もみじ小戦・第七話
「白い魂」第参編




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 多いぞ。

 大河原は喜び混じりにため息を付いた。
 ここは陸軍情報部の資料室である。
 米田の策を実行する前に、ミロクが言った名前が気にかかったのだ。

 かつてミロクと将来を約束しながらも、消息を絶ったという陸軍士官。
 手がかりは明樹という名前しかない。
 それすらも偽名の可能性がある。
 だがひとまず探せるだけ探してみよう。

 六年前に軍籍にいた人間。
 少尉未満は省いて良いだろう。
 当時四十歳以上も省いて良いだろう。
 ある程度資料を絞り込むと、あとは時間仕事になった。
 資料との格闘は情報部の必須事項でもある。
 二時間ほどで全ての検索が終わった。

 名前の該当者は三人。

 一人目は寒島中尉。
 当時二十二歳というのは考えられたが、このときは中国に出向いていたので候補から省く。

 二人目は朝潮中佐。
 当時三十七歳で北海道の砲術教官……これも省いて問題ない。

 三人目は知っている人間だった。
 秋月少佐、当時二十七歳。
 非常に優秀な人材であり、大河原も情報部の後輩の中で最も将来を有望視していた青年だった。
 何度と無く話もしたし、いくつか指導したこともあるが、感じのいい若者であった。
 名字は憶えていたのだが、名前を憶えていなかったのは情報部士官として不覚であった。

「そうか……、君だったのか……」

 ため息を無理矢理飲み込んだ顔で、微かな懐かしさと共に大河原はつぶやいていた。
 彼のことを思い出すのは六年ぶりだった。
 そして、最後に会ったのも六年前。
 そのとき彼は、米田の親友でもあった朱宮景太郎陸軍中将の下に付いており、その中でも最も優れた側近の一人として名を轟かせていた。
 全ては、過去のことだ。

 降魔戦争の最中、秋月は朱宮と共に、自分や米田と戦った。
 今となっては、どちらが反逆者であったかというのでもないだろう。
 ただ、勝敗という結果だけが残り、今に至っている。

 朱宮は米田によって討ち倒され、帝都日報社を占拠していた秋月はその事実を知ると、部下全員に投降を命じた後に自刃している。
 そのときは、誰もが殉死したものと疑っていなかった。
 米田なぞは、前途ある若者が何で殉死なぞせにゃあならんのだ、と怒っていた。

 実際には投降していたとしても銃殺の可能性も高かったが、
 一方で、あのときはあまりの人材不足のために、叛乱に加わった将校たちも投降すれば即、次の戦場で肩を並べて戦うことになったものだ。
 軍という異常世界の、さらにその異常さを上回る異常な時代だった。
 現に秋月の配下たちは指揮官の自刃によって、二階級降格ながらも銃殺を免れた。
 ……その多くは、直後の戦いで命を落としたのだが……。


 殉死では、なかったのかもしれない。
 生きていれば、遅かれ早かれ逆賊として扱われることは避けられると判断したのか。
 反逆者の内妻という立場は、彼女に害をなすとでも思ったのか。
 頭は良いくせに、自己の保身にはまるで気の回りそうにない、どこか純粋で不器用な面を持った青年であった。
 ……だからこそ、好感が持てたのだ……。

「馬鹿者」

 恥辱にまみれてでも、逃亡して、生き延びて、彼女を迎えに行ってやることこそが、
 男として何より大切なことでは無かったのか。
 彼の優しさ故の思いこみのために、彼女が……ミロクがああなったのだとしたら、
 勝手なものだ、男とは。

 今度は飲み込まずに吐いたため息と共に、大河原は名簿を綴じた。
 このことを、あえて米田に報告する気にはなれなかった。
 六年前の件が未だに米田の脳裏から薄れていないことくらいは大河原にも解る。

 私の胸中にしまっておこう。
 報告したところで、誰一人喜ぶものではない。
 だが、大神くん。
 君は、彼の愚を繰り返してはならんのだぞ。
 彼女たちを裏切ることも。
 彼女たちを置いて逝くことも。

 つぶやくように思いつつ陸軍省を出た大河原の頭上には、綺麗な秋空が広がっていた。

 帝劇の公演は……そういえば「つばさ」だったか……。

 米田の策を実行するための準備に通信局へと足を向けつつ思う。

 あの世という物があるなら、どんな形であっても、二人はそこで再会できたのだろうか……。


*    *    *    *    *


 帝劇一同の盛大な努力の甲斐あってようやく復活したその当の大神一郎であるが、

「はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・っ」

 ロビーの隅っこの方で、楔でも打ち込むかのような大気を漂わせていた。

「大神さーん、元気出して下さいよ……」

 椿が励ますように声をかけるが、まるで反応がない。

 そもそも、久々の仕事と言うことで大神は意気揚々とロビーへ乗り込んできたのである。
 その姿たるや、食堂で飯を食っていたカンナが傍にいたアイリスに、

「……隊長の本職って、やっぱり軍人じゃなくてモギリなのかなあ」

 と後ろ姿を見てぼやかずにいられなかったくらい、勤労意欲に満ちあふれた姿だったのである。

 だがロビーで元気良く椿に挨拶して、椿がにこやかに挨拶を返そうとした瞬間、大神の表情は……いや、全身は凍り付いた。
 機能性という言葉を追求し尽くしたような配置を取る売店の中でも最前列に位置するもの……すなわちそれは最大の人気商品であることを意味する……を目にしたからである。
 無論、内外に知られている通り、その人気商品とはブロマイドのことに他ならない。
 が、そこにある光景は大神が半年に渡って慣れ親しんできた配置と若干違っていたのである。
 二列に並べられた花組スタアたちのブロマイドを差し置いて、各三山平積みにされた二種類のブロマイドの存在故に。

「つ、椿ちゃん……これは……」

 そこにはかつて彼が身体を売った屈辱の過去、爆髪と丸坊主、いずれも泣きたくなるような笑顔で彼自身が写っていた。
 そう、これの存在をかーんぜんに忘れていたのである。

「あ、これすごい人気なんですよ。
 花組の皆さんのどのブロマイドよりも売れているんです。
 あんまり凄いからこの間大増刷したんですよ。
 やっぱり大神さんって人気者なんですね……
 って、ちょっ……、お、大神さん!?」

 秘密部隊の隊長のブロマイドなんか売っていて良いのか、
 などという懐かしい悩みもあるにはあったが、
 それ以上に大きな絶望感で、ぐらりと彼の身体が泳いだ。

 ああ、栃木の父上様、母上様、姉上様、申しわけございません。
 一郎は大神家の家名を汚したまま何も知らず、今までのうのうとしておりました。

 しかし、米田相手ならともかく、椿ちゃんを相手に怒りを叩きつけるわけにも行かない。
 かくて、冒頭の有様となっているのである。
 開場までまだ時間があるとは言え、あまりのんびりとはしていられなかった。
 それに今日は花組のみんなも大神復活記念公演のつもりでいつもより気合が入っているのである。


 ただ、落ち込んでいる人物が二人いる。
 うち一人は、サロンで一人ゆったりとお茶を飲んでいるすみれであった。
 傍目にはふだんと変わらないように見える彼女だがそうではない。
 彼女がわざわざ自室ではなくサロンでお茶を飲むのは、ここを通りがかってくれる人を待っているからなのだ。
 一人で飲むつもりなら、最初から自室で飲んでいる。
 ここで飲んでいても、今の時間帯、大神はロビーに張り付いているのだ。
 来るはずがない。
 そう……、来ない……。

 そのことを、自分に思い知らせているのだった。
 その虚ろな時間を自分に叩きつけるように、無駄にゆっくりと渋くなったお茶を入れ、冷め切ったその味を確かめている。
 ロビーへ大神に頼み事をするついでに復帰の様子を見に行こうとしたあやめは、サロンの扉を開けたところですみれの口にしているカップから湯気が全く上がっていないことを見て取った。
 どうも暖房器具をつけていないらしく、少し冷えてさえ感じるこの部屋で。

「あら、あやめさん。
 めずらしいですわね」

 半分以上満たされたままのカップをそっと置きながら、すみれはいつも通りの口調を作る。
 十六年の人生を通して身に付いた中で、一番得意なことと言えばこれかもしれない……
 そんな風なことをふと思った。

 しかしすみれの言うとおり、あやめがここを通ることは確かに珍しい。
 あやめが用のある場所と言えば支配人室、事務室、そして地下が多いので、ここを通る必要性があまり無いのだ。
 そしてさらに言うならば、他の隊員たちはそろそろ楽屋で着替えを始めている頃である。
 つまり、すみれにしてみればこの姿を他人に……しかもあやめに見られると言う可能性は考えていなかったのである。
 信頼していると同時に、怖い人物でもある。
 叱責がどうのと言う意味ではない。

 自分を帝劇に連れてきた人。
 自分をこの帝劇に連れてきてくれた人。
 自分の心の底を見抜いた人。
 自分の心の奥底を解ってくれた人。
 この人には甘えたいと思ってしまう。
 それが、すみれにとっては怖かった。

「すみれ……」

 ……何を言われるのだろう。
 早く舞台袖に付きなさい……だったらいい。
 一番にって欲しくないことは……

「みんなと一緒にいた方が、多分、いいわよ。
 誰にとってもね」

 ……よかったのか。
 一番に言って欲しくなかった言葉ではなかったけど、でも言って欲しくなかった言葉の一つではあった。
 なぜなら、

「そうですわね。
 例え今回は役を譲っていても、やはりトップスタアの私が後ろにいればど素人のさくらさんなんかはもっと安心して演技できますわよね」

 なぜなら、その言葉に従ってしまうから。
 立ち上がる自分の声にはまるで張りがない。
 神崎すみれの声ではなく、すみれの声そのものだった。
 残っていた紅茶を行儀悪く一度に口に含んで無理矢理に喉に押し込む。
 味は、まるで感じなかった。

「それでは、お先に失礼いたしますわ」

 すみれにはふさわしくない、優雅とはほど遠い仕草でそそくさとその場を辞していく。
 はっきりと落ち込んでいることが解るその背中を見送りつつ、あやめはどうにかすみれを立ち直らせる方法を考えねばと思った。

 サロンを後にしたすみれも、階段を下りつつもまだ楽屋には入りたくなかった。
 皆と顔を合わせることに、微かな負い目がある。
 役を取られたとか……そんな簡単なことでなくて。
 あたふたとした声の聞こえる楽屋の扉に手を当てて……それを開けずに先へ進んだ。
 ……開けられなかった……のかもしれない。

 その先には舞台と小道具部屋、大道具部屋しかない。
 特に意味があるわけでもなく、小道具部屋の方に向かった。
 雑然として、普段なら到底好きになれない光景なのだが、今の自分の気分をうまく表現してくれているような気がする。
 ほこりの匂いのする空気をすうと吸い込もうとして、奥の大道具部屋からやけに賑やかな音が響いてきたのですみれはびくっとなった。
 第一場の準備は昨日のうちに終わっているはずだから、今は黒子衆がドタバタと何かしているとも思えなかった。
 何だろうと、興味を覚えて大道具部屋をそっと覗いてみた。

 まず目に入ったのは、今回のラストシーンで使う本物の複葉機だ。
 ここからすぐに舞台上部へワイヤーを使って運び下ろせるようになっている。
 事実上の整備室になっているわけだ。
 そこで整備していたのは……案の定、紅蘭であった。

 何をしてらっしゃるのかしら……?

 出演者と兼任している紅蘭が、直前になって整備する必要性があるとは思えない。
 紅蘭の機械整備能力には、花組一同全幅の信頼を置いているのである。
 ……新規発明品以外は、という但し書きは付くけれど。

 どうも見たところ、砲塔の作業をしているらしい。
 破裂音と煙を発する舞台用の模擬弾を取り出して入れ替えているのは……、あれは?

「大神はんの復帰記念やねんから……せめてちょっとくらい派手にせんとな……」

 かすかなつぶやきではあったが、すみれの耳にもなんとか聞き取ることが出来た。
 派手な仕掛けをしようとするにしては、ずいぶんと沈んだ声だった。

……紅蘭。

 咎める気にはなれなかった。
 ここにも自分と同じように落ち込んでいる人間がいてくれる。
 それがほんの少しだけ、今の自分には有り難かったのだ。

 紅蘭に存在を悟らせることなく、すみれはその場から姿を消した。



「紅蘭、ずいぶん遅かったわね。そろそろ着替えなさい」
「ああ、えろうすんまへん。ちょっと準備に手間取りまして」

 楽屋ではすみれを除く四人がもう着替え終わっていた。
 すみれは……今回はプロンプターなので一人で紅茶でも飲んでいるのだろうとみんなは思っていたし、事実その通りだった。

「紅蘭、準備って複葉機の準備なんて終わったんじゃなかったの?気合いが入ってるのね」

 今作「つばさ」にはそれを代表するラストのシーンに、実際の複葉機が用いられている。
 これの整備を買って出たのが、いつか飛行機を組み立ててみたいと常々思っていた紅蘭だった。
 元々機械関係に強い彼女は半ば大道具顧問も兼任しているので、そのことそのものはそんなに珍しいことではなかったりする。
 だけど出演直前に慌てるくらいなら、その前にもう整備を終えているはずである。
 紅蘭らしくない。

「ああ、さくらはん。もう少し派手にしたいなって、思うところがあったんや」

 劇中更衣室のシーンで女だとばれるところがあるのだが、まさか本当に脱ぐわけには行かないので肌色のボディースーツを着込む紅蘭は、ぷはっと息を吐いてから答えた。
 基本は戦闘服のアンダースーツなのだが、ちょっと胸が大きくなったように見えるので嫌ではない。
 だがそこで、紅蘭の顔はちょっと沈んだ。

「色々……大神はんには迷惑掛けてしもうたからな。
 大神はんの復活記念に、いい公演に……」

 そう言った自分の声が全然弾んでいないことに、それを聞いたさくらの表情を見て気づかされた。

「うち、そんな顔してるか?さくらはん」
「……」

 さくらは言われてからしまった、と思ったが、仕方なく頷いた。
 沈黙が重い。
 何とか話題を変えようとさくらは頭を絞る。

「あのね紅蘭。派手に……って、何か企んでいるわけ?」

 何を企んでいるの?とは言わなかった。
 今の紅蘭の心境では尋問のように捉えてしまいそうだと思ったから。
 意味は変わらないが、受け止め方が違うだろう。

「……へへ、内緒や。ま、楽しみにしといてや、さくらはん」

 案の定の答えだったが少しは紅蘭の表情がましになったので、さくらはその言葉に従っておくことにした。
 ただし公演終了直前に、さくらはこのときの判断を少し後悔することになる。



「大神さーん、もうすぐ開場ですよぉ……」

 ちょっと泣き目になっている椿である。
 やっと大神が回復してくれたと言ったのに、これでは。
 売店を一人で切り盛りし、しっかり者と言われる彼女だが、やっぱり傍に頼れる存在がいるといないのとでは違う。
 大神が精神凍結している間、どれほど不安だったか。

「どうしたの、椿?」

 そこへ二階吹き抜けからもう一つの頼もしい声が降ってきたので、椿の顔はぱっと明るくなった。

「あやめさーん、助けて下さい。実は大神さんが……」

 かくかくしかじか。

「なるほど、既に大量に売れてしまっているから、今更店頭からどけても仕方ないしね……」
「どうしたらいいんでしょう。このままじゃ……」
「そうね……。椿、大神くんにこう言ってくれる?」

 ごにょごにょごにょ。

「ええっ!?いいんですか!?
 支配人命令で止められているんですよ」
「この場合はしょうがないわ。支配人に対しての責任は私がとるから安心して」
「わかりました」

 口の回りに手を当てて拡声器のようにして大神に告知する。

「大神さん、立ち直ってくれたら特別に……」

 ぴくりと大神の耳が動くのを二人は確かに見た。

「夏の非売品ブロマイド六種コンプリートを通常価格で売って上げますよっっ!!」

ガシイイィィッッ!!

「き……」

 きゃああああ、と叫ぶ間もなく椿は両手をがっちりと握られていた。
 目の前には、いつ立ち上がったのかも、いつ接近したのかも見えなかった大神が、餌を前にした狼、というよりは、お預けを食らっている犬のような目で立っていた。
 ……本当に、椿の目には一瞬だがそう見えた。

「椿ちゃん、それは本当なんだね……!」
「は……はい……」

 後頭部に大きな冷や汗を垂らしつつ、椿はこくこくと頷いた。

「解った。ブロマイドのため……じゃなかった、椿ちゃんの頼みだ。今すぐ立ち直るよ」

 既に立ち直っているんじゃないだろうかと椿は思わないでもなかったが、それよりも大神に手を握られていると言うことにドキドキしてしまう。
 多分大神はそんなことを意識なんかしてくれていないだろうとは思ったけど。
 それが、ちょっと悲しい。

「大神くん、椿が痛がっているわよ」
「あ!ご……ごめん、椿ちゃん!」

 大神はぱっと手を離して、威厳も何もない低姿勢で謝った。

 本当は、痛くてあんな顔してたんじゃないんですけど……

「あれ、あやめさん……?」

 まるで周囲が見えていなかったらしく、大神はようやくあやめの存在に気がついた。

「どうしたんですか、こんな時間に」
「ちょっと裏方で困ったことが起きてしまってね。
 病気や法事が重なって、黒子さんたちの数が足りないらしいのよ。
 特に終盤は飛行機を出したり舞台を転換したりで余裕がないから、馬の足を代わりにやってくれないかしら」

 こう言われると断れないのが大神一郎という青年である。
 馬の足など花組隊長として心外な、ということにはならない。
 更に加えて彼は今上機嫌だった。

「ええいいですよ。劇の終盤なら玄関を空けても問題有りませんからね」
「良かったわ。一人でも多くの人手が欲しいらしいから、出来れば他の所も手伝って上げてね」

 このあたりはしっかりしているあやめである。

「あのー、あやめさん。私もお手伝いしましょうか?
 カーテンコールの間に戻ってくればいいんですから、出来ますよ」
「本当?助かるわ。馬の足をやる黒子が二人分他に回れればずいぶん違うもの。
 ありがとう、椿」

 お礼を言うのはこっちですよ。あやめさん。
 花組の皆さんには悪いですけど、ちょっとだけ、大神さんと一緒にいたいんです。

 というのは、口には出さないで。

「カーテンコールのときには顔を出してもいいんですよね。ちょっとわくわくします」
「ええ、ついでに売店の宣伝もしておくといいわよ」

 とでも話しておく。
 自分は一番にはなれないけど、せめてこれくらいは許してもらおう。

 各人各様の思いを胸に、いつもとちょっと違う公演が開く。
 なおこの日の米田支配人の日記には、次のような記述がある。


 太正十二年十一月二十三日 快晴

 ようやく大神が回復す。
 皆はしゃぎすぎたのか、「つばさ」公演の終盤にて複葉機から実弾が発射された。
 夏に続いての二度目の発射なので警察との折り合いは面倒であったがまあよい。
 一応全員を叱ったあやめくんによれば、客受けは良かったとのこと。
 紅蘭は大神に励まされて、立ち直ってくれたようだ。
 大河原君より、作戦を実行に移すとの連絡が届く。
 頼む。



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