PX25の各種同等管
Left to right PX25 earliest type(Osram), PX25 later type(Marconi), DET5 (Marconi)
PX25 tubular(GEC), PP5/400(MAZDA)
左からPX25旧型(OSRAM),PX25(MARCONI),DET5(MARCONI), PX25新型(GEC), PP5/400(MAZDA)です。
(PX4のところでも説明しましたが、OSRAM、MARCONI、GECは、それぞれMOV社のサブブランド名で、製造も全てMOVが行っていました。 上記の表示も余り意味は有りません。)
PX25は、米国の250発売から数年後(一般には1932年と言われていますが、もう1〜2年早かったかも)に登場したMOVのオーディオ用大型3極出力管です。 プレート損失も250と同じ25W(PX4の2倍強)ですが、その完成度と使いやすさでは、250を凌ぐ存在でした。
左のPX25旧型は、発売当初(1931〜1932年頃)のタイプで、ベースは1920年代のMOV社の旧型をそのまま使用しています。 また、MAZDA社と同じようにガラスの頂部に真空管の型番をプリントしていたのもこの時代の特徴の一つです。(PX4の最初期の物も同様です。)
右のPX25ナス管と比べますと、電極等のパーツは共通ですが、細部は少し異なり、特にグリッド部分は非常に緻密に仕上がっています。
右のPX25ナス管は、数年後登場した一般に良く知られたPX25旧型タイプです。 ベースもご覧のようにMOV社の新型ベース(このベースはGT管が登場するまで使用されました)に切り替わっています。 また、ゲッタも新型の物に代わっています。
なお、PX25は軍用にも多く使用されていました。 この場合、PX25と言う名称は使用せず、NR47または、VR40の各コード番号を記入して軍に納入されました。 (NR、VRは、それぞれ英国海軍および空軍用受信管のコード記号です)
次のDET5は、PX25から派生した送信管バージョンです。 プレート損失は、同じく25Wですが、プレート電圧は、MAX 600Vとなっています。 構造的には、送信管らしくプレートからのリード線をガラスステム下部から直接引き出しています。 また、グリッドの支持も2本のガラスサポート材を介して両側から(PX25は片側のみ)固定するようになっています。
ただ、これらの改良は、より高い周波数帯での使用を前提としたもので、オーディオ周波数帯では差違はなく、PX25として当然使用できます。 なお、軍用管としてのナンバーは、NT40(NTは、英国海軍用送信管のコード記号)です。
次のPX25新型管は、1940年頃に登場する改良版です。 最大の改良点は、プレート損失を30Wに強化したことでしょう。 また、プレート電圧もMAX 500V となり、当然最大出力もアップしています。
外観的には、MOV独特の通称ドームタイプです。 構造的には、能率を高めるためか、補助グリッドが有り、内部でプレートに接続されております。 また、上下のマイカ板により各電極をしっかりサポートする構造となり、耐震性はかなり向上しています。
なお、PX25は、PX4と異なりナス管からいきなりドーム管に移行したようで、STタイプの球は、存在しなかったようです。
最後は、MAZDAのPP5/400で、特性的にはPX25とほとんど同じです。 発売時期は、PX25より若干早かったようです。
MAZDAは、比較的早くから絶縁材にマイカを採用していますが、まだこの時代はST管の時代のように積極的に電極を支持する使用法ではなく、ご覧の様に各電極の支柱(ピラー)の間隔を一定に保つ為のものでした。
外観は、PP3/250(PX4系参照)同様ガラス部分の頂部がやや扁平なナス管形状ですが、PP3/250よりかなり大型の真空管です。
なお、MAZDA社は、PX25の新型管(ドーム管)に相当するタイプは、どうやら生産しなかったようです。 新型管に関して、他社からのOEM品も余り見かけたことがありません。(ただ、PP3/250に関しては、
新型管として、MullardからOEM品(ACO44と同じ)の供給を受けておりました。)
Three versions of DO24(Mullard)
左からMullardのDO24(最初期)とDO24ナス管2タイプです。
DO24は、Mullard社のPX25相当管です。
左のDO24は、その内の最初期の真空管です。 1920年代まで一般的スタイルであったトップ排気(トップシール)を採用した球ですが、発売時期は上のPP5/400とほぼ同時期です。 同社は、他社より遅くまでトップシールを一部で採用したようです。
写真では、分かりにくいですが、ガラス部分側面に最初期のロゴがエッチングで画かれています。
真ん中のDO24は、その後すぐに登場した、トップシールを改め、排気部分をベース内に納めた(ボトムシール)真空管です。 また、MOVとは反対に会社のロゴと型番がガラス頂部に移行します。
使用しているパーツは、旧の物と大体共通ですが、プレートを支持するピラーを4本追加し、補強が施されています。 プレート表面のリブの模様も同社独特の物です。 なお、リブとはプレートの剛性を高めるため設けられた凸状模様の部分の事で、ほとんどの真空管に採用されています。
なお、このタイプは、同社のこのクラスの直熱3極出力管(DO25等々)の基本形となっています。
右のDO24は、3本の内では一番新しいと思われる(会社のロゴで大体判定できます)真空管です。 プレートの形状は、実にMullardらしくなく、最初は他社製のOEM品かとも思いましたが、ガラス形状、使用パーツなどからやはり同社製の真空管である事が分かりました。
プレートの造りも非常に個性的で、4枚の板から出来ています。 (大体の真空管(PX25,PP5/400,300B等々)は、2枚の金属板を加工した物)
どこかで見たことがある構造なのですが、なかなか思い出せませんでした。 その後、ようやく思いついたのが、同時代の米国RAYTHEON社の真空管(いわゆる 4-pillar tube)で、構造は大変よく似ています。
なぜ急にこの様な構造を採用したのか、当時のMullard の技術者に聞いてみたいところですが、今ではそうもいきません。
大変興味深い真空管ですが、製造期間はあまり長くなかったようです。
Left to right DO24 tubular(Mullard), TZ05-20(Mullard), DO24 ST shape(Mullard)
左からMullard のDO24新型管、TZ05−20、DO24 ST管です。
DO24新型管は、PX25新型管と同時期に発売されたタイプです。 形状は、Mullard 独特の直管形状をしています。
新型管に関しては、正確なデーターを持ち合わせていませんが、プレートの大きさは、旧ナス管に比べ2割以上サイズアップ(DO30と同じプレートです)されており、PX25新型管同様プレート損失も30Wに改良されていると思います。 上下2枚のマイカ板で各電極をしっかり支持している点もPX25新型管と同様です。
次のTZ05−20は、厳密にはPX25系とは言えないかもしれませんが、DO24と同一デザインの送信管ですので合わせて紹介しています。
写真でも確認していただけるように、Mullardの初期のロゴ(トレードマーク)が印刷されています。 この事は、時代的に合わないのですが、送信管では例外的に採用されていたのかもしれません。
最後は、DO24のSTタイプの真空管です。 一応最後に紹介していますが、このタイプの方が直管より先に発売されていたかもしれません。
なお、この様に曖昧な表現になるのは、PX25系の新旧交代時期が、丁度第二次大戦が始まる前後であり、関係資料が大変乏しいためです。 当時、真空管も含め軍需に関連する最新資料を一般にあまり公開しなかったのは、考えてみると当然かもしれません。 それでも、現在当時の資料を探しておりますので、いずれ何か報告できるかもしれません。
外観に関しては、同社のACO44 と同じパーツを使用しているようですが、プレートは旧ナス管を若干小さくしたサイズの物が管内いっぱいに納まっています。 何か、急ごしらえと言った印象が、無くもありません。
Left to right F410(PHILIPS), TF104(DARIO), LK4200(VALVO)
左からF410(PHILIPS)旧型管、TF104(DARIO)、LK4200(VALVO)です。
F410は、オランダ、フランスにおけるPX25相当管です。 F410は、日本では最初にBF25と紹介されたため(何故そうなったかはいずれ機会がありましたら説明したいと思います)あまり聞いたことがない方も多いかもしれませんが、逆に海外においてはBF25では全く通用しません。
左のF410は、本家オランダPHILIPS社の旧型管です。 発売は、他のPX25系と同時期です。
写真で確認していただけると思いますが、構造上の特徴は、プレート両面の補強も兼ねた大型のプレート支持材と、グリッドのピラーを支持している2つの小型碍子(ガイシ)の存在です。 特に碍子は、当時のPHILIPS系古典管共通の特徴です。 また、フィラメントの点火方法も独特ですが、説明が長くなりますので止めておきます。
中央は、F410のフランスタイプの新型管でDARIOのTF104です。 なお、DARIOは、フランスRT社(この頃にはPHILIPSの傘下に入っていました)のブランド名で、PHILIPS同様旧型管(型番はTF10)も生産していましたが、外観は同様ですので省略しています。
TF104は、電気的特性も基本構造もPHILIPSのF410と同様です。 ただ、本家PHILIPS の物は洗練された造りであるのに対し、TF104は、職人さんの手仕事の後が感じられる素朴な造りとなっています。(フランス古典管共通の特徴です)
LK4200もF410と同じ特性で、ドイツのVALVO社の製品です。 同社もやはりこの頃にはPHILIPSの傘下に組み込まれていました。
外観は、VALVOらしいなで肩のST形状です。 内部の構造も他のF410と共通ですが、何故かプレートは少し幅広の物を使用しています。
当時 VALVOは、この他にもPHILIPS系の真空管を各種生産していました。 それらの真空管に関しても、いずれ紹介できればと思っております。
Left to right P27/500(Tungsram), TC05/25(PHILIPS)
左からP27/500(TUNGSRAM)、TC05/25(PHILIPS)、(そしてサイズ比較のための300B)です。
P27/500は、英国TUNGSRAM社の製品でPX25新型管に相当する真空管です。 かなり大型のST管で、右の300Bが少し小さく見えるくらいです。
プレートは、300Bに大変よく似ていますが、2割ほど大型と言った感じです。 おまけに両面にコの字型大型放熱板が設けられています。 全体に非常に頑丈な造りの真空管です。
同社は、当時 P27/500以外にも多くの直熱3極出力管を発表しましたが、プレート損失30W強のクラスまでこのプレートを使用しています。 次のTC05/25 も同様ですが、残念ながら最近はあまり見かけることが出来なくなった真空管の一つです。
次のTC05/25は、PHILIPSの送信管ですが、オーディオ用に使用した場合PX25に大変近い特性が得られますので、ここで紹介しています。 やはり大型で独特のST形状の真空管です。
なお、写真の真空管には旧ドイツ空軍マークがエッチングで書き込まれて有ります。 第二次大戦前にPHILIPSがドイツ軍に納入した物か、その後占領下の工場で生産された物か分かりませんが、他にもドイツ軍用に使用されたPHILIPSの真空管は、何点か見かけた事が有ります。 当時のヨーロッパの複雑な情勢をかいま見た様な気がします。
PX25系の発展型とも言えるDA30系に付きましては、後日ご紹介したいと思います。
各真空管のデーターを下に示して有りますが、詳しくは、TUBE & VALVE DATA をご参照下さい。
TUBE DATA
ITEM Vf(V) If(A) Va(V) Vg(V) Ia(mA) Ri(ohm) Gm(mA/V u Ra(ohm) Po(W) Pa(W)
PX25 4 2.0 400 -31 62.5 1265 8.0 9.5 3200 5.5 25 旧型管
PX25 4 2.0 500 1K ohm 50 1265 7.5 9.5 5500 8.5 30 新型管
DET5 4 2.0 600 1265 7.5 9.5 25
PP5/400 4 2.0 400 -32 62.5 1220 7.2 8.8 2700 6.0 25
DO24 4 2.0 400 -34 63 1390 6.5 9.0 4000 25 旧型管
F410 4 2.0 550 -36 45 2500 4.0 10 7000 5.9 25
LK4200 =F410
P27/500 =PX25
[HOME/GALLERY]