もみじ小戦・あとがき




戻る




あとがき

 やっと終わりました。
 こんにちは、あるいはこんばんは、夢織時代です。

 古い更新記録を見直してみたら、もみじ小戦の第一話は平成十年の五月十一日にアップしていました。
 なんと二年以上かかっています。
 当たり前ですが、最初はここまで長くなるとは思っていませんでした。
 第一話を書いた時点で頭にあったのは、ミロクってそういえば死んでいないよなあ、ということと、 十月から十二月って何があったんだろう、という二点だけです。
 有楽町帝撃通信局の書き落としも終わり、ページの売りが無くなってきたところだったので、それじゃあ小説を書き始めよう、と 無謀にも「勝手に太正浪漫街道」と一緒に始めたのです。
「もう一つの第十話」は企画と最初の前文だけがあったころですが、これを終わらせずに色々手を出すあたりは我ながら変わっていません。

 ともかく、最初はどうやって読んでもらおうと考え込んでいました。
 そこで思い出の有楽町帝撃通信局のラストが面白かったので、そのネタを始まりに使わせてもらったんです。
 書いていくうちに、この時期の記録を総まとめにしてああでもないこうでもないと考えるようになりました。
 第三話が終わった頃には、大まかなラストまでの流れは頭の中に出来ていました。

 ところが、横で対降魔部隊SSやら銀仮面やらを書き出したのでどんどん遅れていってしまいました。
 ただその分、嘆きの都とリンクさせたり、各所に降魔戦争時代の名残を入れたりと、書いている方は楽しかったです。
 以後、こういうのが私の方向性になってしまいました。

 この物語はずいぶん前から言っておりましたとおり、閑話休題の前後でテーマがまったく違っています。
 前半は食欲がテーマで、基本はお笑いを狙っています。
 サクラ大戦の日常パートで不幸になる大神を二段階くらいパワーアップさせました。
 この時期のノリの方がよかったと仰って下さる方もいらっしゃいますので、これは概ね成功したみたいですね。
 後半は色欲がテーマで、こちらはサクラ大戦にふさわしい内容かどうか本気で悩みました。
 ただ、自分自身が答えを探していました。

 サクラ大戦というゲームが、一般的な一般的な恋愛シミュレーションと違っている点の一つに、バッドエンドが無い、 ということが上げられます。
 主人公大神一郎はよっぽどのことをしない限り、少女達から向けられるのは基本的には好意です。
 誰とも幸せになれない、ということはなく、むしろいつも選ぶ側です。
 許されることなのか。
 その問いかけをするのがミロクでした。

 吉原の花魁であった彼女は、帝国華撃団花組とはまさに対極と言える人生を歩んできたであろう女性です。
 同時に彼女の存在は、花組が不幸になったときの姿でもありました。
 遊郭街には行ったことの無い私ですが、それでも思うところはあります。
 かつてと今とは違っているでしょうけれど、それでも女性の尊厳が踏みにじられている所があるのではないでしょうか。
 甘い考えと笑われるかも知れませんが、私はその存在を認めたくはありません。

 少女達から好意を向けられ、同時に彼女たちを戦場に駆ることになる大神には、それらをわかっていて欲しかったのです。
 ただ、叩き伏せたままでは大神がいつまで経っても立ち直れそうにないので、解決策はあやめさんに出してもらいました。
 あの言葉の内容は、結構前から決めていました。
 形になったのは丁度サクラ大戦3が発表になり、メンバーが一新されるという話を聞いてからです。
 モチーフが森鴎外の「舞姫」であるとも。
 浮気をしろと言わんばかりの内容に、さすがに反発を覚えました。
 丁度そこでミロクによる糾弾を書くことになったので、ミロクの言葉が制御できないほど辛辣になっていきました。

 終わってみれば、全国の大神隊長への脅迫状だったように思います。
 そんな人生を歩まされた人がいたことを、それを繰り返してはならないことを、 虚構の世界だけではなく忘れないでいて欲しいと願います。


 長くなった第七話は、ちょっと蛇足気味でした。
 ここに十一月と十二月のイベントを全部組み込んで、サクラ大戦の物語を繋げようとしたんです。
 ですがそれが予想以上に多くて、あんな形になってしまいました。
 ただこれに限らず、しょっちゅう「前中後、完結編」という形になってしまったので、 話をまとめる能力というものの未熟さを何度と無く味わうことにもなりました。
 数多い今後の課題の一つです。


 物書きは作品で語るべきなのでしょうが、自信が無いのでこんな文章になってしまいました。
 でも過去に掲示板に書いた解説のまとめでもありますので、まあこれくらいならいいかとも思ったりもしています。

 最後になりましたが、この物語は本当にたくさんの方々に励ましていただきました。
 そして同時に、実にたくさんの方々に誤字チェックをしていただきました。
 裏でこっそり教えていただいたことも多く、もうお名前を並べきれないのですが、 皆さんには本当に感謝申し上げます。
 ありがとうございました。

 次回は、おそらく対降魔部隊SS最終章「虚ろなる貴方無き世界」にてお会いいたしましょう。
 ……ちゃんと書けるといいな。




平成十二年六月六日
夢織時代







目次に戻る。
二階に戻る。
帝劇入り口に戻る。
夢織時代の扉に戻る。