思い出の有楽町帝撃通信局
椿ちゃんの一日

 サクラ大戦帝撃通信局Fromお台場、第12話より

近づいてくる軽やかな足音
扉の開く音
椿 おっはよーございまーす!あれ?誰もいないのかな?
黒子: いやいや、ここにいるよ、椿ちゃん。
椿 は、やだ、いたんですか?黒子さんって真っ黒だからわかんなかったですよ。
黒子: そうかい、それにしても椿ちゃん、朝から元気だねえ。
椿 ふふふっ・・・、それだけが取り柄ですから。
でも黒子さんって、どうしていつも黒子の格好なんですか?
黒子: まあ、そりゃいいじゃねえか。それより、椿ちゃんの笑顔を見るとみんな元気になるからなあ。
頑張ってよ。応援してるからねぇ。
椿 あ、はいっ!
BGM、花咲く乙女
解説者: 帝劇の朝は早い。まだ日も上がらぬうちから、帝劇を支える人々は起き出し、働き始める。
さて、毎回番組をお聞きの皆様からのご要望をもとに、
秘蔵の録音盤を発掘してお送りする、思い出の有楽町帝撃通信局。
本日はお待ちかね、大帝国劇場の人気者、売り子の高村椿嬢の一日であります。
では、続けて聞いて参りましょう。場面は変わって、昼の大帝国劇場のロビーであります。
人々のざわめき
それに重なる館内放送
解説者: 押し寄せる人。劇場のロビーは大変な賑わいを見せております。
客1: すいませーん!さくらちゃんのブロマイドを下さい。それから、愛ゆえにの公演ポスターも一枚。
椿 ブロマイドのサイズは普通のでよろしいですか?はい、合計で七十銭になります。
まいど、ありがとうございまーす!
客2: よーし、俺にもブロマイドをくれ。大判で花組全員分だ。
椿 あ、あのー、お客さん?大判は一枚五十銭もするんですけど。
客2: へっへっへっへっへ、こちとら江戸っ子よ。宵越しの金は持っちゃあならねえって、
爺ちゃんからの遺言で、俺っちの好きな帝劇花組のためなら、家を売ってでも買うぜ!
椿 わあお、かっこいいんだぁ。お客さん、男ですねぇ。
客2: あたぼうよ!江戸っ子でぇ。で、嬢ちゃん、全部でいくらでぇ?
椿 えっと、五十銭が六枚で・・・、三円です。
客2:
おっ、三円だね。じゃあ、手ぇ出しな。いいかい?数えるぜ。
ひい、ふう、みい、よお、今何時でぇ?
椿 へい、九つで。なんて落語やってないで早くして下さいよ。
お客様がたくさん待っていらっしゃるんですから。
客2: へっへっへ、若いのにノリがいいお嬢ちゃんだねぇ。ありがとうよ、ここに置いておくよ。
客1: へーえ、豪気な人もいるもんだねぇ。
椿 まったくですよねぇ。へへへっ、でもこうして応援して下さる皆さんあっての帝劇ですから。
客1: そうかい、いいこと言うねぇ。よーし、こうなったら俺も男だ。俺にも大判でブロマイドをくんな。
椿 へへへっ、まいどありっ!
解説者: 天真爛漫。明るい笑顔を振りまく高村椿嬢は、まさに帝劇売店の華といえるでしょう。
噂によりますと、高村椿嬢の笑顔見たさに、つい、売店によってしまうという常連さんも多いのだとか。
BGM、蛍の光
椿 あーあ、本日の営業はこれにて終了っ。ブロマイド、今日はいっぱい売れたなぁ。
黒子: 椿ちゃん、ご苦労様。
椿 あ、黒子さん。どうもお疲れさまでした。無事公演終了、良かったですね。
黒子: いや、何しろ舞台裏はいつも戦場だからねぇ。終わる度にほっとするよ。
椿 そうですねぇ、あ、そうだ。ねぇ、黒子さん。
黒子さんたちって、どうしていつも黒子の格好をしてるんですか?
黒子: え、そ、そりゃあ・・・・・・・、
椿 それに、時々聞き覚えのある声の人もいるし。あれは、確か・・・、
黒子: あ、いっけねぇ!そう言えばまだ舞台の片付けが残っていたんだっ!
それじゃ、椿ちゃん、またっ!
椿 あ、黒子さん!・・・もう、この話題になるとお茶を濁して逃げちゃうんだから。
ま、いっか。さ、て、と、これでお終い、また明日。帰ろ帰ろっと。
遠ざかる足音
解説者: こうして、高村椿嬢の勤めは終わり、彼女は両親の待つ浅草の実家へと家路を急ぐのでありました。
聞けば、まだ十五歳の若い身空とか。いやあ、年に似合わぬしっかり者。頼もしい限りではあります。
椿 いっけなーい!米田支配人から大神さんへの伝言、言づかっていたんだ・・・。
米田支配人は大至急って言ってたけど、今からでも間に合うかなぁ?
あーん、とにかく急がなきゃ。大神さーん!
慌ただしさを見せるように音楽。
解説者: え、いや、やはり、何です・・・、その・・・、
年の割には、しっかりしている娘さんでは、ありますなあ。
それでは、お時間もよろしいようで・・・、
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