。
小さい子は性別なんか意識しませんから私はよく他の男子から苛められました。
何故か友達は女性ばかりで上級生の女生徒にも可愛がられました。
買物に行けば『お嬢ちゃん、偉いねえ』と言われました。
そんな子供時代を送るうちに、私は女性が何を考えているのか、手に
取るようにわかるようになりました。
例えば聖さん、私は貴女の考えていることもわかりますよ」
聖はまさか、と言う感じでぎくりと体を強張らせた。
「やがて妹が生まれ、私がそういう役廻りを演じる必要はなくなりました。
それ以後の私は男として人生を送ってきました。
ただ、女性心理に長けていること、それだけに人一倍女性の魅力に敏感
なこと。これは変えようがありませんでした。
私が必要以上に女性に興味や関心を示すのはそのせいだと思います。
花の気持ち云々という言葉も実はそこから出たものなのですよ」
エズミは思った。
私は余計なことをしてしまったのではないか。
触れなくていい事に触れてかえって事を大きくしたのではないか。
開けてはいけない箱を開けてしまったパンドラのように。
「でも、エズミさんには感謝しているんです」
イカルスは意外な言葉を吐いた。
「私に新しい可能性を発見させてくれたのですから」
イカルスの瞳は輝いているように見えた。
何故か智士はそんなイカルスを不安そうな目で見ていた。

そしてしばらく後。
イカルスは考古学者の職を辞した。
さらにしばらく後。
帝都を揺るがす新たな脅威と闘う華撃団を守るように行動する秘密部隊・薔薇組。
そこに新たな男装の麗人、もとい女と見紛うような男性のメンバーが
一人増えていた。
彼の素性を知る者は民間人ではほんの数名に過ぎなかったという。

おしまい。
自分で更に傷広げてどうすんじゃって気もしないでもないが。
それでは、今年もよろしくお願い致します。
魔女吉さん、エズミさんの元込みでこれも回収してもいいですよ。

ひでじい氏
真に恐るべきは…。(イカルス・エズミ様宛)

イカルスさん、エズミさん、新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いしますね。
しかし、恐るべきはこの解答篇。年末年始にこのような大作が…。なかなかに興味深く読ませていただきました。お二人とも真樹先生のHPに載せたいくらいのいい出来とは思うのですが…。じゃあ僕も短くつけましょうか。


「…。お前はどう思うんだ。英爺。」暖炉の前でワインを飲みながらイカルスが英爺に尋ねた。
「どうもこうもないだろう。」英爺もワインを飲む。そしてテーブルに
グラスを置くと、
「ただ、昔をふと思い出したんだ。リュックを担いだ二人が山の中で大喧嘩して…。」英爺の横顔を暖炉から漏れる赤い炎が照らし出す。
「そうだったなあ。あのときは。」イカルスが懐かしそうな顔をする。
「…。僕も君を知っていると大言を吐きながら全然知らないところがあった。親友を名乗りながらのこのざまだ。イカルス、許してくれ。」
「…英爺。俺とお前の仲だ。気にするな。」二人の空にになったワイングラスにエズミが黙ってワインを注いでくれた。

「そうだ。今度浪漫堂の仲間で宴会をしようじゃないか。」イカルスは元気のない英爺を勇気づけようとしたのか、明るい声で言った。
「しかし浪漫堂の仲間も増えてきてそう宴会できる私邸もないぞ。」英爺は戸惑いながら答えた。

「いい場所があるじゃないか。陛下の家さ。」
「あ、なるほど。陛下の家かあ。」英爺の顔に喜色が甦ってきた。
「そうしよう。エズミさんも手伝ってくれるよね。」
「分かったわ。行ってあげる。」エズミはにこっと笑って英爺の申出を快く引き受けてくれた。智士と聖も賛同してくれる。

「そうと決まれば…だ。」率直に反省する英爺としょげ返った友を勇気づけようとするイカルス。二人を暖かく見守ってくれる英爺の大事な人エズミ…。冬の浪漫堂本館にも暖かい空気が運ばれていた。

エズミ氏
べきべき
こんばんは、英爺さん。読んで頂いてありがとうございました。
年末年始だからやっと書けました。
長さだけでは超大作ですね。(笑)
英爺さんも溜飲は下がったでしょうか?
私のレスのふざけ方とは違い英爺さんはいつでも粋ですね―。
イカルスさんの下に更にふざけたのをまた書いてしまいました。
英爺さんに出てもらってますので、また読んでみてください。
完璧にイロモノになってきてますので、
樹さんのところ向きかなぁ。(笑)
ではでは、失礼致します。

エズミ氏
こったいこったい
あけましておめでとうございまーす。イカルスさん。早くも見つけていただいてありがとうございます。
長くなったのは私としても予想外でした。いつものことなんですけどね。でもなんだか書いていてとっても楽しかったので、そんな全然。
ただ、私もみんなに読んで欲しい気もしたり。けっこう出ていただいてるので、智士さんにはお名前拝借を言っておいたほうがいいかもですね。あと、陛下にも聖さんの無用借用を。もう二日三日は持ちそうな気もするんですが、どうなんでしょーね。
って、イカルスさんは早く消えたほうがいいかなー。(笑)

>これがもし新規でUPされてたらと思うとゾッとします。

ゾッとって、そんなあなたオーバーな・・。(爆笑)

では私も軽く・・。まだやんのかい!?

浪漫堂でのイカルスの件から数ヶ月が過ぎた。
とある冬の日、浪漫堂に訪れた英爺の前に、驚くべき光景が目に入った。けばけばしい真っ赤な壁の建物がいつの間にやら浪漫堂とぴったり隣接して建てられているのだ。
「こ、これは一体・・」
呟く英爺。その時、作業員たちにきびきびと指示を出す女性の姿が英爺の目に入った。女性は英爺に気付くと、にっこりと微笑む。
「あーら、英爺。久しぶり」
イカルスだった。すっかりおねえ言葉も板につき、化粧も派手さを増している。
「いっ、イカルス!お前こんなとこでなにを・・」
「ふふふ。英爺。私は自分自身の新しい可能性を見つけることができたの。さようなら、昨日までの自分。こんにちは、今日からの私。帝都もすっかり平和になって薔薇組の役目は終わったかに見えたわ・・でも。私達にはまだ残された夢があるのよ。そう、それは・・。
花組たちと同じように、人々に夢を与えること・・。私たちの美しさをお客さまに楽しんでもらい、そして浮世の辛さを一時忘れてしまうそんな場所、私たちもそれを作ることにしたの。見て、英爺。これが私たちのお店よ!名づけて“薔薇亭”!!!」
「・・焼肉屋みたい・・。夢・・悪夢の間違いなんじゃ・・」
無意味なツッコミを呟いた英爺。しかしイカルスには聞こえていない。
「ふふ。英爺も開店の暁にはぜひ遊びに来てね♪うーんとサービスしちゃうわぁ・・」


かくして浪漫堂の隣、銀座の一等地に新名所が誕生した。
おかまバー「薔薇亭」
さらにその数週間後薔薇亭と共に浪漫堂を挟むようにある店がオープンした。気が狂いそうになるピンクの外壁。智士の店その名も・・
男装ホストクラブ「百合園」
それ以降浪漫堂に来る客たちは、赤とピンクのコントラストの強烈さに、店に来るたびにめまいがしたという・・。



マジでごめんなさいっす。m(;_ _;)m
だめだったらゆってください。あー、ほんますいません。だったらかくななんですけど、ついつい・・。
ごめんなさいい。

それにしても、私の謎解きはあれで良かったんでしょうか・・?
ではでは、失礼致します―。そそくさ・・。

ひでじい氏
恐ろしい、あまりにも恐ろしい…。

こんなことろで悪魔の饗宴がああああ!!イカルスさんはまだいいけど智士さんが見つけたら…(顔面蒼白!!)と、取りあえず保存しなきゃ!(おいおい…)

エズミさんの労作にプロージット!!ついでにお願いしてよろしいですか。上の消えてるレスSS修正してくれると嬉しいです。これも失われたアークとして取り込んでおきますので。

正に恐るべきは太正浪漫堂…。

「う〜ん。う〜ん。」乱れたカッターシャツに緩められたネクタイ。乱れた服装で英爺はうなされていた。

「英爺さん、しっかりして…。」BATの持ってきた氷ですばやく氷嚢をつくり、エズミは英爺の頭に当てる。しばらくすると英爺はうっすらと目を開けた。

「あ、ああ、エズミさん。僕は…。」弱々しい声で英爺が尋ねようとする。
「よかった。本当に…。」エズミはほっとした表情で英爺を見つめた。
「倒れちゃったんですよ。英爺さん。」BATが心配そうにのぞき込む。
「やっぱり仕事疲れかな。あんな夢を見るなんて…。」英爺はさっきの悪夢を振り払おうと笑って見せた。しかし南國は黙って首を左右に振った。

「残念だが、あれは事実だ。英爺。」
「まさか、まさか、う〜ん。」英爺はそのまま倒れてしまった。
「しっかり、しっかり。」みんなの呼びかけがだんだん遠くなっていく英爺であった。

智士氏
見つけちゃったよ・・・

エズミさん、あけましておめでとうございます。
「百合園」店長智士でございます。(笑)

正月休みで過去への旅に出ていたら、何とビックリ。こんなところで浪漫堂番外が続いていたとは。
恐れ入りました。(と言うか感心したと言うか・・・)

それではお返しに一つ。

********************************

”カラン”
浪漫堂のドアが開き、英爺とエズミが仲良く店内に入って来た。
浪漫堂の暖炉の前に陣取っていた智士は、二人を見つけるとつい習慣で
冷やかしを入れたくなった。
「ひゅーひゅー!熱いねぇ〜」
しかし、冷やかしの言葉ははっきり言って品が無い。
「何言っているんですか、智士さん!」
エズミがちょっとむっとした様に言い返そうとするが、
「良いじゃないですかぁ〜。幸せさん達はまわりから冷かされるのも
幸せのうちなんですよぉ〜。幸せの代償って奴ぅ〜?」
どうやら不貞腐れているらしいと判断したエズミは原因を探った。
「・・・何かあったんですか?」
エズミの心配そうな表情を見て、ちょっとだけ悪い事をしたかもと反省をする辺り、
まだまだ小心者の智士である。
「何だか最近のイカルスさん。すっかり人が変わってしまったみたいで。
そりゃあ、女性になりたかったって言うのもわかりますけどね、
でもやっぱり私の女性としての立場ってものも・・・」
どうやら最近のイカルスの女装にめげているらしいと言う事のようだった。
「確かにすっかり板についているからなぁ〜」
英爺が追い討ちを掛ける様な発言をしてしまった。
「いいんだぁ〜!!どうせ私は坊やと間違えられるような奴なんだぁ〜!!」
すっかりどん底まで落ち込んでしまった智士を浮上させる手建てを無くして
しまったエズミと英爺は、遠くからその様子を見守るしかなかった。

「イカルスさんが女装するなら私は男装してやる!!」
今更その必要もあまり無いと判っていないのか、智士は妙な決意をして見せた。
「ちょ・ちょっと智士さん?」
エズミは一瞬嫌な予感が胸を過った。
「エズミさん!」
妙に目の据わった智士の迫力に負け、エズミはつい返事を返してしまった。
「は・はい」
「こうなったのもエズミさんがあーんな謎解きをした所為ですからね。
責任を取って貰わなくっちゃ」
「え?」
「ふふふ、私決めました!イカルスさんが『薔薇亭』なるおかまバーを
するならこっちは男装ホスト倶楽部をやりましょう!良いですね、エズミさん」
既にエズミに反論の余地は残されていなかった。

こうして浪漫堂を挟むように『百合園』が誕生したのだった。

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『百合園』誕生のエピソードはこんな感じでよろしいでしょか?
そしてお名前拝借しましたエズミ様、英爺様、イカルス様、
大変失礼致しました。

温泉で気分爽快、心機一転の智士でした。
それでは、また。(どぴゅーんっと逃げよう)

ひでじい氏
どっひゃあああ!!

カカオ70は本当にカカオを使ってるのか?などと食べながら見てると…。み、見つかっている…。どう、どうすればいいんだ。エズミさんはいないぞ。落ち着け、ひでじい。浪漫堂では結構格好いいじゃないか(爆)このシチュエーション、鬼っすよ。


「はあ…。」がっくりうなだれる英爺。さすがの夢織、南國もかける言葉がない。暖炉の木々の爆ぜる音のみが聞こえる。

「あれ、どうしたんですか。英爺さん。」MOSが入ってくる。
「そおっとしておいてやれ。生涯最大のピンチが襲ってるんだ。彼女は男装、親友は女装だ。どんな複雑な地質構造より難関だぞ。」南國がMOSにささやくように言う。
「英爺さん、いい人なんですけど、こういうことには打たれ弱いですからねえ。」夢織も思案顔だ。

「はあ。いっしょに浅草寺にでも行って帰りに何か食べようとも思ったんだけどなあ…。」

と、そこにミュラーが息せき切って入ってきた。

「夢織、グッドアイデアだ。」
「ミュラーさん、何ですか。」
「ビッテンだ。ビッテンを使うんだ。」
「薬…。」3人の脳裏に浮かんだのは今回の元凶イカルスをピンポイントで元に戻せば、ということだった。

「そうと決まれば即出撃だ。名付けて作戦「ロウの翼」!!即日決行だ!!」
「「了解!!」」

こうして浪漫堂有志による決死作戦が決行された。(続くのか?)

エズミ氏
うっひゃあああ!!
こんばんは、ひでじいさん。わかります。私も智士さんの名を見つけたときは、一気に酔いが覚めました。いやー、悪事千里を走る!!
でも、カカオ70をかじっているひでじいさんには罪はありません。勝手にこんなものを書いている私が悪いのですから。

>「彼女は男装、親友は女装だ

このフレーズ、大爆笑でした。英爺さん、不憫な・・。
おおっ、イカルスさん元に戻るのかっ!?いかにいかに?
どうなるんでしょ?面白いですねー。(^^)
ではでは、しつれいしますー。

PS聖さんのお話、直しておきましたね―。

イカルス星人氏
絶句・・・・・

2、3日家を空けている間に更に事態が悪化している!!
薬編の続きを書いてもいいんだけど、多分このページ今晩中に消える
だろうからもっと簡潔なオチにしときます。

「つまり、あなた方は何がご不満なんですの?」
駆けつけてきた英爺他数名にイカルスが尋ねた。
「僕は自分の彼女が男装、親友が女装というのが納得いかなくて」
英爺が言う。
「ではエズミさんにお聞きします。貴女はご自分が男装する事に抵抗
をお感じになりますか?お嫌ですか?」
「いいえ、全然(某ウイスキーのCM調で)」
「智士さんは?」
「私はこの姿でお客さんの称賛を受ける快感が病みつきになりそう」
「そらごらんなさい。お二方とも嫌々でなく、ご自分の意思で男装を
楽しんでらっしゃるのです。この私の女装もまた然り。彼女や親友が
それで幸せだと言うのに、貴方はそれをご自分の価値観で強引に変え
させると仰るの?それは男の横暴と言うものですわ。そうだ。いっそ
のこと貴方もご自分の価値観を変えてみては如何かしら。相談に乗り
ますよ」
「もういいよ。わかった。僕が悪かった」
英爺がげっそりした顔で言った。どうやら女装させられるのに恐怖を
覚えたらしい。
「他にご不満がお有りの方、いらっしゃって?」イカルスが尋ねる。
「一つお願いがあるのですが」良識派の夢織が口を開いた。
「浪漫堂は私達の憩の場、心の安らぎです。その両隣に赤とピンクの
こんなけばけばしい店があったのでは心の休まる暇がありません。
美観の問題からもこの点だけは何とかして戴きたいのですが」
イカルスはエズミ、智士と相談していたがやがて答えた。
「わかりました。ご要望の沿うように致しますわ」

数日後。
浪漫堂を挟んでいた悪趣味な建物は取り壊され影も形もなくなった。
同じ頃、薔薇組を通じ米田中将にある策を上申しているイカルスの
姿があった。
「面白えじゃねえか。よし、その話乗った」
米田はそう言うと愉快そうに笑った。

さらに数日後。
浪漫堂別館に足を向けた夢織とルドルフはただならぬ雰囲気を感じた。
「この扉を開けると何かとんでもない物に出くわす予感がするんだ」
「実は私もですよ」
「では一緒に開けてみよう。君は右、俺は左の扉。せーの」
扉を開いた二人は息を呑んだ。
そこには彼等の想像だにしない世界が広がっていた。
右側には新入りの魔女吉をはじめ女装した男性が一列に。
左側にはエズミ、智士を筆頭に全て女性が男装したホストが一列に。
凝固して立ち尽くす二人に歩いてきたイカルスが声を掛けた。
「ようこそ、浪漫堂別館改め秘密クラブ『禁断の花園』へ。
ごゆっくりおくつろぎくださいませ。
魔女吉ちゃーん、お二人様ごあんなーい」


一応オチをつけてみたけど消える前に誰か読むのかな。
まあ読まなきゃ読まないでそれもまた斧、もとい良き哉。
運悪く読んじゃった方は気を悪くなさらぬよう。
それでは、また。

エズミ氏
まってました〜(^^)
いらっしゃいませ〜。倒錯の館へ。(爆)
こんばんは、エズミです。広げた傷口にさらに塩を塗りこむエズミです。
これホントあともうちょっとですよね、悲しいな〜。

さてさて、解決編、読ませていただきましたぁ。面白かったっス。いやー、きれいにまとまりましたね―。(笑)
とりあえず、浪漫堂別館は次回から「秘密の花園」ってことで。
がんばりましょうね、ママ@イカルスさんっ!!(^^)
私もホストの星を目指します。
魔女吉さんも女装させられてるし・・。くくくく。(*><*)英爺さんの女装も見てみたかった気がします。
>美観の問題
って、なんか京都のお寺みたい。(笑)
この辺りで、あー、なくしちゃうのね・・って寂しかったんですが、祝!復活!!
秘密クラブかぁ、いいなぁ。
○リーメーソンとか、○薇十字団みたいで。
って、それは秘密結社やー!!!!
などと寂しい一人ボケツッコミをしつつ・・。
ではでは、失礼します―。

ひでじい氏
もう、何とかワクチンを打たないと…。
ウィルスが広がってしまう(笑)って来たらすでにイカルスさんが解答出してるし…。まあ、せっかくつくったので僕の解答篇もアナザーエンドということでみてくださいな。


 ミュラー、夢織、南國、MOS、そして最大の被害者英爺の5人で急遽編成されたプロジェクトチーム「ロウの翼」はビッテンの勤める某化学工場へ向かった。

「あれ、みなさん、おそろいで…。」ビッテンは日頃非常に多忙なのだが、一行が到着した時点ではようやく残業につぐ残業を終え、紅茶を淹れて一息ついていたところだった。

「浪漫堂の芳しき紅茶が早く飲みたいもんだねえ。本当に…。で、みなさん俺に何の用?」
「ビッテン、私から率直に頼もう。卿の力を貸してほしい。」ミュラーが憂慮の表情で切り出した。
「英爺の苦境を救ってほしいんだ。ビッテンさん!」南國はイカルスと智士、エズミの近況について詳しく話した。

「ひ〜ひっひっひ!!俺が出張の間にそんなに面白いことになっていたのかあ!!」ビッテンは最初真面目に聞いていたが、あまりのおかしさに腹を抱えて笑い出した。
「しかし、ビッテンさん。そのおかげで英爺さんはこのとおりの状態ですし、あの抜群の美しさを誇っていた浪漫堂本館の両側にどぎつい赤とピンクの建物が建っちゃったんですよ…。」夢織がため息をつきながら話を捕捉した。

「な、何〜!!俺の浪漫堂をそんなにあいつらメチャクチャにしやがったのか!!許さんぞ!!…それにしても英爺さんもいつもの元気はどこへやらがっくり来てるみたいだし…。何とかしてみるか。」ビッテンは二階堂に応援を頼み、何やら妖しげな液体を2・3種類つくりだした。そしておもむろに製薬会社に連絡して効能を最終確認した。

「よし。これでいい。後はイカルスさんにこれを珈琲にでも混ぜて飲ませるんだ。「薔薇亭」の件はこれで解決だ。後は一気に取り壊せばいい。ただし…。」
「ただし…。」MOSが聞き返す。
「いや、その話は後で考えよう。さあ。急ぐぞ。浪漫堂へ。」
「「「「「「了解!!」」」」」」一行はイカルスの元へ向かった。

「あ〜ら英ちゃん。早速来てくれるなんて嬉しいわね。」イカルスはすでに別世界に旅立っているようだった。
「イカルス。率直に話そう。まずはこれを飲んでもらいたいんだ。」英爺が真剣な眼差しでホットコーヒーをイカルスに差し出した。
「な、何かしら…。あら浪漫堂の珈琲じゃない。気が利くわね。」イカルスが飲み干す。
「ビッテン。イカルスに効用を説明してくれ。」そのままの姿勢で表情を変えず英爺がビッテンに言った。
「大脳前頭葉の活動を沈静化させ、旧皮質を逆に活性化させる。この薬品は本能を目覚めさせる薬品だ。」
「な…。」後ずさりするイカルス。
「君の場合は女性の美の完成度を求めるあまり自らこの道に走ってしまった。いわば理論的な思考の暴走だ。人間として本能の方のバランスを整えてやらなければならない。」ミュラーが厳しい表情で解説する。

「ミュ、ミュラーさん。すみません。」ビッテンがミュラーの肩を叩く。
「どうした、ビッテン。」
「ちょっと希釈するの忘れてましたね。普通の20倍くらいの効果になりますか。」
「そ、それって…。」MOSが顔面蒼白になる。
「超ドスケベってことに…。」英爺が恐怖で振り返った瞬間、

「あ、あああ、あああああ!!ぐあああああ!!」イカルスの絶叫が薔薇亭にこだました。


 数週間後。イカルスは大學に復帰した。無論一度學部助手は退官しているので付属考古学研究所の方にではあるが。何せ当時のこと一芸に秀でる人材ほど得なものはなかったので簡単に手続は進んだ。夢織と英爺の尽力であることは言うまでもない。しかし…。

「はあ。何とかならないものかな。」疲れた英爺の声がする。
「ま、まあよかったではないか。エズミ君も智士君も戻ってきたし…。」ミュラーが英爺を慰める。
「有能な考古学者を失わずに済みましたしね。」夢織の説明も汗が入る。
「しかし、あの薬効きすぎですよ。大學でも銀座でも女の人に声掛けまくりで…。副作用が強すぎですよ。おかげで僕はお偉方に説教されてばかりですよ。智士さんもあれじゃ気が気ではないでしょう。」

「まあ、イカルスの話のように人の数だけ真実があるといういい教訓になったのではないですか。」万年筆でさらさらと原稿をしたためながら真神は涼しい顔で言う。

「これじゃ、イカルスが二人分だよ。はあ。」ため息をつく英爺にエズミがにっこり笑って珈琲を入れてくれた。

「ただいま。」
「おかえり。はあ。」浪漫堂の一こまではある。

エズミ氏
見つかってるっ!!!(゜ロ ゜;)/
こんばんは、智士さん。
あけましておめでとうございます・・なんて呑気なことを言ってる場合じゃないっ!!
ごっごっごっ…ごめんなさいっ!m(;__;)m
あっ、呆れてますね、呆れてますよねっ!?
ひぃぃ、本当にすんませんでした!
いやー、明日にでも連絡しようと思ったんですが・・。

レスSSありがとうございます。ええ!!引きずり込んだのは私です!
責任持って、百合園の一員、勤めさせていただきます!!
目指せNO.1!!よろしく、マスター!!!

しかしすごいことになってきましたね・・。もうちょっとで消えちゃうのがもったいないくらい。(笑)

ではでは、失礼します。過去で遊ぶのは初めてで、楽しいエズミでした。(^^)

智士氏
楽しかったですよ(^^)

エズミさん、こんにちは。
そんなに謝らなくても大丈夫ですよ。楽しかったので全然
問題ありません。
それに百合園でNo1ホストになっていただけるようなので(笑)

>しかしすごいことになってきましたね・・。
誰が収拾を付けるのかが問題でしょうね。あ、でも英爺さんがやってくれそう。

>もうちょっとで消えちゃうのがもったいないくらい。
本当にもったいないですね。こんなに楽しい事ですのに。

それではまた、浪漫堂でお会いしましょう。
百合園店主智士でした。(←結構気に入ったらしい)

エズミ氏
よかったっすう(^^;;
こんばんは、智士さん。そう言っていただけると・・。
あー、よかった。
ええ!頑張らせていただきます!!
目指せマリア・タチバナ!!(爆)
酒の注ぎ方はマスターしているので、
煙草の火のつけ方を練習しとこ。
源氏名はなににしよーかな―。(爆)

なんて調子に乗りつつ・・。

>誰が収拾を付けるのかが問題でしょうね。
>あ、でも英爺さんがやってくれそう

律儀な方ですもんね。(笑)イカルスさんも見てたらやってくれそうなのですが・・。ハニーのピンチ(?)に駆けつけないようじゃあ、
薔薇組隊員失格ですよ。(核爆)

ホント明日あたりで消えちゃうんだろーなー。寂しいっス。

ではまた。
時期店長の座を狙う、野望に燃えるホスト(意味なし)
エズミでした―。

魔女吉氏
ははは。
温泉帰りで男装ホストになっているとは驚きだったでしょうに。
***********************************

浪漫堂の両脇にに聳え立つ素敵な建物。
薔薇と百合に挟まれて困っているように見える浪漫堂が何とも可笑しかった。
「どうしよう、智士様の男装倶楽部も捨て難いが師匠の女装見てみたい。」

そう一人ごちていると、爆撃王(笑)紀州人が現れた。
「魔女吉じゃないか。君もホスト倶楽部絨毯爆撃に来たのか?」
「え?ああ、智士様の方ですか。」
「何いってるんだ。どっちも男だからどっちもホスト倶楽部だろ。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「だったらどっちも女性だからどっちもホステスでは?」
「むむ、確かに。でも、どっちかというと男要素がどっちも高い。」
「で、どっちも行くんですか?」
「まあな。君も当然来るんだよ。それに君、両方の風営管理者だろ?」
「ええ?いつのまに!てことは摘発されたら、俺前科者?」
真っ青になって店に飛込む魔女吉だった。
注)風俗営業法は警察の法律ですので違反は懲役をふくむ。

**********************************
明けましておめでとうございます、皆様!
こんな店ができたらどっちに行くか迷いまくりです。
管理者は引き受けますので思う存分接客して下さい(爆)

今年も宜しく!智士様!
ではでは♪

エズミ氏
ふふふ。
魔女吉さんこそ。
ホステスになってますよ、いつのまにか。いっしょにNO1をめざしましょーね。(^^)
師匠のためなら、女装もいとわん!!いやー、男前です。(笑)
管理者兼従業員、よろしくお願いしますね―。

>「何いってるんだ。どっちも男だからどっちもホスト倶楽部だろ。」
>「だったらどっちも女性だからどっちもホステスでは?」

この辺りが妙にわらけてしまいました。私たちの明日はどっちだ?
一度おかまバーに行ってみたいエズミでした。それでは〜。
・・いっぱいになっちゃうのかな・・。さみしいですねー。

ミュラー大将氏
「冬来たりなば、春遠からじ・・か。」

ミュラーはそう言うと、テーブルの上のティーポットからカップに少し紅茶を入れた。
「さて、冷えた心と体には・・こいつに限る。」
ミュラーは懐からスキットルを取りだし「液体の宝石マーテル」をなみなみと注いだ
「陛下、二人ともひとついかがですか・・・・・・・・、不要の様ですな。」
彼はそう言うとブランデーのストレートに限りなく近い紅茶を手に窓辺のロッキングチェアに
腰を掛け、本館で何が起こるのか見守ることにした。
「雪か・・・何もなければいいが。」
******************************************
こんばんは、ひでじい殿。
あまりの寒さに驚いているへっぽこ大将でした。
9もファイト一発。頑張って下され。


ひでじい氏
「閣下も弾かれましたか。」ミュラーの横にはルドルフと聖を巡る騒動を抜け出した智士が座る。

「その様子ではかなりがんばったようだな。」ミュラーが昨日の智士の原稿執筆を思い出しながら賞賛すると、智士はいやいやと謙遜しながら、

「まあ、好きでやってますからいいんですよ。」
「南國もそうだがあまり無理は禁物だぞ。」
「ええ、気をつけます。…あ、雪ですね。」
「うむ。冬の到来だな。」
「こういう日はこれに限るよ。」ミュラーの差し出した飲み物の芳香を嗅いだ智士がにこりと笑う。
「閣下もやられますね。」

 太正浪漫堂に舞い降りる雪。白く輝くその雪は…。

 閣下、遅れてすみません。冬はブランデーティーに限りますね(僕はすこしで十分ですが)
 寒いと珈琲と紅茶が確かに恋しくなりますよ。



夢織時代
やはり、ここでは珈琲だな。
このところフレッシュジュースに傾倒していた夢織だったが、
やはりこう寒くなると温かい珈琲が恋しくなってくる。
今日は迷わず珈琲を頼むことにした。

胃のさほど強くない夢織は、クリームをやや多めに入れる。
ゆっくりと、白と褐色を混ぜていくとともに、立ち上る湯気が少し渦を巻いて立ち上る。
その湯気とともに、懐かしささえ覚えさせる香りが鼻をくすぐった。

チン・・

スプーンが陶器と合わさって、一瞬だけ楽器となる。
この浪漫堂のカップを傾けるときに、指にかかる重みも、夢織は好きだった。

舌を満足させた香りが、やがて身体を芯から暖める火種となってくれる。

笑いを誘うあたりまえのような光景とともに、ここにいるという実感をわかせてくれる。
アップルパイを受け取って一口味わってから、窓を見つめると、ミュラーが窓辺に腰掛けていた。
窓枠に、雪が白を演出している。

長い夜には、物語を書こう。
あたたかい浪漫堂の中から眺める帝都の冬は、決してつらいものではなかった。


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こんばんは、なんだか気分は太正浪漫街道な夢織時代です。
うん、ひさしぶりにのんびりと浪漫堂の気分を味わえて幸せです。
さすが英爺さん。
間の取り方をわかっていらっしゃる。

さて、次は魔物の謎に挑戦ですね。
人の増えた浪漫堂がうれしい夢織でした。

ひでじい氏
「おや、夢織さんじゃないですか。」珈琲の薫りとともに思索の旅に出ていた夢織を引き戻す者がいる。

「ああ、二階堂君か。」前にはいつもながらにリボンタイの二階堂が雪を払いながら立っていた。
「いつもの暖炉前はどうされたんですか。」コートを脱ぎながら二階堂は夢織の前に座る。
「先客がいてね。フフフ。」
「残念だなあ。」二階堂はウエイターに水出し珈琲を頼みながら、夢織の持つ紙に目をやった。
「夢織さんも小説を出されるんですねえ。」
「ああ、これですか。」夢織は微笑すると、二階堂にその原稿を手渡した。
「論文が一息ついたので書いてみたんですよ。読んでもらえますか。」
「そうですね。」

 背後に流れる曲はバッハのG線上のアリア。どうやらロビーコンサートが開かれているらしい。こちらも悪くはないと思った夢織であった。

 夢織さん、御無沙汰してました。
 魔物の謎解きはみなさんにお任せしますよ(笑)
 この浪漫堂の方が気が楽なんですよね。



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