浪漫堂再録書庫に戻る。
太正浪漫堂3別館(SS)

太正浪漫堂3別館 筆:ひでじい氏
│├もしかしたら・・・ 筆:二階堂氏
│├そんな・・・、そんな・・・ 筆:夢織時代
││└「私も報告しなければならないことがあります。」 筆:ひでじい氏
│├私には、英爺に告げていない秘密があった。 筆:イカルス星人氏
││└「俺もやられた。飛鳥の亀石だったよ。 筆:ひでじい氏
│└それまで場の議論を傍観していた桜嵐が、 筆:桜嵐氏
│ └「新世界の創造…。」 筆:ひでじい氏
太正浪漫堂3本館(SS) 筆:ひでじい氏
「あ、そう言えば一つ気になる事があるんですよ。」 筆:MOS氏
│└「そういえば、面白い噂を聞いた事がある。」 筆:紀州人氏
│ └「実はボクも、面白い話を耳にしたんだが」 筆:智士氏
「しかしなんだか気になりますねえ」  筆:エズミ氏
│└「う〜ん、アイデアはあるんだけど 筆:ひでじい氏
予想以上の暖かい出迎えに、花丸は深い充足... 筆:花丸氏
│└「花丸、花丸、何を考え込んでいるんだ。」 筆:ひでじい氏
「ダストシュートの設計ミスにどでかい蒸気... 筆:南国華撃団氏
│└ カフェオレを片手に、エズミの次回の 筆:ひでじい氏
「・・・あれ?皆は?」  筆:二階堂氏

はっきり言って怖いです。どちらかと言うと... ひでじい氏
ひでじい氏
 はっきり言って怖いです。どちらかと言うと僕らしいさらりとした風景を描くつもりだったのが、みなさんの反響がすごくてびっくりしています。力作のレスSSがすごくて、僕も感動しながら読んでます。(ああ、もうこれでワールドに。もう帰れないかも。)
 洒落た建物や調度を持つ珈琲のおいしいお店、太正浪漫堂。帝劇の大ファンという人が様々に集い、話をしている、実に居心地のいい場所です。初めての方も是非当店にお越しください。それでは今日も扉を開けましょうか。

 木製の壁に施された葡萄を掘った彫刻がランプの反射を受けて妖しく光る。先ほどのシャンパンを引き締める強い珈琲が新たに入れ直され、その中で黒鬼会の話が続いていた。ミュラー、夢織、シュペーアは沈痛な表情と好奇心が相半ばといった表情で、また大神とさくらも真剣な眼差しで黒鬼会を見る。

「つまりは、京極の壮大な野望には木喰や陸海軍の技術将校たちが大きく関与していたということか。」ミュラーの目が光る。
「そうだ。後から考えるとすごいものだ。少数だが圧倒的な力で帝都を制圧し、帝都の陸軍で地方に進撃する。魔操機兵、降魔兵器、それに陸軍を駆使すれば地方の制圧は簡単だと京極は言っていたようだ。帝都は帝國華撃團で首の皮一枚つながったというところだ。」

「京極の野望は恐怖政治による政権掌握か。」
「いや、違う。日本の皇帝など小さすぎる。武蔵を機動要塞、中国・アジア地域を兵糧庫・兵器廠にした現実的で着実な世界征服だ。」
「なんと!!」
「いや、武蔵の出現で京極はほとんど戦略的には九分九厘勝利を得ていたんだ。俺もあのときほど絶望感を味わったことはなかった。」黒火会は苦笑いした。
「いずれにしても京極一人で野望を達成することなどできない。現在でも京極の同志は陸海軍や政府、企業に少なからず残っている。」

 シュペーアは嘆息した。
「獅子身中の虫か。国は軍事に傾斜して民生をおろそかにしていた上、京極の乱で政府と軍の力は大きく損耗した。そいつらがまた何かを策してもう一度大乱が起きれば国が乱れ、収拾のつかない内乱となって海外列強が植民地化を図るか…。」
「不満をそらせるため、自ら絶望的な海外侵略を図る賭に出る。」夢織が微笑した。

「それから五行衆のことだが、いずれも超人的な力、妖力とか言ったな。様々な者を機動部隊として集めていたようだ。このうち二人は反魂の術とかで甦ったということを五行衆が言っていたのを耳にしていたことがある。もっとも木喰は「反魂などとは古めかしい。「次元処理」という計算のうちじゃ、と言っていた。」
「次元処理か。物理で解ける、ということか。」ルドルフが考え込む。

「ただ一人はうまくいかなかったらしい。何でも先の大戦で死んだ魔人の葵叉丹を呼び出そうとしたらしいんだが、反魂の術で甦ったのは別の人格だったらしいのだ。」
「何!!」夢織が驚きの声を挙げる。
「何とかという少佐だったらしい。その少佐の意識が葛藤を起こし、叉丹自体はあれ程の恐るべき能力の持ち主だったにも関わらず、帝撃相手に十分な能力を発揮できなかったという。京極からはすでに抹殺の指令が出ていたようだ。」
「!!そんな…。」夢織は一瞬よろめいた。最後の最後まであまりにも悲惨な少佐の最後。その者の名と経歴を夢織と帝劇支配人は知りすぎるほど知っていた。

「最後に帝撃の例の機動兵器の性能の良さを賞賛したとも聞くが。」黒火会は続けた。
「次に鬼王という京極の片腕と目されていた人物だが、これも単に機動部隊の指揮官に過ぎなかったようだ。ただ抜群の能力と指揮力の持ち主だったと聞く。確か名前は…。」

 その瞬間、大神一郎が黒火会をまっすぐに見つめた。何の感情も抱かせないあくまで涼やかな目。しかし黒火会はその意図を察知した。

「大神さん、あんたやっぱり隊長じゃないのかい?」

 しかし、黒火会はその言葉を飲み込み、説明に戻った。
「何とか言ったな…。これは技術者の噂だが例の面に装置を施し、細い針を頭にうったことでコントロールに成功したようだ。」

 さくらがうつむき、大神がそれをかばうような仕草をしたのに英爺は気づいた。だが、大半の者は黒火会の語る内情に釘づけとなっていた。

 黒火会は続いて魔操機兵、降魔兵器の状況について話を進めた。陸軍が今もなおこの情報を管理し秘匿している可能性があり、検察も動いているものの、大きな権力の壁に突き当たっているということであった。途中真宮寺大佐の件について入り、夢織に穏やかにたしなめられた櫻嵐も同席して座はひときわ熱気を帯びてきたようであった。

「それより、今日みんなに話したいことは、この事実だ。」黒火会はメモを一同に示した。大神の目が瞬間的に鋭く動いた。
「黒鬼会の重要資料や研究が次々に紛失している?」
「政府や検察、軍の調査班が調査に赴き、存在を確認した資料が次々になくなっているんだ。警備の警官や兵士が襲われ、負傷や死亡した事例もあある。」
「誰かが京極の遺産と意志を継承しようとしているということか。」ミュラーが言った。

「待ってくれ。」イカルスが声を挙げた。
「そっちもそうなのか。実はこちらもそうなのだ。このリストを見てくれ!今かろうじて残りの資料は押さえたのだが、大半の京極関係の考古学・民俗学・歴史資料が紛失しているのだ。」

 傍らの英爺も一緒にリストを出して頷きながら言う。
「生物・地学関係の方もそうです。イカルスの話では政府調査団が組まれたらしいんですが、調査時点ですでにあったはずの資料がなくなっています。また調査団が調査資料として押さえたものも多くが紛失や盗難に遭っていて、これは異常です。おまけに僕たちは今日魔操機兵に襲われました。」

 一同の驚きが波を立てるように広がる。さくらとて例外ではなかった。しかし大神一郎だけが冷静な表情で頷いていた。

 時計の針が九時を指す。ランプの揺らぎがまた新たな事実を紡ぎ出す。新しい珈琲や紅茶が運ばれてきた。今日の浪漫堂別館の夜は長い。



二階堂氏
もしかしたら・・・

こんばんはひでじいさん、二階堂です。
反魂の術で蘇ったのが真之介だったとすれば、ああも簡単に倒されてしまうのも納得できます。
しかし、さすが♪ひでじいさん、次から次へと素晴らしいSSがでてきますね。

それと・・・なんか余計なぷれっしゃーを与えてしまったみたいで、どうも済みません(反省)
でも、ひでじいさんfanの戯言として聞き流して下さると嬉しいです。
こんな私に、今宵の浪漫堂の扉は開くのでしょうか。
それでは失礼します。
二階堂でした。

夢織時代
そんな・・・、そんな・・・
奈落の底に落ちていく?
ハンマーで頭を殴られたよう?
そんな、どうでもよさそうな表現など、彼方に吹き飛んでしまいそうな衝撃を夢織は受けていた。
よろめいたのが一瞬で済んだのは奇跡だろう。
ただ単に、よろめいた先に椅子があったから、床に倒れずに済んだだけだ。

あの、葵叉丹が・・・。
それは、ある程度予想していた。
太正十三年の記録を調べると、どうしてもその結論に行き着くから。
しかし、「彼」の最期が・・・、そんなものだったとは。
黒火会の情報に間違いがあるはずはない。
だが、信じたくはなかった。
夢織がある意味では心ひかれていたと言っても良い、人間として、あまりに哀しい魅力に満ちたその青年のことを。
そして、かすかに安堵していた。
彼が、もうこれ以上、帝撃の敵となることはないだろうと確信して。

話が進んで、鬼王の話になったとき、
英爺がかすかに眉をひそめたのに気がついた。
それは・・・、見ると、さくらの表情がすぐれないような気がした。
まさか・・・。あの、鬼王とは・・・・。

黒火会が語る事実は、そして、それにより引き出される新たな事実は、
夢織が長く抱いてきた疑問のいくつかを氷解させた。

しかし、それに続くイカルスと英爺の報告は、その雪解けを評価する気を止めてくれた。
夢織は、背筋が冷たくなった。

まだ、浪漫堂の誰にも言っていない。
大学で夢織が持っている第一次、第二次降魔戦争の資料と、証拠物件のいくつかが無くなっていると言うこと。
単なる盗難と甘く見ていたが、事態はそんなものではなかったのだ。
夢織が持っている中には、山崎真之介直筆の設計草案の写しすらあるのだ。
真の、霊子甲冑理論。空中戦艦ミカサの秘奥義。
幸いこれは厳重に保管してあり、未だ無事だが、夢織がこれを持っていることすら、
誰にも知られないようにしていたのに。

震える手で、運ばれてきた珈琲を口に運ぶ。
味は、ほとんど感じなかったが、その香りは、動揺する夢織を落ち着かせてくれた。
からまる喉を押さえつつ、夢織はようやく口を開いた。
「私も、報告しなければいけないことがあります・・・」



なんだか、一人で閉じこもってますね・・・。ごめんなさい・・・。

ひでじい
「私も報告しなければならないことがあります。」静かにコーヒーカップを置いて夢織は言った。最初は逡巡していたようだが、カップを置いた段階で決然とした様子で話し始めた。

「みなさんは、私の最近の仕事を御存知でしょう。」
「陸軍対降魔迎撃部隊の組織に関する研究、降魔戦争の実状に関する研究、山崎真之介の果たした業績に関する研究、そして近年出現した謎の帝都防衛部隊「帝國華撃團」に関する研究…。」ミュラーが淀みなく答える。
「そうです。もともと私は近現代史を教える人間でしたが、結果的に今言われた分野を研究することになり、いくつか成果を挙げることもできました。」

 ここで夢織は珈琲を一杯口に含み、喉を潤してから続けた。
「正直に言います。私の研究室から第一級の戦史資料が数点、盗難に遭っています。」
「何!!それは本当なのか!?」全員が腰を上げる。

「今までは紛失かせいぜい金目当ての盗難かと考えていたのです。…いや、それらはまだいい。事実として公表されていませんから。さらにみなさんに申し上げます。研究の過程で手に入れた資料で公表できないもの、すなわち兵器などの高度な安全保障から公表できないもの、事実でありながら学説的に立証しにくいことから手許にある資料を私は持っています。これらがもしその「見えざる敵」に渡ることになったら、と私は恐れているのです。」

「よく言ってくれたな。卿の命の危険性があるにも関わらずよく言ってくれたな。」ミュラーが穏やかに夢織に言った。

「新聞記者としては公開してほしいところだが、これはこの際置いておいて、安全な場所ってどこにあるんだ?このままだったら夢織が訳の分からん奴に命を狙われる可能性があるぞ。」ルドルフはベストを正しながら言った。

 ランプの灯火に半身を照らされながら櫻嵐も言う。「かと言って黒火会の話じゃ政府も陸海軍も検察も警察も、有力者に京極の同志が残ってる可能性があるぞ。新しい見えない敵の息のかかった奴もいるかも知れない。」

「うむ、安全な場所か…。」英爺が呟く。そう、葵叉丹と京極慶吾、この二人の負の遺産を封印する場所が必要なのだ。

「待ってくれ!実は俺も…。」目を見開いてイカルスが口火を切った。全員が振り向く。暗黙のうちに直感したのだ。イカルスにも魔の手が伸びているのか?

 夢織の前の珈琲の黒はとてつもない闇の深淵に思われた。帝撃と魔の戦いではない。我々自身が危地にいる!今まで暖かだったランプの灯が急に頼りないものに見えてきた。ここは浪漫堂別館。見えざる恐怖と全員が戦っていた。

(以下、イカルス編に続く)


 ひでじいです。どうもお早いSSをつけてもらったにも関わらず遅筆ですみません。卓上の恐怖みたいな感じを表現しようとしていますがいかがでしたでしょうか。
 今回の夢織さんはキーパーソンですね。第一級の資料を握る重要人物。何かかっこいいけど本人はきついんでしょうね。夢織さん、話はまだ途中です。さあ、危地の別館をどう乗り越えるのでしょう。乞う御期待!(それでいいのか?) 

イカルス星人氏
私には、英爺に告げていない秘密があった。
それは、政府の調査団が飛鳥の石舞台古墳を調べていた時のことである。
この地には、大きな石でできた亀が方向を変える時、大規模な地殻変動が起きるという伝説が残っている。俗に言う「亀石」の伝説である。
この石は、地下に眠る何かを封じているのではないだろうか。
そして、この石が動く時、それは地脈に大きな乱れが生じる時ではないのか。
そう思った私は、夜間一人でその場所に行き、あたりを調べ始めた。
と、その時。背後に人の気配を感じた私は、振り向きざまにいきなり相手の鳩尾に拳を叩き込んだ。
こう見えても学生時代の教練で体術の一通りくらいはかじってきている。
私はその男の首を締め上げると、耳元で囁いた。
「おい、一体何のつもりだ?誰に頼まれて俺を狙った?何を探ろうとしている?」
その時、ひゅんという音とともに短剣が飛んでくると、寸分の狙い違わず男の喉に命中した。
「これは・・・!」短剣の飛んできた方向には一瞬凄まじい殺気が漂っていた。
が、やがて消えてなくなった。男は当然の如く絶命している。
京極の遺志を継ぐ者が存在するのか。
闇の遺産を受け継いだ何者かが、暗部で蠢いているのか。
あくまで私の憶測に過ぎないし、私が命を狙われたことなどどうでもいいことである。
何もこれ以上徒に場を騒がせることもあるまい。先刻まで私はそう考えていた。
だが、黒火会の話を聞いているうちに、だんだんと考えが変わってきた。
反魂の術で甦らせた二人に対する京極の冷酷な仕打ち。
対降魔部隊に並々ならぬ思い入れのある私にとって、それは許せない事実だった。
また、そうした悲劇が繰り返されるかもしれない。
京極を超える悪が闇の中から姿を現すかもしれない。
そう思うと、私は全てをここで告げた方がいいのではという気になった。

こんばんは、ひでじいさん。いやあ、相変わらずお見事です。
で、こんなレスをつけてますます話をややこしくしてしまいましてすみません。
女性が二人もいる本館の方に心惹かれるイカルス星人でした。
それでは、また。

ひでじい氏
「俺もやられた。飛鳥の亀石だったよ。危なかったよ。」イカルスが話し始めた。一同の顔が青ざめていく。

「叉丹と京極関係の遺跡調査と歴史調査を平行して行っていたときだ。亀石が地殻変動で何かの役割を果たすのではということを京極が調べていた節があることを俺は突き止めた。俺はその証拠をつかむ調査で何者かに狙われた。何とかそいつを取り押さえたのだが、そいつは何者かの投げた短剣で死んだよ。しかしいたい奴らは何者なんだ。京極の残党か、それとも新たな敵か?」

 しかし、その問いかけに答える者は誰一人としていなかった。

「夢織、イカルス、ひでじいまでがか。私だけなら構わないと伏せてあったのだが。」
「ミュラーさんもか?」
「夢織ほど深刻ではないが分野的には一番私が関わりが深い。何点か資料をやられたよ。」

「偉い人がいっぱいいるのに何とかならんのか。こういうもやもやは早く何とかしたいな。」黒火会も焦りの色を隠せない。そのときである。

「あ、あの…。」遠慮がちな声が響いた。思いがけないところからである。声の主はなんと真宮寺さくらであった。

「あ、あの私たちの劇場の米田支配人に御相談されてはいかがでしょうか。」
「さくらくん。俺もそう思っていたよ。みなさん、米田支配人に御相談されてはいかがでしょう。」大神一郎も賛同した。
「米田支配人なら中将ですし、こういう方面に明るいと思います。資料の保管やみなさんのことも相談に乗ってくれるはずです。ぜひ米田支配人に御相談されてはいかがでしょう。」

 普通の人ならここで頭をひねるに違いない。なぜ帝劇の支配人に相談するのか?しかしここにいる一同には瞬時に理解できた。確かに米田中将は陸軍出身で安全と機密の保持にも明るいだろう。だがそれだけではない。今帝劇=帝撃説が太正浪漫堂の一部で流れている今、米田支配人はひょっとすると帝撃に近い人かも知れない。今の帝都でもっとも安全な場所。それは「帝撃」である。

 ミュラーがさくらと大神に感謝を述べる。
「ありがとう。大神さん、さくらさん。早速今の話を明日にでも米田さんにお願いに行くことにする。夢織、卿も同道してもらえるな。」
「ええ、喜んで。…、それから私は少し本館の方へ行ってきますよ。南國一人では手を焼いているでしょう。何せ噂の大神一郎中尉と帝劇女優の真宮寺さくらさんがいらっしゃっていますからね。」

「しかしそれはまずいんじゃないでしょうか。」櫻嵐が危惧するのも無理はない。出された情報の希少性もさることながら、仲間の命が危ういとなれば心中は穏やかではなくなり無用の心配をさせることにならないのか。しかし夢織は笑って言った。

「彼らは我々の大切な仲間じゃないですか。情報は正確に、そして簡潔に伝えること。これは政治の基本でもあると思いますが。」

 シュペーアが苦笑した。「そのとおり。」

「じゃあ、最初は俺たちの報告から行こう。英爺も意見を述べてくれ。」イカルスと英爺は早速調査結果を箱から引き出し遺跡分布図や地質図を広げた。米田支配人を活路として、沈滞したムードを一掃した別館は俄然作戦司令室のような活況を呈してきた。

「エスプレッソだ。濃いのを頼む!」一同は見えない敵に立ち向かう気概に溢れていた。

 一方、一時退出した夢織は本館へ向かう。「さあ、どう話すかなんですが。しかし夢織もまた気概に溢れていた。言葉とは裏腹にその足取りは着実に本館を目指した。

 そして途中で別館を振り返った。「大神さん、やはりあなたは。」

 ひでじいです。イカルスさんと夢織さんに刺激されてこんなものを書いてしまいました。さあ、どうなっちゃうんでしょうね。闇を吹き払った別館、様々な思惑の飛び交う本館、今度は立場逆転かな。そして夢織さんが向かいます。

桜嵐氏
それまで場の議論を傍観していた桜嵐が、突如語り始めた。

「これまでの議論を聞いていると・・・どうしても納得できない所がある。」

何だ何だと、周りの視線が一気に集まる。

「私は真宮寺大佐の物語を書くため、彼に少しでも関わりのありそうな人物は根こそぎ調べ上げてきた。京極もその1人だ。」
「それで、結果は・・・?」

シュペーアの相槌を受け、桜嵐はそのまま語りを続けた。

「京極は、皆が思っている様な・・・俗に言う独裁者とは若干性質が異なるのだ。奴は日本や世界の征服を望んでいたわけではない・・・これは
私の推測だが、今ある社会そのものの破壊こそが奴の目的だったのではないだろうか?」
「馬鹿な・・・!」

 英爺が”考えられない”といった様子で頭を振る。

「黒之巣会の様に、制度を変えるというのならまだしも・・・破壊して、その後の一体何を支配しようというのかね?」

 ルドルフも、とても賛同できないといった雰囲気である。他の者も、おおむね反応は同じであった。ただ1人・・・大神一郎を除いては。

「あくまで推測だから・・・だが考えてもみてくれ。先の戦いで帝国華撃団は、ほとんど全ての戦闘に勝利していたにも関わらず、武蔵の復活を
許してしまった。それはつまり、京極が華撃団の想像を超える戦略的能力を有していたということだ。」
「ふぅむ・・・。」

 夢織の口から、溜息とも取れるつぶやきがこぼれる。

「私は決めつけるつもりはない。だが、それは皆も同じことだ。既に動きつつある新たな敵の戦略を、我々の常識の範囲内で限定してしまって
は・・・京極の時の二の舞だ。」

 桜嵐の話は、事態をなにか進展させたわけではない。
 ただ、皆の気持ちを引き締める・・・そんな役割だけは、何とか果たせたようであった。

*******************************************************************************

例によって、多くの皆さんのお名前をお借りいたしました。ご容赦下さい。
今回は、何とかリアルタイムに間にあった桜嵐でした。(ひでじいさん、無理矢理桜嵐の名前を入れ込んで下さって、感謝です!)

ひでじい氏
「新世界の創造…。」夢織のつぶやきが周辺に漏れる。
「インド神話のシヴァのつもりか。京極は。」ミュラーも腕を組む。

「しかし京極とその支持者とて人。生産組織である人間社会を壊せば自らも危ういのではないでか。」英爺がその恐怖のシナリオを否定するようにかろうじて抗弁する。

「いや、全ての生物を破壊する訳でもなく人間全てを根絶やしにするという訳でもない。現在の国家組織や軍隊を壊滅させ、人間社会を崩壊させる。」黒火会が話を続ける。

「そしてわずかに残った人間を隷属させ、新たな生態系の頂点に自分と自分が従える者、そして降魔が立つ。もはや単なる国家内や国家間の戦争ではないということか。武蔵はそのための究極の兵器か。」ルドルフが話を黒火会の話を引き取った。

 新たなる敵に立ち向かうためにはどうしても京極の負の遺産を知る必要がある。席上のものは否応なくその事実を知っていた。

「京極の果たせなかった野望についてもう一度認識しておかなくてはならない。」櫻嵐の面上には稟とした表情が浮かんでいた。

 ひでじいです。確かに一理ある。京極の意志は新たなる世界の頂点。世界征服より一段上だったのでしょうね。そのためには科学・呪術・歴史と何でも問わず片っ端から試していったのでしょう。あの実力を誇る黒鬼会すら陽動に過ぎなかった事実。うーん、奴は恐ろしい。

ひでじい氏
太正浪漫堂3本館(SS)

 南國には珈琲の香がかすかに憂いを帯びるような気がしてならなかった。しかしさすがは二階堂、勘は鋭い。南國は苦笑した。アメリカ帰りには敵わないなあ。

「南國さん、どうします。我々も行ってみませんか。」
「ふむ。」
「南國さん!!」

 珈琲を空にして、今度はミルクティーを頼むと南國は二階堂に振り返って言った。
「二階堂、お前の気持ちはよく分かる。私もそうしたい。だけどたくさんが押し寄せても仕方がないことだ。なあに、向こうにはミュラーと夢織がいるんだ。聞きたいことは後で教えてくれる。それよりも我々にできることをしようじゃないか。」

「我々に、できること、ですか?」
「お前も私も帝國歌劇團が帝國華撃團じゃないか、って大活劇みたいな事実を期待している。だけど、もしそうだとしたらどうする?」
「どうするって…。」

 南國はミルクティーをすすりながら二階堂に言う。
「今向こうに集まってる連中はそれぞれに才能を生かして貢献してるんだよ。もし歌劇團が華撃團だったら我々はどうするんだ?我々は歌劇團のためにいい脚本を書いて、歌劇團の人々を輝かせ、帝都の人々に夢と希望を与えることが貢献とは思わないか?」
「そりゃそうだけど。」
「だったら、お前もそこの珈琲を飲んでそこの原稿に書いて見ろ!エンジニア生活で自慢の物語の腕も錆びついたか?」
「なるほど。適材適所と言うわけですね。」二階堂はにっこり笑ってペンを取った。

「そういうことでこそこそしてたんですかあ!」不意に声がするので横を見るとエズミがいる。
「ずるいですよ。そんなところで内緒話は。」
「い、いやそういうことではないんだ。これは成り行き上…。」

「成り行きではちょっと納まらないだろう?二階堂。」紀州人が二階堂の後ろから手を回す。
「そうだな。」智士とBAT、MOSも集まってきた。

「いずれにしても別館の会が終われば聞けばいい。今は私たちにしかできないことをしよう。」
南國が助け船を出した。

「南國さんのいうとおりだ。帝劇をみんなで盛り立てることが俺たちの仕事だし、夢でもある。」智士が言い、紀州人も大きく頷く。
「うーん、仕方がない。きょうは私のおごりだ。シチューでも食べよう。」
「賛成!!」

 心の中では、本当は私自体が行きたいんだがね、と思いつつ、南國は、夢織さんが後は何とかしてくれるだろう、しかしここの代金は向こうの奴らにも払ってもらうぞ、などと茶目っ気を出して考えていた。

 そこに見かけない顔の青年が一人。

「すみません。ここで帝劇の好きな脚本家さんたちが集まってるということを聞いたんですが。」
「失礼ですがお名前は?」紀州人が尋ねる。
「花丸、っていいます。少しは書けると自分では思ってますので、よろしく御指導ください。」
「まあ、そう堅くならずに。まずは帝劇のメンバーの魅力から入ろう。」智士はその青年に暖かい珈琲を持たせ、席に座らせた。
「さあ、南國さん、早く座りましょうよ。」エズミが催促する。

「ああ、今行くよ。」南國は二階堂とともに席を大テーブルの方に移した。

「しかしせめて夢織さんとは言わずとも、イカルスか英爺くらいは回してほしかったなあ。私一人で好奇心溢れる彼らをどこまでなだめられるんだろうか。」移る途中、南國は独り言を言いながらシチューの待つテーブルに向かった。

 煉瓦造りの太正浪漫堂本店はあくまでも暖かに人をもてなしてくれる。珈琲の抜群の香を持って。そして紅茶の繊細な香を持って。
 そして外には月が上がる。白い光を放って夜の浪漫堂を照らしていくばかりである。

 ちょっと大きすぎたので別館編と本館編に分けて書きました。合流させようと企んでいるんですが果たしてうまくいきますかどうか。
 実は本館の方が居心地がよさそうだなと思っているひでじいでした。

MOS氏
「あ、そう言えば一つ気になる事があるんですよ。」
MOSが切り出したのは彼がシチューを3/4程食べた辺りだった。彼曰く、この日は執筆にかかりっきりで、朝から飲まず食わずだったと言う。そのせいか、彼の皿は随分減りが早かった。本人は「小食なんですよ」と言うが、真実はどのようなものか。
「ん?」紀州人がふとMOSの方を見やる。
「帝劇の通路脇にある大きなゴミ捨て場・・・洋風に言うと、確か・・・ダストシュート、って言ったかな、それなんですが、何でも重大な設計ミスが発見されたとかで使用禁止になっているそうなんですよ。」
「ああ、それなら俺も知っているよ。だがそれが一体?」
南國が疑問をもらす。
「建築に詳しい訳ではありませんが、あの建物が東洋でも1・2を争う名建築だ、と言う事は僕にも分かります。当然、設計も慎重に慎重を重ねた筈ですし・・・」
「ふむ・・・」
紀州人も興味を持ったようだ。
「そこで考えたのですが・・・、もしあのダストシュートが、「帝劇=帝撃」説を裏付けるものだとしたら。」
「じゃあ、あのダストシュートは、帝撃に何か関係あると?」
エズミが驚いてMOSに訊ねる。
「帝劇の通路に存在する謎のダストシュート。もしかしたら、あれこそ帝撃への入り口かも知れませんね・・・。」
MOSは少し大仰に話を振って見せた。
「しかし、君はそう言い切れるだけの根拠はあるのかい?」
そう言ったのは二階堂である。
「まさか。活劇書き志望者の突飛な想像ですよ。」
そういってMOSはいたずらっぽく笑った。



をいをい、何か私、自分を美化120%してないかい?(滅)。
こんばんわ、ひでじいさん。他の方へのレスに出して頂いて、有り難うございます。別館では何やら重大な会議が始まったようですが、こちらは他愛もない話で盛り上がってる、って事で。しかし、他の方の描写が少な目で、お前実はナルシストじゃないかって言われてもこれでは反論できない(爆)。それでは、今宵はここまでと言う事で、おやすみなさいませ。

紀州人氏
「そういえば、面白い噂を聞いた事がある。」
紀州人の前のシチューの皿はとっくに空になっている。外見はかなり痩せているにもかかわらず、
かなりの大食いという事だ。
「噂?」MOSが聞き返す。
「蒸気演算機、って聞いた事あるかい? まあ要は大掛かりな計算機なんだが、帝劇には、日本でも
 有数の大型演算機が設置されているらしい。劇場には不釣合いなくらい、ね」
「君はどこでそんな事を聞いてきたんだ?」
南国も疑問なようだ。そして、この場にいる全員がそう思ったことであろう。
「蛇の道は蛇、さ。俺の副業だよ。なにせ俺のもの書きとしての才能じゃ、とてもそれだけでは
 やっていけないからね、少々演算機が使えるのでそっちの仕事をしているんだ。そこでそういう
 話を聞いたんだ。あくまで噂には違いないけど、火の無いところに...だろ?」
「しかし、劇場の図面は見た事がある。そんな大きな演算機が置かれるべき場所はなかった
 ように見えるが....?」
さすがに元々エンジニアだけあって二階堂の指摘は鋭い。
「そう、そこが疑問なんだよなあ.....あんなバカでかい物を置くだけの場所はどこにも
 無いようだし、うーん....」
再び考え込む紀州人。そしてそれぞれ思索を巡らす面々がそこにいた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
それじゃ私もMOSさんに続いて(笑)。
私もここになんか気の利いた事を書きたかったのですが、イマイチ自信が無くて....
で、こういうムリヤリな内容になりました。私も自己中心的....(滅)
ちなみに、プログラマは、現実世界での私の本業です(笑)。それでは♪

智士氏
「実はボクも、面白い話を耳にしたんだが」
 突然智士が人の悪い笑みを浮かべながら切り出した。
「何だ?また怪しい話か?」
 二階堂は胡乱げな目で智士を見るが、当の智士はお構い無しに話を続けた。
「帝撃の幽霊列車の話さ」
「また、智士さんはそう言う話が好きですね」
 エズミが食後のデザートを口に運びながらチャチャを入れた。
「また、幽霊列車とは怪しい話だな」
 南国はまた新しいネタを見つけたと言わんばかりに身を乗り出した。
「帝都地下計画があるのは知っていると思うけど、試験的に地下鉄を
走らせようと今、新橋付近で工事をしているのは知ってるかい?」
「ああ、それは聞いた事がある」
 紀州人が相づちを入れた。
「その工事現場の人間から聞いた話なんだけどね、何でも銀座方面から
物凄い轟音が響いてくるらしいんだが、どうも列車が駆け抜ける音の
様だと言うんだよ。それも彼らが工事をしている更に地下から。
音はすれども姿は見えずってところらしい。
 しかも、偶然かどうかそれは帝国華撃団が現れる日に聞こえる事が
多い事から、帝撃の幽霊列車と呼ばれているらしいんだ」
 自慢気に語る智士の言葉に皆一様に顔を見合わせる。
「今度は随分と信憑性の高い話だね」
 MOSが唸りを上げながら考え込む仕種を見せる。
「聞いた人間の体験談だからね」
「まったく智士はこの手の話に事欠かないものだな」
 南国は少しあきれたような顔をしながらも、その実次の脚本に使えないかと
既に思案に入っているようだった。

***************************************
すみませーん。ちょっと私も参加させていただきたくて、割り込み入れて
しまいました。
そして、紀州人さん、二階堂さん、MOSさん、エズミさん、南国さんへ。
勝手にお名前を使わせていただいた上に敬称を略させていただきました事、
重ねてお詫び致します。
どうか、お気を悪くされないで下さい。
紀州人さん、どうもお仲間の職業のようですね。私もコンピューター業が
本業です(テレ)
それでは、失礼します。

エズミ氏
「しかしなんだか気になりますねえ」
熱いシチューを啜りながら、エズミは南國を見上げた。
何やら今日の浪漫堂はざわついている。
別館にあるただごとならぬ気配と人物たち。
珈琲と紅茶、ささやかな晩餐。それらの暖かい香りに満ちたこの本館にいながらも、別館のただならぬ熱気は、ランプの光のようにじりじりとこち
らへも伝わってくる。

「なにがだ?」と、南國。
わかってるくせに・・。エズミは湯気の向こうの智士に向かって肩をすくめてみせた。
南國は素知らぬ顔を決め込んでいる。
「2人で内緒話なんかして・・。あやしいんだからなあ」
「しつこいよ、おまえは」
がつがつとシチューを啜り込みながら、紀州人がエズミを上目遣いでにらむ。
「さっきの南國の話を聞いてなかったのか?俺たちは俺たちにできることをやるんだ。帝国歌劇団が、帝劇だろうと帝撃だろうと俺たちのすること
はただ一つ。書くだけさ」
「そうそう、ペンは剣より強いってね」
と、智士。

頷く面々。知りたい気持ちはみな同じなのだ。所在なげににんじんをつつくBATも、猫舌のためいまだにシチューに手をつけないMOSも、スプ
ーンをくわえてぼんやり物思いにふける二階堂も。
花丸は面々の様子をうかがいながらきょとんとした顔をしている。
「ま、確かに」
エズミはあっさり引き下がると、食べ終わったシチューの皿を置いて立ち上がった。
「それじゃ、私もできることをするとしますか。締め切りも近いことですしね・・。
あ、失礼。アールグレイをいただけますか?アイスで」
ウェイトレスに申し付けるとにっこり笑って一同に会釈する。
月の光が射し込む浪漫堂のテラスで書く原稿と言うのも乙なものだろう。

「すすんでるのか?例のイリス嬢主演の脚本(ホン)は」
すっかり食べ終わった紀州人がエズミに尋ねる。
「あはは、痛い所をつかれちゃいました。実はさっぱりです」
能天気なエズミにMOSは呆れた顔をする。
「こんな所で油を売ってる場合なのか?」
「まったく持ってその通りです。締め切りも近いことですし、私はペンを持って真実を探るとしますか・・。南國さん、シチューご馳走様でした。人に
おごってもらうシチューの味は格別ですね」
笑って頷く南國。どうも何かを知っているみたいだわ・・。

エズミは愛用の万年筆をたもとから取り出すと、月の光に満ちたテラスへと歩いていった。


すいません!!また書いてしまいました。
なんだか面白くって。(爆)
壮大な別館とは別になんだかほのぼのとした本館にいられてエズミは幸せ者です。

勝手に名前を書かせていただいた方、申し訳ありませんでした!
「俺こんなんちゃうでー」ってツッコミはエズミの方まで。(爆)
しかし自分自身のキャラが一番書きやすいかも。
なんかこんな(えせ)ウィットにきいた会話を交わし合う自分自身に寒さを感じるエズミです。

さてさて、お話の方ですが、なにやらきな臭くなってきましたね。
歌劇団が華撃団だった。この真実を軸にして事件が展開して行くのでしょうか。
本館的には(笑)目撃者南國氏の動向が非常に気になります。
合流・・。できたら嬉しいなあ。(^ ^)

これだけイメージを広げる、あるいは限定してしまう多大なレスがついたら店主のひでじいさんは本当に大変だろうと思います。
だけどひでじいさんの手腕ならきっとみんなを粋に纏め上げていってくれるのでしょう。
たのみました、マスター。(笑)

ではでは、失礼いたします。

ひでじい氏
「う〜ん、アイデアはあるんだけどつながらないなあ。」

 机上に置かれた橙色の光を放つランプ、庭に咲く櫻花、座り心地のいい椅子。月。そして執筆時にみんなが飲む暖かいエスプレッソ…。
 メモやエピソードはほとんど仕上がっているし、後は全体的なストーリーを決めればいいのだが、そこが決まらない。オーケストラに例えるとプレイヤーは揃ったが指揮者がいない、というところか。

「これではシンフォニーは始まらないわね。」後一歩のところがぴりっとしないエズミは、また原稿を丸めてしまった。

 気が散っている原因は分かっている。別館に、今浪漫堂で一番話題になっている大神一郎中尉と真宮寺さくら嬢が来ているのだ。おまけに噂のジャーナリスト、黒火会氏もいる。エズミとしては興味津々である。

「でも、あの人たちで大丈夫かしら。」エズミは少し笑ってしまう。ここの芝生で首をひねって評論を書いているイカルスや、ロマンチックな恋愛詩を照れながら書いているひでじいがどう大神中尉やミュラー、夢織、ルドルフに説明するのか、とても想像できないからだ。

 ペンを休めるとエズミは水出し珈琲を飲んだ。柔らかい風味で休憩する際にはくせがないこの珈琲が一番だ。本当にくつろげる場所だ。これで風呂と寝室がついていれば、もうここから出られないな、などと思ってしまう。第一建物が凝っていて飽きさせないのだ。彫刻や調度、生花に至るまで、かなりのこだわりが感じられる。太正とは洋の東西や年代を問わず、粋なものを取りそろえる時代。浪漫堂はその筆頭かも知れないのだ。

「エズミさん、はかどってるの?」エズミを訪ねて来た声の主は分かっている。南國だ。

 南國の評価は高く、浪漫堂では随一との評価も高い。寸劇からオペラの脚本まで、喜劇から悲劇、古代から現代…。そんな南國が訪ねてきたのだ。どうやら今度の脚本が気になるようだ。

「後少しがまとまらないんですよ。」書き殴りのデッサンを見せながらエズミは南國に説明した。

「気分は別館のようだな。きょうは仕方ないなあ。私自体がそうだからね。筆が乱れるんだ。」
「南國さんもそうなんですか。」エズミは南國もそうだと知って少々安心した。

 その南國の話が突然止まった。南國はテラス横の渡り廊下から別館を見つめている。一人の男が歩いてくる。月明かりが突然彼を照らす。穏和な表情、袴を着た書生のような出で立ち。

「夢織さん。」

 月明かりとランプのさす渡り廊下をこちらに歩いてくるそのすがたは夢織だった。

「何かが、何かがあったのね。」

 一陣の風が舞う。浪漫堂本店にも灯がともされようとしていた。

 ひでじい@もう寝ようです。宵にまかせてこんなものを書いてしまいました。お目通しいただければ幸いです。エズミさん。





花丸氏
予想以上の暖かい出迎えに、花丸は深い充足感を感じていた。
とうとう、憧れの場に自分は加われたのだ・・・それは、間違いなく自分が彼らにとって特別興味を引く存在であったからでは無いことは十分承知
していた。
そう、すべからくこの浪漫堂の住人達は、どの様な者であれ掛けられた声に対しては必ず暖かい言葉で迎えてくれる事は解っていた事なの
だ。
だが、それを踏まえてもなお心に染み入る手厚いもてなしと、その場へやっと踏み出すことの出来た自分に対して満ち足りた物を感じるのだっ
た。

だがそんな想いも束の間、胸を満たしていた充足感はすぐに好奇心に取って代わられる。
南國氏、エズミ氏、紀州人氏、智士氏、MOS氏、BAT嬢。
常日頃快刀乱麻を断つ、を地で行くような弁舌をふるう諸氏が、今この場に限ってまるで互いに謎解きを楽しむが如く実に遠回しな会話をしてい
る。
ダストシュート?蒸気演算機?帝劇は帝劇で当たり前ではないのか?
そんな疑問は、旧知の仲である二階堂を見て、たちどころに確信へと変わった。
あやつが物を銜えながら考え込むときは、必ず何かが起こる前触れなのだ・・・。
なるほど、今宵は「事実は小説よりも奇なり」を地でいけるかもしれぬ。

とりあえずはエスプレッソを二杯目に、だな。
花丸は智士氏に先ほど手渡された珈琲を飲み干すと、オーダーを言いつけるべくウェイトレスに合図を送ろうとして思い直した。

いや、その前に。

まず今この時この瞬間に浪漫堂に居れる事を、運命の神に感謝しよう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
あとがき、らしき物。

自分を快く迎え入れてくれた、ひでじいさん、智士さん、そして全ての皆さんに感謝します。
気持ちは、ひでじいさんが書かれた自分と同じ思いです。これから頑張りますので、よろしくお願いします。
とはいえ、上記の独りよがりなSSが、少しでもストーリーを構成する糸に絡めるのでしょうか?とても心配です。
「ここはこうした方が」とか、「これはこうじゃないと」等見受けられましたら是非ご意見して頂きたいと思っています。
何時か、自分の力で作り上げたSSをお目に掛けたいです。
稚拙な文章に、最後まで目を通して頂いて有り難うございました。

追伸・2Fへ。
またネタに使ってしまった。しかも今度はあやつ呼ばわり。
チャットで会ったらちゃんと謝るから許してね〜、その時は、おいらを犬呼ばわりしていいから。(笑)

それでは、失礼いたします。またお目に掛かるときまで・・・。

ひでじい氏
「花丸、花丸、何を考え込んでいるんだ。」

 遠くから声がする。深い感慨とエスプレッソの海に沈んでいた花丸はその声でランプの光の待つ浪漫堂に還ってきた。

「あ、ああ二階堂か。」
「ああじゃない。俺を訪ねてきたんだろう。」
「そ、そうだったな。」
「さては俺の帰国をだしに浪漫堂に来たな。ついにお前も帝劇でデビューだったな。」

 そう、何回かの投稿、オーディション、コンクールを経てようやくここにたどり着いた花丸もまた若くして希有な文才を持つ者だった。しかしその彼にとっても今度の歌劇が初舞台の脚本となる。

「しかしもっと野郎ばかりと思ったが、女性も結構いるんだな。」
「当たり前だろ。今は太正だ。まだまだ厳しいだろうが女性も能力があれば世に出る時代かもしれないぞ。」

 二階堂はくるりと振り返り、リボンタイを揺らせて説明を始めた。

「例えば有名なのは外で南國さんと話しているエズミさん、あの人は紀州人さんや武臨さん、真神 樹さんと並ぶトップクラスの人だ。あ、それから紀州人さんや智士さん、MOSと話をしているBATさんは今日来たんだが、もともと現代詩の人ですごい異能の人だ。俺たちもうかうかできんぞ。」

「なるほど、過去の経歴は捨てないといけない、ということか。」

「あとはいろんな学者や芸術家、新聞記者が来る。花組の人々はその代表だが、その他、オーケストラやバレエの人。学者さんは文人を兼ねてる人が多いから知っているだろう。」

「ミュラー助教授、夢織さん、イカルスさん、英爺さんか。新聞記者ならルドルフ氏。黒火会氏というところだな。」花丸はメモに書き込みながら、

「しかし単なるファンクラブと思ったがこいつは大変なところだなあ。」と二階堂に言った。

「本当だと、もっとにぎやかなんが、今日はスペシャルゲストがお見えなんでな。みんないまいちそわそわしてるんだ。」

「なるほど。大神中尉だな。」

 しかし、浪漫堂もようやく落ち着きを取り戻してきた。一時は立席で珈琲を飲んでいたのが、今は比較的ゆっくりできる。それでもエズミや南國らはさらにゆとりを求め、暖かくなった外のテラスに出て、ランプを灯し、珈琲を堪能しながら脚本や小説を書くのだ。

「これはすごいところに来た。」花丸の気分は高揚してきた。きっと今日は、そして明日もいいことがあるに違いない。そんな感じが珈琲の香とともに匂い立ってくる感じがした。

 ひでじいです。珈琲と紅茶の薫る太正浪漫堂へようこそ。さあ、ここであなたの文才を奮ってください。

 と言いながら僕の方が遅れてるんですよね。何とかしなきゃあ。

南国華撃団氏
「ダストシュートの設計ミスにどでかい蒸気演算機、それと幽霊列車か...」
南国は一通り皆の意見を聞いたあと、無意識にテーブルの上に置かれた原稿用紙にサラサラと劇場にまつわる謎を書き留めていた。

「おいおい南国、お前が言ったから俺達は文才を生かして脚本に打ち込む事にしたのに、お前自身が帝劇すなわち帝撃論を気にしてどうする?」
南国の隣に座っていた紀州人が、彼の原稿を覗き見て苦笑した。

「やっぱり南国さんも気になるんでしょ?」
向かい側でにこにこ顔のBAT女史が嬉しそうに話した。

「まあ、気にしない...といえば嘘になるかな...」
南国は少しはにかみながら目の前の原稿をクシャクシャと丸めた。

「確かに別館の方はただならぬ気配だな....。」
智士は窓の外に見える別館の建物の明かりをぼんやりと眺めながらも、口とフォークだけは動き続けている。

「それはそうでしょう、なにしろ集まっている方々がまた凄い、地質学者、考古学者、軍研究者、黒鬼会専門家、社会情勢専門紙の記者ときている、まあ間違いなく人為的設定を除いてこの顔ぶれが集まれるのはこの太正浪漫堂だけだな。」

紀州人はすこし薄笑いを浮かべて智士の視線の先に自分の視線を重ねている。

「どうしたのです、南国さん?」
エスプレッソを美味そうに口に運んでいた花丸が怪訝そうに南国に声をかけた。

「ん?」
花丸の声に、大テーブルに座っている一同皆が南国に視線を集める。

南国は何かを思案しているようであった、そう、思案しながら目の前の伽誹カップにスプーンを突っ込み、ゆっくりと回していた。


浪漫堂の壁掛けランプの明かりが柔らかくテーブルを照らしている。

「南国さん?」
智士の言葉に南国はゆっくりと口を開いた。

「いやね...我々物書きは物を書くことが大切だと言ったが...まあ確かにそうなんだが、それぞれ物書きとしての領分を超えるような情報を持ちより、我々らしい討論が盛り上がるのもそんなに悪い物でもないかな...そう思ってね。」

南国の話に誰一人言葉を返す者はいなかった。
皆ただ肯いているだけだ、そう、本当に満足そうに。

「ここで出た話し、そう俺達物書きが帝劇が好きだという気持ちだけで集めた様々な情報...それを別館(むこう)の連中は気づいているのかな?」
紀州人が悪戯っぽく話し出した。

「さあ、よくは分からないがまあ、向こうは専門家の集まりだ、しっかりそこら辺の情報は持ち寄っているんじゃないのか?」
少し考えて智士は紀州人に答えた。
相変わらずフランクフルトを口に運ぶスピードは落ちていない。

「そうかしら、文士の私達が集めたこの話が、まだ向こうの人達も知らない事だとしたら結構痛快じゃない?」
BAT女史は、どうやらそうあってほしいと思っているようだ、その満面の笑顔を見ればすぐに分かる。

「さて...」

ゆっくりと席を立ち上がる南国に紀州人が声をかける。

「あれ、南国さんどちらへ?」

南国はその言葉にゆっくりと振り向くと笑顔で答えた。
「テラスのエズミ嬢の執筆具合を観察にさ、なにしろ次回の花組公演の脚本を争っている身でね。」

「ああ、それなら私も!今回の公演こそは彼女に負けられないんですよ。」

「まあ、多分見せてはくれないでしょうがね。」
テーブルの智士は笑いながら二人のやり取りを見ていた。

「当たって砕けろさ。」
軽くウインクをしてみせた南国は月明かり差し込むテラスへと歩を進めた。

置いてけぼりを食らった紀州人は、どっかと椅子に腰掛ける。
やがて思い出したかのように鞄の中から真新しい原稿用紙をとりだし慌てて脚本をかき出した。

「あら、紀州人さんは今から書きあげるのですか?」
BAT女史の言葉にテーブルは笑いに包まれる。

太正浪漫堂の夜はまだ続いていく.....


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
うわっちゃあ、こんな文章でいいのでしょうか?
しかも俺はテラスに何しに行くんだ?(^-^;)

というわけで、このレスに登場した方々、勝手にお名前を拝借いたしまして済みませんでした。

今日の合い言葉「文士は文士らしくね♪」
という感じですかね?

太正浪漫堂の別館の方は白熱した論議を重ねていますね。
それに比べてこちらのほんわかな事(笑)
でも自分はこっちの方が好きです。

というわけで、こんな私を、しかも結構デカデカと出演させて頂いて英爺さんに大感謝です!
さあ、みんな、我々は我々にしか出来ない事をしようじゃないか!(爆)

とっても楽しくてしょうがない南国華撃団でした〜♪


ひでじい氏
 カフェオレを片手に、エズミの次回の公演用台本の話をしていた南國は別館から石畳の上を歩いてくる影を見つけた。やがて本館のランプの暖かい色がその人物を染め上げていく。袴をはいた若い書生姿はみんなのよく知っている男のそれであった。

 南國はいささか緊張していたが、やがて笑顔を浮かべて夢織に話しかけた。

「夢織、終わったのか。」

 ランプに最後に顔が照らし出された夢織はにこやかな笑みを南國に返した。

「ええ、だいたいのところは終わりました。今はイカルスさんと英爺さんがこの前の調査結果の説明をしています。」
「調査結果?あの政府の京極関係の調査結果かのことか!」

 しかし夢織の回答を南國は聞けなくなってしまった。

「あ、夢織さん!!どうなったんですか。」エズミがペンを放り出して駆け寄る。
「何!!」「夢織さんが帰ってきたって?」原稿に向かっていた紀州人と智士もやってきた。
「夢織さん、話してくださいよ!」二階堂、花丸、BATも集まる。

「まあ、待て。みんな。一気に聞いても夢織は答えられないよ。南國、苦労してるようだな。」
 テラス入口からいい声が響く。質問しようとしていた者たちが一斉に声の主を見た。

「遅れてすまん、夢織、南國。かとおおお、対外折衝を終えてただいま帰還。」紺の背広をスマートに着こなした外務省書記官、かとおおおの姿がそこに立っていた。

「こういうときにはそれらしくしないとな。」かとおおおは浪漫堂にぎりぎりで来られたのがよほど嬉しかったのだろう。店のスタッフや浪漫堂の常連を指揮して急こしらえの記者会見席を設けた。

「珈琲とフルーツ付け合わせは私の奢りだ。じゃあ夢織君、まずは簡単な話の報告をしてもらおうか。」かとおおおが芝居がかって言う。

「分かりました。まず質問を受ける前に別館でのだいたいの状況についてお話ししておきましょう。」

 夢織が穏やかに経緯を話し始める。別館の熱気が本館に伝わろうとしていた。背中で舞うは花吹雪。浪漫堂の夜は終わらない。

 さあ、大御所かとおおおさんが帰ってきました。紺のスーツをぱりっと着こなす外交官。かっこいいですねえ。いかにも熱い外交官って感じがします。さてこの後どうなるんだろう。浪漫堂の珈琲を僕もいただきましょう。

二階堂氏
「・・・あれ?皆は?」
二階堂はくわえていたスプーンを手に取りながらキョトンとMOSに尋ねた。

「は?・・・智士さん達なら今、エズミ嬢の御機嫌伺いにテラスに行ったじゃないですか?」
怪訝そうに答えるMOS。

「あれ?そうだったけ?」
「おいおい、しっかりしろよ二階堂!」
「あれ?花丸じゃないか!・・・久しぶりだな〜」
まるでたった今その事に気づいたかのようにスプーンで挨拶する二階堂に、花丸は思わず持っていた二杯目のエスプレッソを落としそうにな
る。

「さ、さっき挨拶しただろー!」
「え・・・はは、すまないね。」
恥ずかしそうに頭をかく二階堂。その様子は皆の笑いを誘う。

「心は別館に在りき・・というところですね。」
紀州人は書き始めたばかりの原稿の手を止めて、来たばかりの珈琲の香りを楽しむ。
「え?!いや、蒸気演算機の設置場所のことなんか・・・あ。」
慌てて誤魔化そうとした二階堂だったが、語るに落ちた。
「やっぱりね。」
BATはにっこりと、だがほんの少し意地の悪い笑みを浮かべる。

「ふふっ・・な〜んて、かく言う私も二階堂さんと一緒なんですけどね。」
「そうそう、人の心は自由の空を羽ばたく・・・おかげで原稿が進まないけど。」
紀州人は苦笑しながら、まだほとんど白い原稿用紙を、ひらひらと振ってみせた。

「きっとテラスの方でも帝劇の話で盛り上がってるんじゃないかな?」
「違いない!」
花丸の一言に皆、一様に賛同の意を示した。
そして、また帝劇の話に花が咲く。

そんな談笑する一同を新たな珈琲の香りが再び包んでいく。
今宵もまた素晴らしい浪漫堂の時がゆっくりと更けていくようだ。

どもども、ひでじいさん。
ホっとしている二階堂です、えへへ(^^;)
だんだん大きくなっていく浪漫堂・・・いつの日か別館の諸先輩方にお会いできることを願ってます。
それから、勝手に名前を使わせていただきました皆様、ここでお詫び申し上げます。
ではまた。
居心地の良い本館でくつろぐ二階堂でした。





浪漫堂再録書庫に戻る。