軟弱なエピローグ
……というわけで、palm - musicはおしまいにします。
が、5/1の書き方は、舌足らずというか、多くの方を驚かせてしまったようなので(どうもすみませんでした)、なんとなく往生際が悪いようになってしまいますが、少しだけ補足します。
えっと、まず、やめる理由ですが、私(白石)個人が何らかのトラブルに巻き込まれているとか、そういったことが原因でサイトを閉じる、というのではないです。ご心配をおかけしたのは、本当に申し訳なく思っております。そういうことは、まったくありません。
そうではなくて、おしまいにするのは、自発的な判断です。
ほとんど直感的に、「やめよう」と思った、というのが正直なところです。実は、私自身、なぜそういう直感が働いたのか、よくわかりません。色々、もっともらしい説明もできそうですし、あれこれ、考えてはみたのですが、どれも「後付けの言い訳」になりそうな気がして、いまひとつ、自分でも、納得していません。
ただ、こういうことは言えそうです。
palm - musicは、一応、「Palmで音楽!」というスローガンを掲げるサイトであるわけですが、私個人の気持ちとしては、「PalmOS搭載機の音声・音楽機能の充実」というのとは、少し望むところが違ったのかもしれない、と、今感じはじめています。
現在、(私がわざわざ言うまでもなく)、パームをめぐる環境は、とても急激に動いています。そして、いわゆる「AV機能」というのは、企業さん側の都合などもあって、PDA市場を戦い抜く上での有効な「武器」のひとつになっているような雰囲気があります。
実際、オーディオや動画は、新奇な面白いことであるのは違いないですし、それもあって、新しいクリエはよく売れているんですよね。
でも、(多少、それらしく振る舞って頑張ってはみたものの……)、私は、そういう「市場の動向」には、興味を持てない気質の人みたいです。
今振り返ると、私が興味を持っていたのは、変な言い方ですが、「手のひらの上の音いじり」みたいな部分だったような気がします。(P-KeyやTheremini、PiesoPower!などがその好例でしょうか。あと、MelodyEditorをチョボチョボ操作している時にも、そういう「音をいじる快感」があるように思いますし、TapStepMusicも、操作感としては、これらに通じるところがある気がします。もちろん、私ごときが語るのはおそれ多い日本のパームウェアの金字塔ですが……。)
そして、そういう「手のひらの音いじり」は、音の文化の問題として面白いテーマかもしれないという、学者のさもしい根性から来る漠然とした予感も、ほんとにかすかにですが、あったりします。(80年代音楽文化の象徴だったウォークマンのように、ただ「聴く」だけでなく、PDAだったら能動的に音をだすこともできるわけで、研究課題的に言えば、「音具としてのPDAの可能性」みたいなことになるでしょうか。)
でも、PDA市場におけるパーム陣営の戦略としては、ほとんど価値を認められてはいないみたい……。
そして、私の好きな素朴な「音いじり」の上空で、「AV機能是か非か!」、「PDAの本来の姿とは!」といった派手な空中戦が展開されているのを見ると、言葉は悪いですが、勝手にやってくれ、という気持ちになってしまうんです、申し訳ないですが……。
「戦争してる最中にお笑い番組やるのは不謹慎やというけど、戦争して、殺し合いするのは、よっぽど不謹慎なんとちゃうの」
湾岸戦争(もうあれから10年……)の時の笑福亭鶴瓶のこのコメントは名言だ、とか何とか、上岡龍太郎が、さかんに言い募っていたことがありましたが、ちょっと、それに近い気分です。
……あまり景気のいいお話にはなりませんでしたが、わたくしがパーム戦線を離脱いたしますのは、そのような事情によるものであると、ご理解いただければ幸いであります。
昨日も書きましたように、PMUG要員として、後方支援に回る所存。ドイツなどの徴兵制では、兵役を拒否して、変わりに「Zivildienst」(社会奉仕、と訳せばいいのでしょうか)をする、という選択肢があったと記憶しますが、それに似た気分です。
……ということで、ひとまず脱出でございます。みなさん、ごめんなさい。
申し訳ないですが、でも、そういうことで……。