Rectifiers (Part 1)

 

Left to right G4400(VALVO), G4004(VALVO), (274A)

G4004  左からVALVO のG4400、G4004 それにサイズ比較のためのWE274A(以下同じ)です。
 左のVALVO G4400 は、社名をまだRadiorohrenfabrik としていた頃の旧型管で、ブランド名をVALVO としていました。 この頃(1930年前後)は、そのロゴは、ガラスグローブ頂部にエッチングで記入されていましたが、後年右のG4004 の様に側面に画かれるようになります。(この辺は、同じドイツのTELEFUNKEN も同様です)
 外観は、英国のPX25 ナス管などに良く似ていますが、全体に少し大きめです。
 内部は、損失が25Wは有りそうに見える大型のプレートが2枚(両波です)入っています。 プレート表面は、その剛性を高めるためでしょう、無数の突起が付けられています。
 この様な大型整流管を見る度に、グリッドが入っていれば(3極管だったらいいのになと言う意味)と思ってしまいます。 勿論、その様な球は実在しませんが。
 右は、同じくVALVO のG4004 です。 このG4004 は、特性的にG4400 と同じで、その後継品種かもしれません。 
 PHILIPS 系固有のST管形状で、ナス管の頂部に小型のドームを取り付けた様な外観をしています。 同様の形状の出力管F410(BF25) よりも一回り以上大型のLK4250(4641)と同じガラスグローブを採用しています。
 内部構造は、G4400 と基本的に同じで、プレートも同様に大型のものですが、ドーム部分でマイカ板を介して電極を支持するよう改良されています。 同時期(1930年代中頃)で同程度の(少しG4004 の方が容量的に大きいですが)米国製整流管5Z3(後にオクタルベースの5U4G に発展)と敢えて比較するとスケール的に両者の余りの違いに驚いてしてしまいます。 ただ、このG4004 も後年(戦後?)5Z3 程度にサイズダウンされました。
 G4004は、PHILIPS グループ各社でも製造されていて、本家のPHILIPS では1817 、フランスのRTではV30 の型番でそれぞれ呼ばれていました。 また、TELEFUNKEN にもRGN4004 という同規格の整流管が存在しましたが、こちらはG4004 より小型のナス管(後にST管)となっています。



 

Three versions of DC1/60(Philips)  

DC1/60  PHILIPS DC1/60 の年代別3タイプです。
 並びが逆になりましたが、左から2番目が一番古いタイプ(1920年代末?)のようです。 このDC1/60 は、各電極を支持する構造材兼絶縁材にガラス棒を多用(計8本)し、かなり複雑な構造となっています。
 サイズ的には、同社の大型3極管MC1/50 やTELEFUNKEN のRS237 などと同一ですが、高さは少し短めです。 プレートは、米国の50とほぼ同サイズのニッケル製平形のもの(2枚)となっています。
 ベースは鉄製で、UV タイプのロングピンと言う欧州管固有のもの(他のDC1/60 も同様)です。
 左のDC1/60 が、旧型のガラス材に代わりセラミック板を採用した改良版(1930年代)です。 ニッケル製のプレートも少し大型の物となり、同じ素材でプレート側面をしっかり支持する構造に変更されています。 また、ガラスの直径も米国の211並みにサイズアップされています。
 同年代の欧州製大型3極管と同様大変丁寧に造られているため整流管では勿体ないように感じてしまう真空管です。
 3本目のDC1/60 は、更にST管時代になってからのものですが、その外形はPHILIPS 固有のST形状をしています。
 プレートは、3mm 位有るセラミック板で上下から固定されていて、ガラスも厚手のしっかりした物を採用して有ります。
 プレート自体は、米国製整流管に良く見られる1枚成型タイプに変更されていて、サイズは別として右の(サイズ比較用)WE274A に大変良く似ています。
 因みに、このDC1/60 のフィラメントは、2.2V(4A) という欧州管でも特殊なもので、他の例としては、超高耐圧整流管にごくわずか見られる程度です。
             


Left to right RZ1-150(Mullard), DE2/200(Philips)

RZ1-150  左からMULLARD RZ1-150、PHILIPS DE2/200 です。
 RZ1-150 は、写真でもお分かりのように、英国の大型管に一部採用されたL4タイプのベースを持つやはり両波整流管です。
 外観的には、同社の大型3極管DO60 (DA60系)と同じサイズの真空管です。
 因みに、英国のメーカーは、今回ご紹介しているような大型の(高耐圧)両波整流管をあまり生産しなかったようですが、PHILIPSグループのMULLARD は、2〜3独自に造っていたようです。
 プレートは、1枚成型タイプで、表面はカーボン処理されて有ります。 大きさは、前出のDC1/60 STタイプとほとんど同じです。
 また、プレート上部のマイカ板を二重にし、絶縁性を高めるなど高耐圧対策が随所に見られます。
 次のDE2/200 も大変ユニークな真空管と言えます。
 その外観から、最初にこの球を見たとき、昔買ってもらったブリキ製のロボットのおもちゃを連想してしまいました。
 ガラスグローブの最大直径が75mmぐらい有り、ST形状の真空管としては、最大クラスと思われます。
 大きな特徴として、2枚のプレートが他の整流管のように平行ではなく、1方の軸を90度ずらして取り付けられています。 これは、プレートからの放射熱を双方でかわすための工夫と思われますが、極めて異例な構造と言えます。 この為でしょうか、電気的容量の割にプレート自体は少し小さめとなっています。
 フィラメントは、太めのスリーブに収められたフィラメントがプレート1枚につき2本づつ入っていて、一見傍熱タイプのようですが、これはエミッションの向上のためで、完全な傍熱管では有りません。
 上下の大型セラミック板でプレートを完全に固定し、フィラメントはその内側に更に設けたマイカ板により固定されて有ります。 その他にも耐震性を考慮した後が随所に見られます。 高耐圧設計のため各プレートのリードは、ガラスステム経由を避け管壁に直接取り出すようになっています。 この為、大型のベースにはフィラメント用のピンが2本有るだけで、欧米の高耐圧片波整流管に良く見られるタイプと同じです。
 おかしな形状ですが、なかなかどうして、見所の多い真空管です。
  


 

PV100/2000(Tungsram) and DC2/200(Philips)

PV100/2000DC2/200

 左がTUNGSRAM PV100/2000 右がPHILIPS DC2/200 です。
 PV100/2000 は、フィラメント電流を除き上のDE2/200 と同様の電気的特性を持つ真空管です。
 外観は、TUNGSRAM社の大型真空管に良く見られる緩やかにテーパーのかかった同社独特のナス管形状をしています。 2000Vの耐圧を確保するためでしょうが、一寸他では見られないような厚手のセラミック板を採用しています。
 また、STタイプが登場する前のナス管形状の球では、ガラスステムおよびその周囲でのみプレート他の電極を支持するようになっていますが、このPV100/2000 ではST管のようにプレート上部でも支持するように工夫されて有ります。 その方法は、両端を丸めた板バネ2枚を十字型にクロスさせて管壁に密着させるというもので、他の真空管では見たこともない手法と言えます。 効果のほどは別として、その努力は大いに買いたいと思います。
 プレートからのリードは、やはり直接管壁から取り出して有り、ベースにはフィラメント用にピンが2本有るだけ(B2ベース)です。
 右のDC2/200 もPV100/2000 と同規格の球ですが、外観は更に大型となっています。 今まで見た中では最大級のナス管と言えます。
 米国の211や845のガラスグローブをナス管にしたサイズと言えば大体想像してもらえると思います。
 内部構造は、やはり構造材兼絶縁材としてガラス棒を多用した初期型で、前出のDC1/60 旧型に酷似しており、1930年前後の製品と思われます。
 プレートは、ニッケル製で、それこそ金切りバサミを使い手で1枚1枚加工した後を感じさせる素朴な造りとなっています。
 実際に使用する場合、それなりの安全対策は必要ですが、プレート損失100Wクラスの出力管を使用したアンプに使用してみたい球で有り、また眺めるだけでも楽しい真空管です。
 


TUBE DATA
ITEM		Vf(V)	If(A)	Va(V)	Ia(mA)	
G4400		4.0	4.0	350	300	Fw
G4004		4.0	4.0	350	300	Fw
DC1/60		2.2	4.0	1150	70	Fw
RZ1-150		4.0	4.0	1000	150	Fw
DE2/200		4.0	4.0	2000	100	Fw
PV100/2000		4.0	2.25	2000	100	Fw
DC2/200		4.0	2.25	2000	100	Fw

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