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last update 15 August 1999


◆飼犬による他人の咬傷

 

加害者=犬の飼主

被害者=飼主に損害賠償を請求した、咬傷の被害者

弁護士(高橋保治氏)=加害者の依頼による示談交渉

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◇状況

自宅の(相当に広い)庭にて放し飼いにしていたテリアが、飼主の隙を見て門から外に飛び出し、門の前を自転車で通りかかった近所の主婦の足に噛みついた。診断によると、咬傷は全治一週間。被害者が飼主に損害賠償を請求。

◇賠償金請求の内容と根拠

・治療費と診断書作成費用--5000円

・既に支払って返還を受けられなくなった旅行費の補償--3万5000円

・精神的苦痛に対する慰謝料--16万円

 (精神的苦痛は、ロ犬に噛まれて痛い思いをした苦痛+ワ楽しみにしていた旅行に行けなくなったことに対して)

→合計20万円

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◇示談の内容

・治療費と診断書作成費用--5000円

・既に支払って返還を受けられなくなった旅行費の補償--3万5000円 *1

・治療に要した7日間について

 給料相当の損害分--7万円(一日あたり1万円)

 慰謝料--4万円

→合計15万円

*1 本来は、損害賠償の対象にはならない。

不法行為(本件犬を繋留しなかった過失による不法行為)に基づく損害賠償には、過失と損害の間に相当の因果関係が存在しなければならない。犬に噛まれて傷害を受けて働けなくなったことは、相当因果関係があると考えられるが、旅行に行けなくなったことは相当因果関係はなく、特別な損害にあたる。特別な損害は、このことを加害者が予見していた場合に限って損害賠償の対象となるものと考えられている。


高橋保治「人が犬に噛まれた」(損害と賠償(1))『時の法令』1597号(1999.7.16)64-65頁参照。


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