何故ドラクエIIは名作だったか

 

FC版、ドラゴンクエストII

 最大五十二文字という、あきれるほど長い復活の呪文を何度となく間違えながら、日本中がロンダルキアを目指していた時期がありました。
 確かに、その当時ドラクエに匹敵するRPGはありませんでした。
 それでも、当時の熱狂ぶりはすごかったです。
 今でも、ドラクエIIをやりたいという欲求に駆られることがあります。
 どこがそんなにすごかったのか、当時の記憶を振り返ってみます。

パーティー  世界  ロンダルキアへ  ロンダルキア


パーティー

 Iでは一人だったプレイヤーキャラが、IIでは3人になった。
 それだけでも画期的なことですが、当時の私たちは、ほとんど会話メッセージの出ない二人の仲間を、実に生き生きと感じていたように思う。

 まず、IIの最初の難関。
 サマルトリアの王子はどこへ行った。
 散々探し回って、会えた言葉が「いやー探しましたよ」である。
 腹立たしいより先に、あきれ果てた覚えがある。
 王子の妹曰く「ウチのお兄ちゃんって割とのんびり屋なの」であるが、さすがに頷き返したくなる。
 ところがこの王子、湖の洞窟に行くときはホイミ、ギラ、そしてキアリーと、はっきり言って、いなければ絶対に突破できないという存在感が出てくるのである。
 それは、純然たる戦士タイプであるローレシアの王子の、最もたよりになる仲間であると思わせるに十分ではなかったか。

 そして、最初は「くーんくーん」と登場するムーンブルクの王女。
 どうしてハーゴンが彼女を殺さなかったかは、FC版ドラクエIIの最大の謎の一つに上げられるが、何にせよ、彼女が悲劇のヒロインとして私たちの心に刻み込まれたのは間違いない。
 サマルトリアの王子のように、どこかにいってしまうのではなく、犬に変えられながらも後をついてくる王女。
 けなげである。
 そして、仲間になってからは、レベル4で覚えるバギの呪文に感動させられることになる。

 以後、魔法使いとしては、彼女の方が上となり、サマルトリアの王子は攻撃にも大きく参加することになる。
 とはいえ、ルーラの呪文がつかえるのは王子だけなので、その意味ではバランスが取れていたといえる。
 後半戦では特に、ルーラ、そしてザオリクという超重要呪文を使えるのが王子だけなので、どちらかの存在感が薄くなるということはなかった。
 SFC版では、王女もザオリクが使えて便利だが、少々残念である。

 それから、恐ろしいことに、まったく記述がないにも関わらず、私の周囲ではサマルトリアの王子は貧弱というイメージが完成していた。
 レベル次第では、一時期王女にHPが抜かれることも大きな要因だったかも知れないが、
 そう、王女よりも何故か死にやすいのである。
 理由はよくわかっていないが、どうも攻撃を受ける回数が三人の中で一番多かったように思う。
 これに関しては、実はサマルトリアの王子はムーンブルクの王女が好きで、よくかばっているんだ、という説も流れた。
 しかし、やはり大勢を占めたのは、軟弱説であった。
 たかが、わずかな統計値の違いでこれである。
 まあ、彼が死んだらザオリクが使えないので、余計に彼の死を大きく感じていたのかも知れないが、
 当時の私たちの想像力はすごかった。

世界

 とにかく、広かった。
 ドラクエIのマップは100×100であるが、ドラクエIIでは256×256と、なんと6倍以上の広さになっている。
 大陸も海も広く、様々なポイントは、それぞれがかなりの距離が開いていた。
 恐ろしいことに、開発段階ではリリザの街は、今のサマルトリアの場所にあり、サマルトリアの城は湖の洞窟の場所にあったという。
 縮まってこれである。

 大陸をひたすら渡るそこには、本当に旅をしているという感覚がなかったか。
 こういっては何だが、5以後のドラクエは、制限の大きい、あまりに不自然なマップが多い。
 大陸を、次の街へ向かって歩いていくという感覚はあまりなく、海と岩山で極めて不自然に制限されたマップを歩かされていなかったか?
 まあ、それは先の話であるが、ある種、自由であったと思う。
 どこに何があるか、大まかな話で聞いて、後は大陸を東西南北渡り歩いた。
 ローレシア大陸の西端、南端に立ち、この海の向こうに、いつか行こうと思わなかっただろうか。

 そして、船を手に入れ、まずたどり着くのが始まりの地アレフガルド。
 マップは縮小され、ガライもマイラもリムルダールもメルキドも無くなって、悲しかったが、その大きさを比して、どれほど世界が広大であるか感じたものである。
 なんと竜王のひ孫に旅の指針を教えられ、いざ、大航海である。
 世界、どこへでも行けたのである。
 この楽しさは、浅瀬によって制限されまくった5以降のドラクエには、断じて無い。
 それによって感じる世界の広いこと。
 大洋の中にぽつんとあるザハン、海底洞窟といった場所や、大陸や島に点在する街。
 それらの場所を、ゲームから離れて、日常世界でどこにあるか話し合ったものである。
 それは、あたかもドラクエIIの世界の酒場で、船乗り同士が情報を交換するかのようであった。
 現実に、深くゲームが食い込んでいたのである。

 また、3以降に比べても、2のマップが極めて広く感じられたのは、ルーラの指定が出来なかったからである。
 ルーラによって、一度行った場所ならどこへでも行けるという3以降のシステムは、確かに便利であり、そうしなければいけない世界ではあったが、
 そのために、世界は小さくならなかったか。
 輸送手段が発達すると、世界は小さくなるのである。
 2では、船と、世界各地を結ぶ旅の扉が手段の全てであった。
 どこかへ行くとき、面倒くさくはあったが、そのたびに、旅をしていたように思う。
 世界は、限りなく広かった。


ロンダルキアへ

 これなくしてドラクエIIは語れまい。
 歴代ドラゴンクエストダンジョンの中でも、もう二度と行きたくないランキング*1、ぶっちぎりの第一位だった、
 邪神の洞窟(ファミコン神拳の名前付け)である。
 公式ガイドブックではロンダルキアへの洞窟となっている。
 計七層により成る、史上最大にして最悪のダンジョンは、しかし、恐ろしいほど魅力的な構造をしている。
 まず、各階が全く違ったしかし、明確なコンセプトの元に作られているのである。
 入ったすぐの地下六階(地上一階)は、「逆十字架の洞窟」といわれ、壁の形が逆十字をした不気味な作りである。
 そして、不用意に入った冒険者を、恐怖の落とし穴が襲う。
 落ちた地下七階(地下一階)は「恐怖の死体置き場」といわれ、ここにはひたすら腐った死体が出現する。
 こわい。
 しかし、こんなところに命の紋章がひっそりと眠っているのだから、良くできている。
 まず、ここで一旦とって返して、ルビスに会いに行かなくてはならない。
 再挑戦である。

 洞窟に入って階段を上るという奇妙な感覚の下、ついた地下五階(地上二階)は、「合わせ鏡の回廊」と呼ばれ、同じ形の部屋がいくつも並ぶ一方、 ホントの無限回廊まで設置されているという、なんとも解りにくい構造をしている。
 なにしろ、自分がどこにいるのか解らなくなってくるのだ。
 やっとの思いで階段を見つけ、登ってみると、そこは世界最大の大きさを誇るフロア、地下四階(地上三階)である。
 とにかく、広い。
 端から端まで、下手な大陸ぐらいあるのである。
 端の方にある三つの階段のうち、正解はたった一つだが、不正解の一つはロトの鎧に通じているので無視するわけにも行かない。
 ともかく、登ってみると小さな小部屋。
 すぐに階段があり、地下三階(地上四階)はすかしかと思うが、そのわけは後で嫌でも解るのである。
 ついた地下二階(地上五階)は、すぐ目の前に階段が見える。
 喜び勇んでそちらへ行くと、ほぼ間違いなく、落とし穴に落ちる。
 そう、この洞窟の中でも最難関といわれる、「落とし穴地獄」である。

 とにかく、階段付近の落とし穴の数は半端ではない。
 最初に来たらまず間違いなく落ちるだろう。
 落ちてたどりつく地下三階は、さっきとは全く趣の異なる大空洞。
 がらーーーんとしている。
 あいにく、(幸い)壁の端に階段があるため、そこから地下二階に戻ることはそう難しくない。
 どうせなら、フロアのど真ん中に階段があった方が面白かったのだが、これは3の地球のへそで実現されている。
 なんにせよ、登ってまた落とし穴地獄である。
 ここで戦っているうちにMPが無くなり、リレミトを唱えるか、全滅するか、というパターンが多い。
 また最初からである。

 ここのコツは、一度落ちて上がってきてから、右手を壁に付けたまま歩けばいいのである。
 このヒントは、当時の冒険者必携の書であった「ファミコン神拳奥義大全書巻の四」の袋とじにある。
 無ければ、マッピングして落とし穴の周期性を探るしかない。
 2×2で出来ている一ブロックのうち、右上にしか配置されていない、ということが解れば、あっさり突破も可能である。
 かくてたどり着く地下一階(地上六階)。
 ここを突破すればロンダルキアであるが、最後の難関である。  「蜃気楼の迷路」と呼ばれるここは、いくつもの分岐点の集合体で、間違えば即スタート地点に戻される。
 これは素直に消去法しかない。
 立ちふさがるモンスターどもを切り伏せて、最後の階段を上れば、夢にまで見たロンダルキアが、美しい銀世界の姿をして現れる。
 感動である。
 なお、この洞窟の突破の世界記録はローレシアの王子がレベル12であるらしい。
 今は無き、○勝ファミコンに載っていたと思う。
 私は洞窟中知り尽くしていてもレベル15がやっとであった。
(2000/05/29追記 最新のゲームラボ誌によれば、ローレシアの王子がレベル10で突破したようです。
 人間業じゃありません……(^^;)

ロンダルキア

 たどり着いて、喜んでばかりはいられない。
 融けることのない万年雪に覆われたこの高原大地は、ハーゴンが魔界から呼び出した、最強最悪のモンスター達でひしめいているのである。
 復活の呪文が聞けるほこらまで、たどり着く前に瞬殺されることもある。
 また、あの洞窟を最初からである。
 ともかく、ほこらで復活の呪文を聞ければ一安心。
 これから、ハーゴンの神殿に乗り込むための、壮絶なレベルアップが始まる。
 しかし、このロンダルキア、洒落にならない。
 最強レベルであってさえ、あっさりと全滅することもある。
 3以降、レベルが上がるとバランスが崩れるが、この2のゲームバランスは最高である。
 ブリザードのザラキ、デビルロードのメガンテ、ギガンテスの痛恨の一撃。
 特に、二つの呪文でローレシアの王子が倒れるときは、何々がなんとかを唱えた!と出る前に画面が赤くなるのである。
 マジで怖い。

 ハーゴンの神殿に乗り込み、死者の塔を駆け上がると、待ち受けるはアトラス、バズズ、ベリアルの三魔王である。
 ここに入る前に、2の最大の裏技、破壊はやぶさ合体剣、通称「はかぶさの剣」を作っておかねば、大苦戦を強いられる。
 レベルが上がっても、怖いのはアトラスである。
 一人を集中攻撃して、二回攻撃を仕掛けてくる。
 ムーンブルクの王女が狙われると、回復が間に合わなくなる。
 意外に弱いが、しかし、潜在的に最も恐ろしいのはバズズである。
 ザラキ、メガンテを使ってくるのだ!
 私事で恐縮だが、私はバズズを相手に、三回連続して、あと一撃!というところでメガンテを叫ばれ、そのたびにベラヌールまで戻って立て直しをする羽目になった。
 四回目は無かった。
 何故かというと、ハーゴンの神殿にたどり着く前に、ほこらを出て一歩歩いたところでデビルロードに出会い、ここでもメガンテを食らったのである。
 晴れやかな思い出である。

 ベリアル、ハーゴン、シドーは、ベホマを使われるタイミング次第である。
 レベルさえあればあまり強くない。
 「はかぶさの剣」を装備していれば、レベル25でクリアしたこともある。
 これは、255が限界であった当時のステータス容量のためで、32ビット機にCDROMの現代から見ると隔世の感があるが、 容量と戦っていた当時の苦労が忍ばれる。



 最後は雑感になってしまったが、どうだろうか。
 また時間があれば、ドラクエIIをやってみたいものである。
 エニックス様が、ROMイメージを通信販売してくれればいいのだが。



*1 宝島社刊 ドラゴンクエストマスターズクラブより



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