近代都史研究室
肖像「密やかなる決意」



「ふう……」

 地図上で霊陣の疑似探索を行っただけで息が切れる。
 ため息を飲み込むために、渚が入れてくれた茶を飲む。
 相変わらず旨い。

 だが、自分もここまで衰えた。
 ここまで帝都の霊陣も浄化作用も消えつつあっては当然かも知れない。
 普段は江戸にいる優弥たちに比べて、帝都のただ中で一日の半分を過ごす彼は消耗も激しかった。

 それがためだろう。
 先日、とうとう渚に遅れをとってしまったのは。
 愛娘が強くなったこともあるだろうが、自分が弱くなったことも実感させられた。

 先月の出雲での会合ではろくな案が出てこなかった。
 五十年待ったが……、もはや、待てぬ。

 気がかりは……と、学生室を通して応接室と兼用である応接室を眺める。
 渚が仕事をしつつ夢織と掛け合っていた。
 ああだこうだと言いつつも、結局会話している回数は夢織とが一番多い。

 あいつが後々、私たちの助けになれるようにはしておこう。
 それが終わったら……。

 学生室から目をそらし、誰にも見られない方向を眺めつつ、水地は表情を変えた。
 五十年前、目の前で倒れていった友たちに想いを馳せる。

「帝都よ……滅べ……」



密やかなる決意

太正五年十一月
塵都氏画





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