「あ、大神さん・・・」
大神が目を覚まして心からほっとしたような顔を見せ、それから思い出したようにちょっとだけ顔をそむける。
そうか・・・、俺、さくらくんに嫌われていたんだっけ・・・。
頭を押さえて少し揺さぶりながら思い出す。
それにしても・・・。
「何で、こんな時間に、しかも帯剣せずに外を出歩いたんだ・・・」
そうしたつもりはなかったのだが、何だか咎めるような口調になってしまった。
いかに帝都が、世界に誇るほど治安のよい都市だと言っても、こんな時間に年若い婦女子が外を歩き回って危険でないはずがない。
いくらさくらが北辰一刀流免許皆伝で、無刀でも並の男にひけはとらないとはいえ、そんなことをさせるわけにはいかなかった。
ましてや、今のこの状況だ。
「ごめんなさい・・・、大神さんが出かけようとしているのを見たら、居ても立ってもいられなくて・・・」
「俺を・・・追いかけてきたのか・・・?」
こうならないためにも、尾行には細心の注意を払ったつもりだった。
あらかじめ大神がここに来るとわかっているはずはないから、さくらは大神の視界の外、さらに、確実に気配を察知できる範囲の外から大神を追いかけてきたことになる。
その推理を肯定するかのように、さくらはこっくりと頷いた。
「公園に入ろうとしたら、結界のような物が張られているから、多分ここに間違いないだろうと思って・・・、中に入ってからはあちこち探しましたけど・・・」
つまり、さくらにはほとんど結界が効かなかったことになる。
さくらが元来持っている霊力のためか、それとも別の理由でか。
ともかく、大神は自己嫌悪で頭を抱えた。
「それにしたって・・・、俺と話をするなら明日の朝でもよかっただろうに・・・」
ぼやきに近い大神の言葉に、さくらの表情が一気につらそうな物に変わる。
「大神さんが、夜中でも動いているの、知っていたから・・・、お弁当・・・、どうにかして食べて欲しかったんです・・・。 あたしのこと、嫌っていても仕方ないですけど、せめてお弁当くらい・・・受け取って・・・欲しかったんです・・・」
終わりの方の言葉を、ほとんど涙に濡れていそうな唇で紡ぎながら、決して離さずにいた包みをそっと大神に差し出して、立ち上がろうとする。
「ちょ・・・、ちょっと待ってくれさくらくん!」
お弁当と聞いて、大神はすぐにでも飛びつきたい気分だったが、それ以上に、さくらの言った言葉に驚いて、慌てて手を取って引き留める。
「俺は嫌われても仕方ないけど・・・、俺は君のこと、嫌いでなんか・・・」
大神はつい、本音が出かけたが、その言葉をみなまで言わせずに、
「嘘ですっ!」
とさくらは叫んで、大神の手を振り払い・・・、しかし、そこから動けずに振り払ったその手で顔を覆った。
覆い隠した指と指の間から、雫がこぼれ落ちる。
さすがに、これには大神もあせった。
「嘘じゃないよ!」
「じゃあ・・、じゃあなんで・・・、あたしの作ったお弁当、食べてくれなかったんですか・・・!」
悲痛なくらいの叫びを受けながら、しかし大神は困惑していた。
身に覚えがないのだ。
あやめと初めてあった日の晩だろうか・・・。
しかし、あのときは後で全部食べたのだし・・・。
いくら考えても答えが出てこない。
「あの・・・、その・・・さ、食べなかったって、いつの話・・・?」
さくらに聞くのが怖かったが、しかし、聞くしかなかった。
さくらはその言葉にびくっとしながらも叫んだ。
「五日前の夜です!」
「五日前・・・・」
言われて、ようやくおぼろげに思い出す。
確か・・・あれは・・・。
「もしかして・・・、あれ、俺のために作っておいてくれたのか・・・?」
「そうですよ!それなのに大神さん、手もつけずに・・・!」
思いのあまり、覆い隠していた手を振り払って、大神に言葉を叩きつける。
大神は、不倫がばれた夫のような弱々しい声で弁解するしかなかった。
「あれ・・・、さくらくんが翌朝のために作っておいたんだと思ってた・・・」
「さくらよりって、書いておいたでしょう!」
さすがに、怒りではなく、恥ずかしさで顔が赤くなる。
自分の浅ましい心をさらけ出されたような気がしたのだ。
こんなこと・・・、言いたくなかった・・・。
膨らんでいた怒りが急速にしぼんでいき、このまま泣き崩れたかった。
大神の胸に飛び込みたかったが、そんなことが出来るはずもなかった。
ところが・・・、当の大神の答えはというと・・・、
「いや・・・、開けると我慢が出来なくなると思って、包みは開けなかったんだ・・・」
意外なものだった。
でも、そうなると疑問が出てくる。
どうして・・・。
感情を一時停止させたような顔で、さくらは恐る恐る尋ねた。
「じゃあ、大神さん・・・。どうしてあたしの作ったお弁当だってわかったんですか?」
特に、包みに特徴があった覚えはない。
帝劇で日常的に使われている物で包んだのだ。
「いや・・・、匂いで、なんとなく」
さくらは、あっけにとられた。
しばらく、そのままでいて、
それから、笑いがこみ上げてきた。
涙がまた出てきたが、その雫は笑顔の頬を伝って落ちていった。
「なんだ・・・、そうだったんだ・・・、よかった・・・」
涙を拭きつつ、少し細めた目で見つめてくるその笑顔に、大神はどきりとさせられる。
可愛らしかった。
さくらの、本来の魅力に溢れた、素敵な、笑顔だった。
「大神さん・・・、あたしのこと、嫌いじゃ、ないんですね・・・」
その笑顔でこんな風に問いかけられた日には、
みんなに嫌われなければとか、帝劇をいつか去ることになるとか、色々巡らせていた打算の数々と、それから派生した作戦たちなど、
綺麗さっぱり木っ端微塵に吹き飛んでしまった。
「ああ、嫌いなんかじゃないよ」
お互い、その先の言葉は口に出せなかったが、それでも、心が通じたという実感はあった。
目元に残っていた涙をようやく拭き終えて、改めて、包みを真っ直ぐに差し出した。
「じゃあ、大神さん、お弁当です。受け取って下さい」
「うん・・・、その・・・さくらくん」
受け取ったものの、大神はちょっと遠慮がちに尋ねる。
「いまここで、食べちゃ駄目かな・・・?すごく、腹が減っていてさ・・・」
さくらは、くすりと笑ってから、
「はい、どうぞ」
「いっただっきまーす!」
開けるとさすがに、魂から食欲を呼び覚ますかのようなおいしそうな匂いと盛りつけが姿を現す。
空きっ腹にかき込みたいところだが、作ったさくらがそばにいる状況と、何よりその味が大神にそれを許さなかった。
「おいしいっ・・・・!」
これを味わうことなく腹に入れるなど、天をも恐れぬ大罪である。
胃袋はおろか、全身が満たされるような充足感が大神を包んでいた。
一般に、腹が減っていれば飯は旨いというが、しかしそれだけで、これほどまでに旨いだろうか。
食べながら感涙している大神を、さくらは幸せそうな笑顔で見つめていた。
結界を張って退避させていた人の気配が戻り始めた頃、大神はようやく食べ終わった。
「ごちそうさまでした」
「どうしたしまして」
何だか、遠足に来ているような気分だが、しかしもう夜の十二時を回っている刻限である。
さすがに帰らねばならないだろう。
「さくらくん、帰ろうか・・・」
「はい」
お弁当箱を包み直して、大神に続いて立ち上がろうとして、
「つ・・・っ」
顔をしかめて、さくらは座り込んでしまった。
「さくらくん?」
「あ、あの、大神さん。大丈夫ですから、先に帰って・・・」
「何言っているんだ」
さくらの言葉を遮って、自分もかがみ込む。
立ち上がったときということは、膝か足首を怪我しているのだろうと言うことは大体想像がついた。
骨折ではないようだが。
「ここだね」
いつも剣を振るう動きを支えていることが信じられないくらい細い足首だが、右の足首が靴下の上からでも少しわかるくらい腫れていた。
「・・・ごめんなさい・・・大神さん」
「さっきの、爆発の時だね・・・」
謝るのはこちらなのに、と思う。
さくらは自分を間一髪で助けてくれたのに、自分はさくらを無傷のまま守りきってやることが出来なかったのだから。
すっ・・・
「あ・・・!お、大神さん・・・」
大神はさくらの靴下を少しめくり上げて、触れるか触れないか位のところから、霊波を当てて患部を冷やす。
さくらは、ひどく気恥ずかしかった。
別に、見られて困るところではないのに。
普段は隠している足首を見られているのが恥ずかしいのか、怪我したところを見られているのが恥ずかしいのか、自分でもよくわからなかったが、
ただ、大神の波動を受けているところが気持ちよかった。
「とりあえずはこれで大丈夫だろうけど、帝劇に戻ったらちゃんと処置した方がいいな」
そういうと、大神はさくらの前に背中を向けてかがみ込んだ。
「え?」
「乗って。おぶっていくよ」
大神の声に下心も何も一切無かったために、かえってさくらはうろたえてしまった。
「で、でも、だって、大神さんだって怪我しているし・・・」
「もう血は止まっているし、大丈夫。それよりさくらくんをそんな状態で歩かせられないよ」
魔力も何もない言葉。
でも、そこに込められた優しさに、さくらは素直に甘えたくなった。
恐る恐る、とでも言うように、大神の背中に乗る。
ちょうど、先ほどの炎で服が焼きちぎれて大神の背中がむき出しになったところに指が触れてしまい、さくらも大神も同時にびくっとなった。
大神は振り返って、さくらと顔を見合わせ、お互い、どちらからともなく微笑みあった。
なんだか安心して、さくらは大神に体重を預けることにした。
広い背中・・・。
なんだか、懐かしい気がする。
「よっ」
さくらを背負ったまま、大神は軽々と立ち上がり、包みを右手に、さくらが戻してくれていた両の小太刀を左手に、何の引っかかりもなく歩き始めた。
「大神さん・・・、その・・・重くないんですか?」
「いや、さくらくんは軽いよ」
世辞でもなく、大神の言葉は本気であった。
六月頃は、倒れてきた柱一つにひーひー言っていたが、あれから四ヶ月以上経つ。
帝劇三人娘に、花組の隊員一同に、いろいろと(こき)使われて、大神は思いっきり鍛えられていたのである。
五十キロにも満たないさくら一人。
軽いものである。
普段の大神の仕事の内容を推して知るべしであろう。
大神の歩みによって、かすかに上下に揺られるのが心地よかった。
「でも・・・大神さん。どうしてあたしに嫌われているって思っていたんですか?」
「え゛・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
びくりと、大神の歩みが一瞬止まる。
「いや・・・・その・・・シャワー・・・・」
盛大に冷や汗をかきながらしどろもどろに言葉をつなぐ大神に、さくらはそう言えばと思い出した。
「そうでしたね。おおがみさん、あたしたちの入浴覗いていたんですよね」
ことさら冗談めかして明るく喋るさくらに、大神は冷や汗を凍りつかせんばかりである。
一応、制裁と贖罪は終わっているとは言っても、本来あの程度で許される罪ではない。
さすがに言葉を続けられなくなった大神に、さくらはしばらく躊躇ってから再び口を開いた。
「ひとつだけ・・・」
「え?」
「一つだけ、答えて下さい・・・」
耳元でささやくような言葉に、大神はこくこくと頷くしかなかった。
「もしあのとき、シャワールームがバラバラだったら、大神さんは誰の入浴を覗きましたか?」
「いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっっっっっっっ!????」
「嘘つかないで、真面目に答えて下さい。あたしのことを覗きに来ましたか・・・」
さくらの手が大神の首にのばされる。
すっと、指が頸動脈の上をなぞった。
こわい。本気で怖い。
嘘をついたとなったら、その場で殺されかねないが、正直に返答してもその答えでさくらの機嫌を損ねたら殺されそうな気がした。
おぶっているので、さくらの表情が見られないのが、その恐怖に拍車をかける。
だが、大神がさくらの表情を見ていれば、とまどっただろう。
大神以上に、さくらは不安な表情で、大神の返答をおそれていたのだから。
もし、俺の答えが・・・。
もし、大神さんの答えが・・・・。
「俺は、もしそうだったら・・・」
「もし、そうだったら・・・・」
「俺は・・・」
「大神さんは・・・」
ごくりと、大神がつばを飲み込む音が聞こえた気がした。
「さくらくんを、覗きに行っていただろう」
多分そうしていただろう。
本気で悩んだ末の、正直な答えだった。
さくらは・・・、何と思うだろうか・・・。
軽蔑するだろうか、嫌うだろうか、それとも・・・・。
指先だけが触れていた首に、腕が回される。
首を絞められるかと思ったが、さくらは軽く力を加えて、大神に身体を密着させた。
さくらの浴衣越しだが、柔らかい感触を背中に感じて大神はあせってしまった。
「さ・・・さくらくん・・・」
「でも、今度見つけたら、桜花放神の的ですからね、大神さん・・・」
「はい・・・」
どういうことだろう。
つまりは、許してもらえたということなのだろうか。
どうして許してもらえたのか、我ながら不思議だったが。
と、大神はふと疑問に思ったことがある。
「今度やったら」ではなくて、「今度見つけたら」とさくらは言った。
それは・・・つまり・・・。
「大神さん、早く帰りましょう」
「あ、ああ」
大神の背中の上から夜の銀座を眺めつつ、さくらは何故懐かしいと思ったのかようやく思い至っていた。
お父様に、似ているみたい・・・。
小さいころ、父一馬に肩車してもらった頃の記憶だったのだ。
しかしいくら何でも、今この場で大神に肩車して欲しいと言うだけの度胸はなかった。
でも、今はこれでいい。
いま、信じられないくらい、幸せ・・・。
「さくらくん・・・」
「・・・、はい?」
帝劇の玄関が見えてきたところで、大神が一度立ち止まってから声をかけてきた。
「あ・・・、下りた方がいいですか?」
ちょっと、さみしい気がする。
「違う。そうじゃなくて、一つ頼みがあるんだ」
大神の声が、帝國華撃団花組隊長のそれだったので、さくらは幸せに浸っていた気持ちを引き締めた。
答える声は、帝国華撃団花組隊員のそれ。
「はい。なんですか」
「今日のこと、それから、俺が夜外に出ていること。花組のみんなにも、由里くんたちにも、秘密にしておいてくれ」
言われて、さくらは今さらのように思い出した。
さっきまでは、自分の感情の流れるままに話していて追求するのを忘れていたが、あの巨大な魔物はただごとではない。
あんな魔物が、今、帝都の裏でうごめいている。
戦慄すべき事実であった。
黒之巣会は事実上崩壊して、残党が寄り集まって気勢を上げているだけだと、ラジオ放送の補助をやりながらも安心していた。
もう、あんな戦いは起こらないだろうと。
しかし、あんな事が起こっている。
そして、あれでまだ、終わっていないのだ。
それを、大神は誰にも知らせずに終わらせるつもりなのだろう。
大神は、また一人で戦場へ行ってしまう。
あのとき、七月の特別公演の日、たった一人で出撃した大神を追ったときの、不安、寂しさ。
もう、味わいたくはなかった。
大神に、そんなことをして欲しくなかった。
「それじゃあ、あたしも・・・」
「帝劇で、今まで通り過ごしていてくれ」
ついていきます、と言いかけたさくらの言葉を、きっぱりとした口調で遮った。
「頼む、さくらくん・・・」
「あ・・・」
さいごの、懇願するような声だけは、帝劇の大神さん、の声だった。
大神のその声を聞いて、喉から舌先まで出かかっていた言葉を飲み込むしかなかった。
でも・・・、でも・・・。
「どうして、ですか」
涙声にならないよう、しっかりと言おうとしたつもりだったのだが。
「どうしてもだ・・・。この件に君たちを関わらせるわけには行かない」
「でも、私たちは帝国華撃団花組です!これまでずっと一緒に戦ってきたじゃないですか・・・」
「だけど、君たちは帝国歌劇団花組でもあるんだ」
「・・・!」
そう、大神は確かに「歌劇団」と言ったのだろう。
俺たち、ではなく、君たちとも言った。
大神が何を言わんとしたのか、朧ながら見えた気がする。
当の大神は、実は後悔していた。
本当なら、マリアに言ったように、もっと嫌われるようなことを言うべきだったのだ。
その方が確実に、自分から引き離すことが出来る。
自分の心配を、させずに済む・・・。
しかし、言えなかったのだ。
さくらにだけは、嫌われたくないと、魂が叫んでいた。
「この戦い・・、俺が、終わらせてみせるよ・・・」
いくつか、語るべきか悩んだ言葉を頭の中に叩き返してから、かろうじてそれだけを口にした。
やはり、あれは語るべきではない。
彼女たちを、あんなことに触れさせてはならない。
帝国軍人としてではなく、一人の男としての、それは誓いだった。
その大神の表情は、さくらからは見えない。
だが、容易に想像できた。
自分が、いくら駄々をこねても、大神は認めてくれないだろう。
ならば、
「条件が、あります」
言うのがつらかったが、努めて明るくさくらは飲み込んだ言葉とは別の言葉を発した。
「条件?」
「そうです、これを守ってくれたら、あたしも約束を守ります」
「・・・言ってくれ。条件次第だ」
大神の答えはあくまで慎重であった。
だが、話は聞いてくれそうである。
「一つは・・・」
大神の右手にあるお弁当箱をちらっと見てから、
「毎晩、あたしの作ったお弁当を食べてくれること」
「え?」
問い返す大神の口元はかなりゆるい。
「まだ、続けるんでしょう、夜の見回り・・・」
「ああ」
「せめて、食べるものを食べてから動いてくれないと、あたし、安心できませんから」
恥ずかしいのを隠すように、さくらはちょっとすまして言ってみた。
「わかった。喜んで、約束させてもらうよ」
「もう一つ・・・」
ぎゅっ・・・
大神の首に回していた腕に、かすかに、想いを込める。
「毎晩、大神さんが、ちゃあんと五体無事に帰ってくること・・・・・・」
最後の方は、言いながら少しかすんでしまった。
霊子甲冑のない戦いが、どれほど熾烈なものか、父に教えてもらったわけではないが、
しかし、霊子甲冑がなければ、と想像するだけでも恐怖に震えることがある。
秘密裏に動くために、霊子甲冑ではなく生身で戦う大神がどれほど危険であるか。
そんな大神への、さくらの心からの願いだった。
さくらは、大神の答えを待った。
待って、待って・・・
「約束する」
声になった言葉に、迷いはなかった。
「約束するよ、さくらくん」
「はいっ・・・」
信じていいのだ。
大神がこう言ったとき、約束を違えたことは一度もない。
「さあ、帰ろうか」
振り向いた笑顔は、さくらのその想いを、全て受け入れてくれた。