もう一人の勇者


 十五年前には魔王と名乗り、世界制覇の野望を燃やして世界を席巻しつつも勇者アバンに敗れた男。
 大魔王バーンと契約し、魔軍司令官となって蘇り、新たなる勇者ダイの目の前で師となったアバンを倒した男。
 そして、ダイにとって最大のライバルとなり、同時にダイを最大のライバルとした男。
 彼無くして、ダイは勇者となり得たでしょうか。
 彼無くして、ダイの冒険は大冒険となったでしょうか。
 かつての魔王でも、魔軍司令官でもなく、
 ダイの前に立ちはだかったもう一人の勇者、ハドラー。
 彼の戦いを、彼の生きた証を、思い出と共につづりましょう。




 なお、出来ればこのページはダイの大冒険第27巻、「大死闘決着!?」の半ばを広げて読んで下さい。
 
「悔いはない、むしろ感謝しているぞ。
 お前たちの手で地に落ちてからが俺の本当の人生だった。
 短い間だったが、確かな手応えがあった・・・・・・・!」

「さらばだ、勇者ダイ・・・・・・・」

 このページの、間になります。




「いけませんねえ・・・」
「なんだァ貴様ぁ!!?」
「・・・魔王さんとやら、女性を誘う時はもう少し優しく声をかけないとダメですよ」

全ての始まり

「よくも・・・よくも、私の友を・・・!!許さぁんッ!!!!」
「なっ・・・なにィッ!!?なんだ!!?この閃光はぁッ!!!?」

因縁の一撃

「私の必殺技も刀殺法もまだ完成してはいない・・・・・!!今、この場で平和を手に入れるには・・・これしかないっ・・・!!」

凍れる時間

「バカめ!!!勝負を捨てよったかああーっ!!!!」
「アバンストラッシュ!!!!」

決着



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15年・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




『この島か・・・探したぞ』

執着

『クックックッ 貴様の魔法陣にはなかなか骨を折らされたぞ』
「やはり復活していたか、魔王ハドラー!!」
『・・・久しいな、勇者アバン・・・!』

再会

『今のオレはバーン様の全軍を束ねる総司令官・・・魔軍司令ハドラーだ!!』
「なんということだ・・・!」

明かされる事実

『食らえィ!極大爆烈呪文ーッ!!!』
「アバンストラッシュ!!!」

幾度目かの激突

『いま楽にしてやる・・・』
「やめろぉッ!!うおおおおっ!!」
『そんなに死に急ぎたいのか・・・アバンの弟子よ』

初めての交戦


『ま、まさかこの呪文はぁーっ!!』
「ポップ・・・ダイ…あとは頼みますよ」
『やめろっ!やめるんだあぁーーーっ!』

閃光


『クハハハハハッ!やはりおとろえたわアバンめ!
 自らの命をかけた自己犠牲呪文でもこのオレにとどめを刺すには至らなかった!
 フハハハハッ!これでもう恐れるものはなにもないっ!
 魔王軍の天下だ!!』

確信する勝利


『バッ……バカなッ!あ、あの紋章は……!!
 ドラゴン!!?』
「あ、あれは……」
『竜の紋章……!?バカな……こんなガキが竜の騎士だとでもいうのか……!?』

驚愕


『くたばれーーッ!!』
「ダイーッ!!上だぁーッ!!」
「先生の技がどれだけすごいか…!うけてみろーー!!」
『なにィッ!!』
「アバン……!!ストラーーーーッシュ!!!!」

師を越えた一撃


『お……おのれ!小僧め!!忘れんぞこの屈辱と……貴様の名は……!
 かならず殺してやる……ダイ!!!』

宿敵の誕生


 たしかにアバンは死んだ……だが、真にアバンより恐ろしいのは、あのダイという小僧!!

 もし奴が本当に竜の騎士であったとしたら……
 しかも、アバンの修行を受け勇者としての強さを身につけてしまっているとしたら……
 アバンをもはるかに上回る存在になるに違いない……

『たたきつぶさねばならん!まだヒヨコのうちに……!』

溢れたつ戦意


『こいつは信じられないような底力を秘めているのだ。
 このオレも手傷を負わされたわ!』
「なんと!ハドラーどのに手傷を……!?」
『そうだ、まだ力を付けぬうちに殺してしまわねば、必ずや我らの難敵となるはず……!!』

未だ頂上より


 それにつけてもダイめ……、早くもクロコダイン一人の手に負えんほどになったのか……
『だが案ずることもあるまい、ザボエラが知恵を貸しているのであれば』

不安の訂正


『……それに、確かにヒュンケルならダイを殺すにはうってつけの男だ。
 ダイは絶対にヒュンケルには勝てん!何故なら奴はダイにとっては……』

残酷なる確信


「それとも……そのダイとか言う小僧と私が出会ってはまずい理由でもあるのかね……?」
 いかなバランでもカールだけはそうそう落とせんはず。その間に何としてもダイを始末せねば……!!

迫り来る予感


『クククククッ、ダイは炎魔塔か、拍子抜けしたぞ』
「まさか……まさか……!!?」
『まあ良い、どのみちアバンの使徒は今日ここで全滅するのだ。
 このオレはザコでもひねって遊ぶとするか……!!』

揺るぎなき自信


『……驚いたぞ、あの鼻タレ小僧がよくぞここまで成長したものだ……!!』

遠き先の予感


「オレにはもはやアバンを師と呼ぶ資格はない……
 師の敵などとおこがましいことはいわん……だが!
 オレの父バルトスの命を奪った貴様を生かしてはおけん!!」
『ほざくなあッ若僧めがっ!!
 親子そろってこのオレにたてつきおって……!
 消え失せろォォーーーーーーーーッ!!』


古き部下の養子


『あの世でせいぜい歯ぎしりするがいい!
 貴様の仲間やアバン……バルトスとな……!』
”アバン……バルトス……!!?
 せ……せんせい……とうさん……”

”む……無意識状態においても最後の闘気を失わないとは……!
 み……見事だヒュンケル……貴様こそ……真の……戦士……”

二度目の敗北


『そうか……貴様が暗黒闘気の魔力によってオレをよみがえらせたのか!』

「……ハドラー、これだけは覚えておくがいい……お前の肉体は我が全能なる大魔王バーン様のものなのだ……」

修羅の復活


『じゃ……邪悪の六芒星が三つに……!!?』

『魔王軍の死神と恐れられ、大魔王バーン様直属の殺し屋としてその意にそぐわぬ者を闇に葬るという……
 あの噂に高い男が……こいつが……!?
 し、しかし……なぜこの男が鬼岩城に……!!?』
「……誰か不始末でもしでかしたかな……?」
失脚の恐怖


『ま……待てバラン!この場は大魔王さまの信用回復のためにオレが……!!』
「魔軍司令どの、あなたの口実はもはや聞きあきた!
 私はすでにあなたが私をダイに近づけたがらぬ理由が読めている……!」
『なっ……なんだとっ……!!?』
「あの少年ダイは……”竜の騎士”なのだろう……!!?」
”つ……ついに!!ついに見抜きおったか……!
 こやつにだけは知られてはならぬことを……”

具現化しつつある不安


「ダイ奪還に成功した暁には、なにかバランに褒美をとらせてやらねばなりませんねェ……!」
「……うむ、もしバランが見事息子を我が軍に引き入れることに成功したら……
 やつに魔軍司令の座を任せてもよい」
『バッ……バーンさまッ!!』
「余の決定に変更はない……!」

『……こうなったらダイがバランを倒してくれることを願う以外にない……!
 何千……いや、何万分の一の確率に過ぎぬがな……』

図らずも認める宿敵


『バランはどうしたのだ!ダイ奪還に失敗したあげくにまったくの音沙汰無しとは……!』

『ウウッ!!や、やはり竜騎衆を呼ぶつもりなのか……!?』
「……本気だねえ、彼は。こりゃ、ハドラー君の最後の望みも消えたね……」

死神の笑い

「……どうやらあの騎士は人間ではないようです。
 もしかしたら魔王の手下の生き残りかも知れませんぞ」
「……いいだろう、いかに魔物の子でもわしの孫だ」
「あの男は魔王の手下らしいぞ」
「人間がこんなクズどもだとわかっていれば、守ってやったりはしなかった!!!」

自ら蒔きし種

「竜騎将バランは傷つき戦線を離脱。ダイたちパーティーは全員生き残った模様です」
『もういい!!』
 …さ……最悪のケースだ…!バランは生き残り…ダイは自らの能力に覚醒しはじめた…!
 このままでは…オレは…オレは……!!
「……魔軍司令ハドラー!
 大魔王バーン様がお呼びである……!!」

悪夢の召喚

「余は寛大な男だ。失敗も……三度までは許そう。しかしおまえは、
 ロモス、パプニカを奪回され、魔王軍の有能な軍団長二人を敵に回してしまった。
 ……さらにバルジ島においては、全軍団を率いたにもかかわらずダイをうちもらした…!!
 ……そして、今回のバランの一件……」

三本の指

「……だが……あの勇者アバンを葬った功績を余は忘れてはおらん……」
『…………!!』

宿敵に救われた命

「ハドラー、これが最後のチャンスだ。
 もしおまえが次に余の前に現れた時、勇者ダイとその仲間を全滅させていなかったら……
 余はこの三本目の指を折る!
 …………よいな」
『はっ、ははあーッ!このハドラーの生命にかえても必ず……!』

最後通告

「……今なら確実に全員を暗殺できますぞ、ハドラー様!」
「……ウム」
「しかしこいつだけは魔香気の効き目が薄かったのが意外でしたな。
 何か特殊な力を身につけたのかも……」
「アバンの使徒は誰もがそうだ。しばらく見ぬうちに大きく力をつけ牙をむきおる。
 こいつも……この場で殺さねばなるまい!!」

はい上がってきた者

「み……見そこなったぜ……ハドラー!」
「なっ……なにッ!!?」
「てめえは残酷だったけど卑怯じゃなかった。
 今までも何度か戦ったがそん時にゃまだ魔王の威厳みたいなのがあったぜ!
 それが……こんな妖怪ジジイのきたねえだましうちに頼るとはよ……!
 とうとう落ちるところまで落ちたな!」

魔王、ハドラー

「だっ……だまれエッ!もはやオレには失敗は許されんのだッ!
 手段を選んでいる余裕はないッ!!」
「クロコダインのおっさんも以前おんなじようなことを言ってたぜ。
 だが最後にはわかってくれたさ。
 男の戦いには……勝ち負けよりも大事なものがあるんだってことをな……!」

突きつけられる誇り

「そ……そうか!思い出したぞ!
 貴様はたしか、アバンに味方してこのオレにたてついた……
 人間界最強の大魔道士とかぬかしている男だな……!」
「よお……元気そうじゃねえか……三流魔王!」
「なっ……なんだとォォッ!!?」
「……てめえが成仏しやがらねえおかげでいらぬ手間がふえたぜ。
 おまけにオレの数少ねえ友達を殺しやがって……。
 あいつは……いいヤツだったんだ……本当にな……
 それが……オレの三分の一も生きられなかった……」

彼の者の思い出がもう一人

「これならどうだあッ!!!極大閃熱呪文!!!!
 バ……バカなっ!できるはずがないっ!!」
「極大閃熱呪文ッ!!」

激突する極大呪文

「……消えろハドラー!おれはもう絶対に仲間を殺させない……!」
「お!お!お!……おのれェェェッ!!」
「二度と死なせるもんかぁぁっ!!!!」

三度目の敗北

「……ザボエラ、裏切りは許さん!……もはや……おまえとオレは一蓮托生!
 他の者に取り入るなら……オレがおまえを……殺す!
 オレは知っているぞ……おまえが密かに続けていた超魔生物の研究のことをな……!
 今こそそれを、オレのために使え!」
「……そっ……それをなぜっ……!!?」
「……やつらアバンの使徒どもの成長は速い!速すぎる!!
 もはやこのバーンさまからいただいた身体ですら追いつかぬ……!
 もっと強い力が必要なのだ!!……そう、あの竜魔人バランのような……
 誰にも負けぬ……地上最強の力が……!」

敗北の逆境より、なお

「ざ……残念だったなぁ……!
 そいつは精巧に作られたニセ物……本物の覇者の剣はすでにハドラー様に献上済みだっ……!」

最強の剣

「……だが!いつか……!……いつか完全なる超魔生物がおまえたちを倒す……!
 オレの……オレの戦いはムダじゃなかった……!
 そうさ……決して……ムダではな……かった……は……ず……」

「あの世で誇るがよいっ!おまえの研究成果が生み出す魔王軍最大最強の魔神のことを、なっ!!!」

ザムザ、散る

「……ハドラーはどこだ……?」
「そ……それはっ……」
「……どこにいる!!?」
「……ザボエラ、通せ」
「……は、ハドラーさま!!?」
「……かまわん、オレもヤツに話がある……」

使者の来訪

「……見ての通り今のオレはおまえが何をしようとも手も足も出せん。
 バーンさまに敗北を告げたければ、そうしてくれてもかまわん……
 だが……!……無理を承知でおまえに頼みたい!
 おれが超魔生物へと改造される間、人間どもと戦ってくれぬか!!?」

かすかな信頼

「……バーンさまのためにする価値のあることか?
 ザムザの敗北は知っている…、超魔生物は変身すると呪文が使えなくなる未完成品……
 呪文が使えねばいくら力がアップしても欠陥戦士に過ぎぬ」
「……その欠点ならば既に解決法が見つかっている……。
 魔族の姿から超魔生物へと変身する機能をつけるから魔力が失われるのだ!
……この身体そのものを超魔生物と化せばそれで済むこと……!!」
「なっ……なにいっ……!」

驚愕の決断

「そうするだけの価値のある敵だとオレは今さらながらに気づいたのだ!!
 ……地位も!……名誉も!生命さえ、もはやオレには不要!
 たとえこの身を失おうとも、やつらに一矢をむくいねば……死んでも死にきれんッ……!!」

復活の武人

「最大の弱点を克服したおまえは必ずや魔法軍最強の戦士となれる。
 バーンさまもお喜びになろう……パプニカは……私にまかせておくがいい……!」
「……すまぬ、ミストバーン!」

強者への敬意

「信用できるのですか!?あやつ……」
「……わからぬ、だが信じる以外にない。今は…ただひたすらに…時間が欲しい!
 オレに最後のチャンスをくれるなら……たとえ相手が神や悪魔でもかまわん……!」

研ぎ澄まされし魔王

「……ダイ!この場でオレと勝負してもらおう!!
 むろん一対一、正々堂々のな!!!」
「な、なにっ!!?」
「この日のためにオレはつまらぬ誇りを捨て魔族の身体すら捨てた!!
 オレの望みはいまやただひとつ!!
 我が生涯の宿敵アバンが残したおまえたちをうち倒すことだけだっ!!!」

宿敵、見ゆ

「今までのハドラーじゃない…!!
 全力でやらなきゃ…殺される…!!!」
「…フフフッ!!よくぞ見抜いた!!!
 ……さすが我が宿敵…!!!」
「ああああっ!!?」
「…それでこそ……アバンの使徒よ!!!」

勇者の挑戦

「…戦ってみればわかることだ。その目その耳で確かめてみればいい……
 このオレが……すべてを失った代償として手に入れた力を……!
 そしてそれが…おまえがかつて戦った強敵たちを……
 どれほど超えているかをなっ!!!!」

炸裂する闘志

「…うけてやる義務があると思うけどね…
 彼はもう魔族の姿には戻れない。
 戦いのために余生を捨てちゃったんだから……」

「…魔族の身体にはもはや未練などない!
 むしろ我が身を捨て去ることによってかつては地上を席巻した魔王だったなどという
 つまらぬ見栄も捨てられたのだ!!
 己れの立場を可愛がっている男に真の勝利などないっ!
 ……これは、おまえたちの師がオレにも残してくれた教訓だッ!!!」

使徒、もう一人

「…いいだろう、次の一撃で決着をつけよう。
 このオレの右腕に宿る力とおまえの剣とどちらが上かをな!」
「いくらおまえの隠し持っている力がすごくても
 おれの全パワーをこめたこの一撃にはかなわないはずだっ!」
「…だが同時にオレも試させてもらうぞ!!
 神が造ったと言われる究極の生物、竜の騎士の一撃で…
 超魔生物ハドラーの戦闘兵器としての完成度を…!!」

竜対超魔

「フフッ…そうだダイ、オレも持っているんだよ。
 おまえの剣に勝るとも劣らない伝説の武器……破邪の剣をな!」

ダイの剣対覇者の剣

「うけよっ、ダイ!!!
 覇者の剣をあやつったこのハドラーの一撃を!!!
 超魔爆炎覇!!!!」
「ダイーーーーーーーッ!
 逃げろおおおっ!!!」

「……瞬間移動呪文か。ポップめ、見かねてダイを救いおったな」

激する泰然

”なんでもいい!!一瞬で全闘気と魔法力が爆発する技をーーーーーっ!”
「超魔爆炎覇!!!!!」
”ギガブレイク!!”

子竜の稲妻

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