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 公開日 :2000年 6月 17日
 

【論文紹介】

オービスによる写真撮影の合憲性

 

【はじめに】

これは、偶然にであった一論文、小早川義則(名城大学教授)「自動速度監視装置による写真撮影の合憲性--最高裁昭和六一年二月一四日第一小法廷判決をめぐって」『ジュリスト』八六一号(一九九八年六月一日)八〇〜八四頁についての覚書ノートです。そのため、言い回しを代えている部分ももちろんありますし、強調書体や下線を、読みやすくするために加えています。

より詳しい内容を知りたい場合は、この論文に直接あたるか、
該最高裁判決全文該最高裁判例に関するその他の評釈、【文献】にあたってください。



【固定式自動速度監視装置の特徴】

1976(昭和51)年ころから高速道路を中心に全国で速度違反の取締りに活用されている。

(1) 速度検出部と(2) 監視記録部がある。(1) 二本の感知器(センサー)が、1.14メートルの間隔をおいて道路上に埋め込まれている。車両がその上を通過すると、その車両の踏力が電気信号に変換され、高さ1.3メートルの道路脇の電柱上に固定された (2) 監視記録部に送られる。二本のセンサーの区間を通過した時間がコンピューターによって時速に換算され、それが予め設定された速度を超えている場合には、監視記録部のカメラと金赤外光線ストロボが自動的に作動、当該速度超過車両を前方から写真撮影する。車両のナンバープレートと運転者の容貌等を撮影すると同時に、その日時、場所、及び測定走行速度等も写真に記録する。(八〇頁)

オービス。の特徴は、その
測定距離がわずか1.14メートルで瞬時に違反車両の走行速度を算出し、運転者(及び同乗者)の顔写真をほぼ真正面から撮影することにある。(八〇頁)

→【
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[参照]
・いわゆるネズミ捕り方式等による定置式測定方法
・パトカー・白バイによる追尾式測定方法




判決全文

審級
一審 東京地判昭和五九年一月一二日
原審 東京高判昭和七月一七日(判時一一三八号一五五頁)


■本判決の意義

オービス。類似の自動速度監視装置(RVS)による運転者(及び同乗者)の容ぼうの写真撮影の合憲性が争われた事案につき、憲法に違反しないことを明らかにした最初の最高裁判例である。(八〇頁)



■評釈

「自動速度監視装置による速度違反車両の取締り方法が最高裁によって合憲とされた意味は大きい」。しかし、その
適法性を是認してきた一連の下級審判例、学説が、「暴走運転のような過度の速度違反の捕捉に限定し、たとえば、軽微な速度違反の写真撮影などは直接憲法一三条に違反することを指摘していることに注意しなければならない。この点、本件が、最高制限速度を四〇ないし五〇キロメートル毎時程度以上超過した車両のみを捕捉すべく設定されていた道路を一二一キロメートルないし一三四キロメートル毎時で運転した事案であることは注目されてよい。」‥自動速度取締り装置は「多目的に使用することが厳禁されることはもちろん、その運用いかんによっては違法、違憲となりうる捜査方法であることを常に銘記しておかねばならない。」(八四頁)



【文献】

小早川義則(名城大学教授)「自動速度監視装置による写真撮影の合憲性--最高裁昭和六一年二月一四日第一小法廷判決をめぐって」『ジュリスト』八六一号(一九九八年六月一日)八〇〜八四頁・注に記載されていた文献(年代の古いもの順)

■違憲説

  • 庭山英雄「オービス。事件の研究(1)、(2)」『中京法学』一三巻四号三二頁、一四巻一号二六頁(一九七九)。
  • 庭山英雄「写真撮影と肖像権」『刑事訴訟法の争点』八六頁(一九七九年)
  • 庭山英雄「アメリカのスピード違反取締り方式」『法律時報』五一巻四号一二四頁(一九七九年)

■合憲説または判例支持説

  • 青柳文雄「オービス。の合法性--昭和五五・一・一四東京簡裁判決を中心に--」『警察公論』三五巻五号三四頁(一九八〇年)*
  • 荒木伸怡「スピード違反の取締りについての覚え書き (上)、(中)、(下)」『警察研究』五〇巻九号五八頁、一〇号四八頁、一一号三四頁(一九七九年)
  • 荒木伸怡「オービス。事件判決を読んで」『警察研究』五一巻五号四〇頁(一九八〇年)。
  • 板倉宏「自動車無人レーダ速度監視装置(速度速愛知カメラ・オービス。)による写真撮影等の適法性」『ジュリスト』七一五号六六頁(一九八〇年)
  • 渡辺修「犯罪捜査と写真撮影(ノート)--オービス。判決を契機として--」『神戸学院法学』一一巻二号一頁(一九八〇年)
  • 中神正義「オービス。(速度違反自動取締装置)による速度違反の検挙が適法とされた事例 (上)、(下)」『研修』三八三号六七頁、三八四号七七頁(一九八〇年)
  • 増井清彦「証拠収集と立証の新展開 (1)」『現代刑罰法体系 (5)』二八一頁(一九八三年)
  • 佐々木正輝「オービス。による検挙が不合理な捜査方法でないとされた事例」『捜査研究』三五巻一号三五頁(一九八六年)
  • 椎橋隆幸「オービス。(速度違反自動取締装置)による速度違反の取締方法が適法とされた事例」『判例時報』九八二号二〇九頁(判例評論二六三号四七頁)(__年)


*は、昭和五五年一月一四日東京簡裁判決(判例時報九九五号二一頁)にて、弁護側の証人となった庭山教授とおなじく、検察側の証人となった青柳教授の文献なので、1980年のものですが、一番上に書いています。




【裁判例】

小早川義則(名城大学教授)「自動速度監視装置による写真撮影の合憲性--最高裁昭和六一年二月一四日第一小法廷判決をめぐって」『ジュリスト』八六一号(一九九八年六月一日)八〇〜八四頁・注に記載されていた裁判例(年代の古いもの順)。下級審判例は適法なものとして実務上ほぼ一致している。この判決以降のものも含めた新しい例一覧を別頁に作成・記載しています。

  • 昭和55年1月14日東京簡裁判決(判例時報995号21頁、判例タイムズ406号67頁) [オービス。]

     ※昭和55年1月14日付け同裁判決は二つある。この表記は訂正する必要がある。
    *こちら*の一覧による出典を参照して頂きたい。(長尾)※

  • 昭和55年5月15日名古屋簡裁判決(判例時報974号137頁) [松下レーダー方式]
  • 昭和58年3月16日大阪地裁判決(判例タイムズ504号186頁)[オービス。]
  • 昭和58年4月25日東京高裁判決(判例時報1107号142頁) [RVS]
  • 昭和五九年二月二九日大阪地裁判決(判例時報1114号118頁)[オービス。]
  • 昭和59年5月11日最高裁第三小法廷判決(判例集不登載) [オービス。]
  • 昭和61年2月14日最高裁第一小法廷判決(判例集未登載) [オービス。]


 




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