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■動物と法律とのかかわり

長尾 亜紀


近代国家の成立以降に限ってみても、英米では動物に関する法律は、わたしたちが想像する以上に多くあります。

たとえば、イギリスをみると、1800年から動物虐待(当時は主に、「
熊いじめ」といわれる、穴熊に対する虐待)を防止するための法案が提出*1され、最初の法制定(1822年)以後もその拡充に向けて運動がなされております。現在のHasbry's Law Statute(第四版) では、一巻がまるまる、動物に関する法で占められております。

また、アメリカでは、合衆国憲法の制定(1748年)よりも早く、1641年にthe Massachusetts Bay Colony legal codeが作られています
*2 。また、連邦においても動物虐待法をはじめ、各種の動物保護法が制定されていますし、現在では、サーカスを廃止する法について検討をはじめた市*3もあります。

これに対し、日本では、
動物の保護及び管理に関する法律(1973年)の一部を改正する法律制定(1999年)、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正7年)の一部を改正する法律(1999年)がなされ、種の保存法(1992年)もあります。また、文化財保護法(1940年・昭和25年)では、動物も保護の対象となっています*4。とはいえ、英米法と比較した場合に同様の内容をもつ法律と言いうるものは、ありません。

確かに、英米と日本を比べた場合、法律の数の多少には大きな違いはあるものの、動物が法的には単なる「もの」である状況_これをある著者(ワイズ)は著作において「法的物格」と称します_は、英米も日本も異なりません。したがって、動物の扱いをめぐる議論は、動物法が拡充した場合の先の話ではなく、現在の日本とも比較して検討することのできる問題だと思われます。


*1 W. Pulteney (1800年のbear baiting禁止法案)。Charles R.Magel, Keyguide to information sources in Animal Rights (Mansell,1989) at 53。英国では、熊いじめを
1835年法により禁止した。

*2 James J. Jasper and Dorothy Nelkin, The Animal Rights Crusade (New York: Free Press,1992),5.【注:Gary L.Francione,Rain Without Thunder :The Ideology of the Aniaml Rights Movements(Temple U.P.,1996) at.7. n.1よりの孫引き】

*3 この動きはアメリカ合衆国に限らない。たとえば、カナダ、ニューファンドランド州St. John's市(Andy Wells市長)では、野生動物を使用するサーカスの興業を一部地域で許可しないことを、議会の全会一致で決定した。BARB SWEET AND BERNIE BENNETT「No circus for St. John's 6/13/00」in
The Telegram



*4 文化財保護法第二条第四項は以下の通り。「貝づか、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとつて歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとつて芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で我が国にとつて学術上価値の高いもの(以下「記念物」という。)」

 

【参照文献】

文献(1)】【文献(2)】上記に引用した文献 以外の邦語文献は、以下の通り。
  • ロベール・ドロール著(1984)、桃木暁子訳『動物の歴史』(みすず書房、1998年)。
  • H・T・エンゲルハ−ト、H.ヨナスほか著、加藤尚武・飯田亘之編『バイオエシックスの基礎--欧米の「生命倫理」論』(東海大学出版会、1988年)。
  • 山田卓生「動物との共存――ペットと動物実験」『法学セミナー』32巻7号、10〜13頁、(1987年7月)。
  • オ−ルティッ ク(1978)、小池滋監訳『ロンドンの見世物』第二巻(図書刊行会、1990年)。
  • 『外国の立法』5号頁以下(1963年5月)、11号6頁以下(1964年5月)、17号1頁以下(1965年5月)、27号276頁以下(1967年1月)、72号125頁以下(1974年)、72号135 頁以下(1974年)、82号51頁以下(_年)、89号111頁以下(1977年5月)。

     



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