W.E. tubes Part 2

 

Left to Right CW-101D、102D、104D、205F、VT25A and VT52

WE100'sWE205F

 左から、海軍用のCW-101D、102D、104D、205F、VT25A、VT52 です。
 Part1で紹介しました丸球101、102、104および205シリーズの後継品ST管バージョン(1930年代末から順次登場)です。 ST化されてからも改良は行われたため、101シリーズでは、101Dの他 F,FA,L,M などが、102シリーズでは、F,L などが製造されました。 これらも紹介しようと思いましたが、どれも外観は同様ですので、止めておきます。
 丸球でもそうでしたが、102シリーズ以外の各シリーズとも電極の各パーツは、全て共通の物を使用(102もプレートが少し短いだけ)しています。(205Fが少し小さく見えますが、これは撮影位置の関係からで、もちろん101Dなどと同じ大きさです。)
 なお、写真の102D104Dは、ベースにプリントが見られませんが、これはいわゆるトップマークと呼ばれる時代の球のためです。 トップマークの時代(刻印の時代と大体重なります)の真空管には、型番などをベースに刻印する替わりに、ガラスグローブの頂部に銀または灰色でプリントされました。 あまり知られていないかもしれませんが、このトップマークで面白いのは、製造時のロットをまるで暗号のように 組み込んで有る事です(一部例外もあります)。(詳しくは、別途項目を設けて説明させていただきます)
 やはりWE社でも品質管理などの目的でロットを(人目に付かないように?)記入しておく必要が有ったのでしょう。 刻印の球も社内的には、ロットの特定が出来たと考えるのが自然かもしれません。
 よく分からないのは、型番によりトップマークが採用されたりそうでなかったりしている点です。 例えば、ここで紹介しています101Dから205Fは採用しており(他に310A/B、350Bなど)、274A/Bや300Bは採用していないようです。
 VT25AVT52に関しては、それぞれ10系、45系で既に紹介済みですので改めての説明は省きます。 写真のVT25A は、茶ベースの物ですが、白のセラミックベースの物も有ります(10系をご参照下さい)。
 また、VT52にもVT25Aと同様茶ベースに刻印の物もありますが、セラミックベースの球はまだ見たことはありません。 このVT52 は、出力の点を除けば、WE社でも屈指の出力管と言えます。
    


 

252A of the 1930-1950s      

WE252A
 WE252A は、1930年に登場しました。 同社の本格的オーディオ用出力管の第1号的存在です。
 また、この252A は、日本がまだバブリーな頃、日本人を含むアジア系のバイヤーが全米くまなく買い付けを行ったため、一時絶滅したのではないかと噂された有名な真空管です。 確かに希少になった真空管ですが、現在では時たま市場に現れるようになりました。
(現在では米国がバブル状態で、アメリカ人バイヤーが血眼で買い付けています。 いずれ本当に幻の真空管になってしまうのでしょうか。)
 左は発売当初のタイプで、最大の特徴は、メッシュのプレートを採用している事でしょう。 ニッケル?のメッシュにカーボン処理を施して有ります。 メッシュプレート表面をカーボン処理するのは、欧州管ではたまに見られますが、米国では珍しくWE社の真空管では、この球だけと思います。
 なお、カーボン処理を行うのは、プレート表面の熱放射効率を高めるための工夫で、こうすることで同じ表面積でもより多くのプレート損失を得られます。 300Bをはじめ多くの真空管のプレート表面が黒く見えるのは、このカーボン処理がなされているためです。
 中央の252Aは、数年後の通常の板プレートに変わった時代の球です。 プレートの形状(あんどん型)と大きさは、旧型とまったく同じです。
 余談(どうでも良いこと)ですが、この時代(1930年代前半)のWE社のベースは、同じ刻印でも本当に文字が刻まれています。 それ以後は、焼き印のような感じに変わります。(WE社以外のメーカーは、最後まで真面目に? 文字を刻んでいます。)
 最後は、戦後のプリントベース時代の252A です。 プレートを支持する4本のピラーを固定するセラミック材など内部の構造はまったく同様ですが、外観上細身のナス管に変わっています。
 



 

Left to Right 268A、271A(earlier type)、271A、275A(earlier type)、275A

WE271AWE275A

 左から、268A、271A 刻印、271A、275A 旧型、275A です。
 268A は、あまり知られていない真空管かもしれませんが、252Aの翌年(1931)に登場しました。 WE社では、分類上送信管とされていますが、A級で使用できるオーディオ用にも適した球です。
 プレートとグリッドは、円筒状で、その中心に大きく螺旋を画くようにフィラメントが納まっています。 外観は、次の271Aと同一サイズ(252Aの戦後の物とも同じ)のナス管形状で、個性的な趣のある真空管です。
 次の271A は、一般的にめずらしい傍熱タイプの3極出力管で、252Aの翌々年(1932)に登場しました。 271A以前にも傍熱3極出力管は存在しますが、米国、欧州ともこのタイプの真空管は、種類が少なく、この271A はその代表例と言えると思います。
 プレート、グリッドは、268A 同様円筒状で、中心部にWE社特有の極太カソードが有ります。 また、プレート上部のセラミック板で、それら電極を固定してあります。
 この271A は、トーキー用などの業務用アンプの他、幅広い分野で使用されたようです。 なお、初期のものは、252A 旧型と同じ太いナス管形状をしていたようでが、当ギャラリーではまだ確認出来ていません。
 次の275A も1932年に発表されました。 左側は、当初の旧タイプで、ナス管形状をしています。 ガラスグローブの大きさは、245 と同じ大きさです。(因みに245は、1929年に登場) また、プレートの大きさは250 と同じくらいです。 ただ、275A も業務用真空管であるため、プレートなどの各支持ピラーも可成り太めの物を使用しており、ガラスステム等の加工精度も同時代の民生用真空管とは比較にならないくらいです。 もっとも、コストを度外視した業務用管を価格も重要な要素となる民生管と比較するのは、酷かもしれません。
 この旧型管は、252A 等と異なり数年後(少なくとも1936年以前)には右のようなSTタイプに変更となりました。 この為、旧型管はあまり残ってないようです。
 ST管に変更後も各電極の仕様や構造は、ほぼ同一のものを使用しています。
 275A も業務用アンプの他、軍用の各システムなど多用途に用いられました。
        


 

Left to right 300A、300A(later version)、300B

WE300A  左から300A、300A(改良型)、300B(刻印) です。
 300A は、1933年に登場しました。 WE社のトーキー用アンプ全盛期の主力となった真空管です。 有名な300B の原形で有ることは言うまでもないと思います。
 左の300A は、発売当初の頃の球です。 後の300B と比較してこの頃の300A のガラスグローブは、少しばらつきが有り、若干大きい(背が高い)ものが多いようです。 原因はよく分かりませんが、ST管が登場したばかりで、まだその作業行程に習熟出来ていなかったせいかもしれません。 (RCAでも同じ年に多くのST管シリーズを発表しました)
 外観上の特徴としては、プレート上部のマイカの形状が、WE特有の三角おむすび型でなく、小判型の物で、その外縁の数カ所の突起でガラス内壁に密着するようになっています。 また、フィラメントの吊り金具の構造も300B より少し手の込んだものを採用しています。
 中央の300A は、1930年代中頃に出された改良型です。 電気的特性は同様ですが、物理的に若干改良されています。 1番目に付くのは、プレート上部のマイカが、お馴染みの三角おにぎり型になり、3枚のマイカ板でガラス内壁に密着させ電極をより安定的に支持できるようになっています。 また、下側のフィラメント支持金具(3カ所)もハトメのような金具で下側のマイカに直接固定(旧型はマイカを貫通しステムからの支持金具に固定)するようになりガラスステム周りがスッキリしました。  (これらの改良点は、300B にも引き継がれています)
 なお、フィラメントの吊り金具の構造は、旧型と同じです。 この後300B が出てきましたので、この改良型の方が旧型より数は少なかったようです。
 300B は、1938年に300A の後継品として登場しました。 この頃WE社は、トーキー部門からすでに撤退していましたが、かなりのシェアを獲得していたため、300A の代替え用にかなり需要は有ったようです。 また、トーキー以外の業務用アンプの他、軍用など幅広い分野で使用され、1988年まで生産されました。
 300B からフィラメントの吊り金具は、より簡略化されたカンチレバー式に変わっています。 また、下側マイカの中央部にマグネシアを塗布(写真で白く見える部分)するようにもなりました。 これは、通電により金属部の一部が気化しマイカ表面に次第に付着する(電極間の絶縁性が低下)ようになりますが、これを塗布する事で表面を凸凹にし(結果的に電極間の距離が長くなります)特性劣化を抑えるための工夫です。
 この下側マイカの中央部だけマグネシアを塗布する方法は、戦後のプリント時代も同様で1950年代末頃まで続きました。 日本で300B オールドと呼ばれるのは、この時代の300B のことです。(それ以後は、全面に塗布されるようになりました。)
    


 

Left to right US ARMY 300B、US NAVY 300B and 300B(TUNG-SOL version)

WE300B
 左から米国陸軍用300B、同じく海軍用300B、そしてTung-sol 製300B です。
 WE社は、軍にも多くの真空管を供給していました。 300B も例外ではありません。
 左は、第二次大戦中陸軍向けに出されたいわゆる ARMY 300B で、写真の物は1945年に納入された物です。 この球は、刻印ではなく、ゴシック体の黄色のプリントです。
 300B(他の球も同様と思います)に関して、刻印ベースからプリントベースに代わった時期は、第二次大戦の後半からのようです。 この時期次第に移行したようで、この頃は刻印のイメージをそのままプリントしたような感じでした。 また、刻印ベースにさらにプリントをした物も存在しました。
 なお、お馴染みのライトニング(稲妻)ロゴのプリントが登場するのは、1946年からとなります。
 中央の海軍用300B は、1940年代末から数年間海軍向けに供給された NAVY 300B (ライトニングロゴを使用)です。 時期的に朝鮮半島での戦争と重なりますので、特に軍向けに供給された物のようです。
 これら軍用の300B も外観上は、同時期の物と何ら変わりはありませんが、出荷時の検査はより厳格になされていたのかもしれません。
 最後の Tung-sol 300B ですがちょっと頭の痛くなる球です。 細部の特徴から1950年前後の製品と思われます。 ただ、外観上同年代のWE社製300B と区別するのは不可能です。(恐らく識別出来る方はおられないと思います) WE社がTung-sol社にOEMで供給したとも思えず、そうなるとTung-solによるライセンス生産品となりますが、こんなに同じ物が造れるものでしょうか。(GEなども300B を一時製造したという話は聞いたことが有りますが、現物を確認したことは有りません。)
 この辺の事情に詳しい方がおられましたら、ご教授願えませんでしょうか。

 同じくWE社の大型管211、242系統につきましては、次回以降まとめて紹介出来ると思います。
 



TUBE DATA
ITEM	Vf(V)	If(A)	Va(V)	Vg(V)	Ia(mA)	Ri(ohm)	Gm(mA/V	u	Ra(ohm)	Po(W)	Pa(W)	 	
205F	4.5	1.6	325	-18	32	3500	1.75	6.0	5750	1.75	
252A	5.0	2.0	450	-60	60	1500	3.45	5.1	3000	6.9	
268A	5.0	3.25	750		25		0.80	5.0			25
271A	5.0	2.0	400	-30	37.5	2830	2.92	8.3	4000	2.8	
275A	5.0	1.2	250	-60	53	1000	2.78	2.8	2000	3.1	17
300A/B	5.0	1.2	300	-61	60	700	5.5	3.85	2400	6.6	40	

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