12A - 71A系各種同等管

 

Left to right UX112(RCA),UX112(ARCHATRON/KEN-RAD),GSX112(GOLD SEAL)

UX112  左UX112(RCA),UX112(ARCHATRON),GSX112(GOLD SEAL)です。
 真空管が登場する前、白熱電球の生産で既にメジャーになっていたGEとWESTINGHOUSE両社の新たな商品 真空管を販売するために設立した商社がRCAですが、そのRCAから発売された最初の出力専用管が、UX112 です。
 UX112 は1925年頃UX120 とほぼ同時に発表されました。 設計はやはりWESTINGHOUSE社です。 
 プレートはニッケル製で、酸化被膜タイプのM字型フィラメント(2本吊り)を採用しています。 なお、プレート表面には通常の円形リブマークの他にRCA のロゴも浮かび上がるように入れて有ります。 このことはその後の製品には見られず、かなり珍しい例と言えます。
 このUX112 は、2年後にフィラメント電流を半分にした改良型であるUX112Aが登場したため、短命な存在となりました。
 次のARCHATRON UX112 はKEN-RAD社の最初期頃の製品と思われます。 外観はRCA UX112 と同様ですが、プレートのリブ模様が直線のシンプルな物(下のSTタイプ112A参照)となっています。 ちなみに、この時代(1920年代中頃)どの(米国)メーカーも申し合わせたように同様の円形リブマークを使用していました。
 3番目は初登場のGOLD SEAL社のGSX112 です。 この時代まだ米国でもごく少数ですが、独自のバルブ形状を採用したメーカーが存在しました。 このGOLD SEAL社もそうしたケースで、後に登場するGT管を膨らませたような独特のガラス形状を採用しています。 また画像には写っていませんが、社名にもあるようにリボンをイメージした綺麗なデカールが貼って有ります。
 この頃から次第に激しくなる過当競争を意識して、他社との差別化を図る戦略で有ったのかもしれません。
 画像では判りにくいかもしれませんが、これら3本とも(後に標準となる)通常の物よりかなり長いベースを採用しています。 これは、当時のUXソケットが円筒形で真空管を差し込んで回転させ固定する形式でした。 この為長いベースの方がツカミシロが取れ、真空管の破損も防げる利点が有りました。 ただ、このタイプのベースはごく短期間使用されただけで普及する事は有りませんでした。
 


 

Left to right UX112A(RCA),012A(ARCTURUS),112A(RCA)

112A  左からUX112A(RCA),012A(ARCTURUS),112A(RCA)です。
 左はUX112 の後継種UX112A で1927年にRCA から発売されました。 内部の電極は細部を除いてUX112 と同様ですが、フィラメント電流が半分になっていますので、フィラメント自体かなり細くなっています。 外観的にはベースが短くなった分バルブを長くして有ります。
 UX112A の規格に関して、RCA の元箱には最大プレート電圧157.5Vとして有ります。 ちょっと中途半端は値ですが、これは旧のUX112 と同じ値です。 ただ、この頃には既に最大180Vとした資料も有りますので、少し控えめに発表していたのかもしれません。
 次は青ガラスの真空管で有名なARCTURUS社の012A です。 表面を青く塗装しているのではなく、ガラス自体青色の物を使用しています。 透き通るようなコバルトブルーが魅力的な真空管です。
 同社の型番ですが、何故か頭の数字が他社の物より1小さく付けていました。 例えば245 であれば145 としていました。 従ってこの球も012A となるわけです。
 米国では、1930年前後この他にも青ガラスを使用したメーカーが何社か有りましたが、このARCTURUS が飛び抜けて有名でした。 機会がありましたらまとめて別途紹介したいと思います。
 最後は、ST管に改良された112A で写真の物はRCA Victor 表示の球です。 ST管時代には型番が12A に変わるのですが、何故か112Aは、ST管になっても旧表記が他の真空管より長く使用されています(写真の物も刻印ではなくプリントベースです)。
   


 

Left to right UX171(RCA),DC171(MAGNATRON),71A(RCA)

UX171  左からUX171(RCA),DC171(MAGNATRON),71A(RCA)です。
 UX112 と同時期にやはりWESTINGHOUSE で開発されたのがUX171 で、実際に登場したのは1926年です。 UX112 のパワーアップ版とも言えます。
 外観上もUX112 とそっくりですが、UX171 の方はフィラメントにトリウムタングステン(通称トリタン)を使用しています。 この為点灯すると結構明るく光ります。
 写真の物は、後に登場するUX171A と外観が同じタイプですが、前出のUX112 同様ロングベースで短いガラス形状のタイプも有ります。
(UX112, UX171 とも同様ですが、ゲッタがほぼ全面に飛んでいるケースがほとんどで、内部もほとんど見えないのですが、出来るだけ内部の見える球をセレクトして有ります)。
 当時としては結構パワーの取れたUX171 ですが、早くも同じ年に改良型のUX171A が登場したため、UX112 以上に生産数の少ない真空管となりました。
 次にRCA以外のUX171 の例として、MAGNATRON のDC171 を紹介します。 少し変わった外観で、ベース上部に外部電源接続用と思われる端子が取り付けて有ります。
 この時代各メーカーともあれこれ知恵を絞って他社との差別化を図っていたようですが、このDC171 もそうした例かもしれません。
 なお、このMAGNATRON ブランドを使用していたCONNEWEY ELECTRIC LABORATORIES社は後に他の3社とNATIONAL UNION社を設立しています。
 最後は、フィラメントを酸化被膜タイプに変更しフィラメント電流を半分にした改良型の(と言うかこちらが一般に知られた)UX171A です。 写真の物は、RCAブランドでナス管からST管への移行期に作られたタイプです。 プレートはST管にも使用されることになるシンプルなデザインのものです。 また、型番もST管同様71A として有ります。
 出力が1W未満の小出力ながら171A からST管の71A へ発展し、戦後も活躍したのは、71A の持つ素性の良さがあったからと思います。




 

Left to right PA171A(PERRYMAN),171A(NATIONAL PRODUCTS),471B(De Forest)

171A  左からPA171A(PERRYMAN),171A(NATIONAL PRODUCTS),471B(De Forest)です。
 米国の場合、ナス管時代の後期ぐらいになる各メーカーとも申し合わせたように同じような真空管を製造するようになり、メーカーの個性というもの見られなくなります。 ここでは、そうした背景の中で敢えて個性を出していた例を紹介します。
 左はPERRYMAN のPA171A です。 同社は比較的早い時期に市場から消えてしまったメーカーですが、大変しっかりした個性的な真空管を造っていた会社です。
 PA171A も受信管としては珍しく電極支持にセラミック板(結構厚め)を採用して有り、また繊細なコイルスプリングでフィラメントを吊るようになっています(フィラメントの固定方法も含め当時特許を取得していました)。 同社はメッシュプレートを多用するメーカーでもありましたので、初期タイプにはあるいはメッシュプレートタイプも有ったかもしれません。
 次の171A はNATIONAL PRODUCTS というあまり聞かないブランドの真空管です。 なんと言っても171A としては異様に大きなプレートを採用しています。 通常より5割近く大きなプレートで、この様なタイプは(171A では)他に見たことがありません。 PA171A 同様後期型のシンプルなプレートになっています。
 171A のフィラメント電流を更に半分にした省電力バージョン171B も存在しました。 最後にその例としてDe Forest の471B を紹介します(何故型番が471Bになるかは以前紹介しましたので省略します)。 写真のように初期型の円形リブプレートをしています。
 ただ、この省電力のBバージョンですが、何故かあまり普及することはありませんでした。
  


TUBE DATA
ITEM	Vf(V)	If(A)	Va(V)	Vg(V)	Ia(mA)	Ri(ohm)	Gm(mA/V	u	Ra(ohm)	Po(W)	Pa(W)	 	
UX112	5	0.5	157.5	-10.5	7.9	4800	1.67	8.0			
UX112A	5	0.25	180	-13.5	7.7	4700	1.8	8.5	10.65K	0.285	
UX171	5	0.5	180	-40.5	20.0	1750	1.7	3.0	4.8K	0.79	
UX171A	5	0.25	180	-40.5	20.0	1750	1.7	3.0	4.8K	0.79	
UX171B	5	0.125	180	-40.5	20.0	1750	1.7	3.0	4.8K	0.79

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